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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
「財源=税」問題を考える。(6)
消費税の問題点


 消費税が導入されたとき、消費税の弊害や問題点がいろいろと指摘された。それが、消費税が当たり前のように定着されてしまった今、消費税の弊害や問題点はほとんど取り上げられることもなくなった。消費税の問題にかぎらない。時間がたてば国民は忘れるさ、と為政者たちはタカをくくっている。そして、だいたいその通りになっている。

 いま、マスコミでは、消費税そのものについての議論は全くなく、消費税率アップいたしかたなしとの論調が大手をふるってまかり通っている。そして、おおかたの国民もそれに同調する風潮が作られつつある。改めて消費税の弊害や問題点について復習しておかねばなるまい。

 消費税導入以前に、個別消費税として物品税や遊興飲食税という税金があった。これらは奢侈品課税であり、生活に直接必要のない贅沢な品物を購入したり、高価な飲食やサービスを受けた場合など、贅沢な品物やサービスへの課税であり、高額な支払いができる金持ち、生活に余裕のある人の担税力(支払能力)に着目したものである。もちろん、ガソリン税や酒税など、対象が金持ちとはかぎらない物品税もある。(私はかなりの酒税を納めている。)また、たばこ税のようなペナルティ(罰則)的な側面をもつものもある。

 これに対して一般消費税は、上記の物品税とは根本的に異なり、基礎的生活物品にまで課税される生活費課税です。生活必需品を含めた「消費」そのものに課税するというのだ。

 「消費」(物を買ったりサービスを受けたり)するのに、とうぜん先立つものは「お金」である。私たち一般庶民はその「お金」を労働によって得ている。その得た「お金」を払うことによって物を得、サービスが受けられることになる。つまり「消費」とは「所得」の処分形態であり、所得がなければ「消費」はできないのだから、「消費」自体が担税力(税金の支払能力)を持っているわけではない。消費税導入時の税制調査会は「消費に担税力を見出す」との勝手な見解を述べ、その課税根拠について説明していた。富山さんは「これほどことの真実を見失った(曲げた)理屈(理論)はありません。」と怒りをあらわにしている。

 ところで私たちは、消費をするための前提となる所得を得た段階で所得税を課税されている。そしてその所得で物品を購入する際にまた消費税という税金が課税される。これは完全な二重課税である。ガソリンや酒やたばこなどは個別物品税を含めた価格にさらに消費税が課税される。これは三重課税だ。

 現行税法では、二重課税の防止という名目で税額控除という負担緩和措置があります。例えば、それは企業から受ける配当所得に対する措置がそうです。これは会社が上げた利益に対し法人税が課税され、その残りの利益のうちから配当を株主に支払っているので、所得税の確定申告で配当所得をそのまま課税対象とし税金を取るのは二重課税であるから、その重複部分を調整するという考え方によるものです。

 しかし、よく考えてほしいのですが、配当所得は「所得」であり、他の勤労所得(事業・給与所得)より担税力はすぐれてあるという性質のものです。担税力のない消費には「担税力を見出し」、担税力のある配当所得にはなぜ負担調整をしなければならないのでしょうか。

 担税力の有無を別にしても二重課税には違いがなく、消費に対する課税も調整すべきではないでしょうか。とりわけ配当所得は金持ちに多く、消費税は貧しいものほど高い負担を負わされています。 「生活破壊税」ともいわれている一般消費税は課税の根拠がなく、本来あってはならない税金であり、選択ができ、生活に余裕のある人が払える形の個別消費税に戻すことがベターな制度といえます。

 ヨーロッパの付加価値税の歴史をみますと、その創設時の必要性は戦費調達と戦後処理が理由であり、戦費調達目的は日本も同様で、間接税共通のものです。「資本主義最後の税金」と導入時は叫ばれていましたが、最近では消費税「そもそも論」も問われることが少なくなり、話題の焦点は税率の引き上げの是非に傾注しています。それでは「のど元過ぎれば熱さ忘れる」のたとえに通じますし、社会保障財源という仮面に引き込まれてしまうのではないかとの懸念をいだかざるを得ません。

 一般消費税は、ヨーロッパモデルの付加価値税を模倣して導入されたものだった。(自公)政府は日本の消費税率はヨーロッパ諸国と比べて低いと喧伝してきた。税負担の国際比較の場合も政府は、自分の主張に沿った部分のみを拾いあげて資料を作り、国民に発表している。いや、国民を欺いている。では、その本家本元のヨーロッパにおける一般消費税の実際はどうなのだろうか。

イギリスの場合
 標準税率は17.5%と日本の約3倍強である。しかし、税率が3段階に分かれている標準税率17.5%・軽減税率の5%、それにゼロ税率というものがある。軽減税率5%が適用され るのは、家庭用燃料と電力で、ゼロ税率の対象は広く、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、国内旅客輸送、医薬品、居住用建物の建築、障害者用機器など生活に直接かかわるものや医療、教育、住宅などナショナルミニマム(最低保障)にかかわるものが消費税の対象からはずされている。

 消費税は生活費課税で、逆進的負担(貧しい者ほど高負担になる)であり、生活破壊税とも呼ばれている。イギリスではその重要部分がゼロ税率か軽減税率適用となっている。日本政府はこういう点にはほおかぶりをしている。

 私は今までは「税」については大きな関心を持たなかった。(いいかえれば、政府の発表を鵜呑みにしていた。)従って税制についての基礎知識も、全くと言ってよいほど持っていなかった。例えば、「基幹税」と「補完税」という概念も初めて知った。次のようである。

 税は新たに取得した所得への課税が基本であり、それを基幹税と言う。所得税、法人税がそれにあたる。
 そして、所得課税で補足されない部分を補完するという意味合いの税を補完税と言う。相続税・贈与税などの財産税がそれにあたる。

 さて、本質的に負担能力を持たない消費税を基幹税とするのは大きな間違いである。にもかかわらず、日本では、本来は補完税であるべき消費税が基幹税となっていて、法人税・所得税に次いで消費税が第3番目の歳入額となっている。それに対してイギリスでは、消費税率は日本の3倍強にもかかわらず、税収割合は日本より低い位置になっているという。イタリアも日本の4倍の税率だが、税収割合は日本より若干多い程度である。

 欧州連合(EU)は2008年11月20日、「欧州経済回復計画」を加盟国に提案している。それには、個人消費を後押しするために付加価値税の税率を引き下げることが盛り込まれている。イギリスやフランスも相次いで付加価値税の税率引き下げを打ち出している。

 日本においても食料品など基礎的生活物資の消費税をゼロ税率にすることにより、消費を上昇させる効果は間違いなく生じます。そして、そのことが若干でも所得格差を是正することにもつながることは間違いありません。

 消費税の不合理是正として当面おこなうべきことは、輸出に対する免税措置を廃止し原則課税とすること、大企業優位の課税売上高95%ルールを原則どおり課税・非課税に区分し原則課税することです。それだけでも相当な税収が確保され、社会保障財源として有効活用できます。

 前出の竹崎孜氏の著書によれば、消費税率が25%と最も高いスウェーデンでは、高い税率であることに国民からは反発が示されないとのことです。課税が国民の痛みとならぬ配慮があらかじめなされており、政策を通じた税金の還元が続いているから、単純な反対は出ないとのことです。また、「国民(基礎)年金は"暮らせる年金"の役割を果たしており、消費税負担が高い低いという問題ではなく、政府が長年にわたって所得格差や不平等の対策に取り組んできたことで消費税への批判は出ていない」と政府当局が説明していることも、紹介しています。

 この教訓は、日本も学ばねばなりません。ナショナルミニマム(最低保障)が不十分である日本の現状では、まず生活できる水準にまで収入を引き上げる体制を作ることです。

「財源=税」問題を考える。(7)
消費税導入後の税制改悪(1)


 消費税導入という増税の大義名分は「高齢化社会のため」であったが、消費税が高齢化社会への対策に使われた形跡はない。消費税がその大義名分通りに使われれば、あの悪名高い後期高齢者医療制度などは全く不要だったはずだ。

 では、消費税は何に使われたのだろうか。消費税は一般財源に繰り入れられているのだから、それを特定することはできない。しかし消費税導入を契機に、総資本意志を全面的に取り入れて税制全般の改悪が推し進められてきた。むしろ消費税導入は税制度改悪のために導入されたのではないだろうか。消費税導入後の税制改悪の実態を見てみよう。(今回からは、『消費税によらない豊かな国ニッポンへの道』の第6章が教科書です。)

 公平で合理的な税制度の基本的理念は、従来は担税力に応じた「応能負担」であった。消費税導入後の税制改悪ではその理念を否定し、「税負担のフラット化が最も公平」と公平の解釈を変え、「応能負担」に代えて「応益負担」(受益者負担)を強引に打ち出してきた。これは、「既存税制の不合理な部分を殊更取り上げ、政府にとって都合のよい税体系に変え」ようとするものであった。(「部分より全体をおよぼす」という典型的な詭弁が臆面もなく使われている。)

 政府税制調査会などは、税負担をどう配分するかという考え方として、税負担が困難な人への個別調整を中心に置いたそれまでの考え方を捨て、垂直的公平(累進税率)から水平的公平(かつては同じ所得なら同じ税額という意味で使われましたが、所得額が違っても同じ税額という意味)へと、基本理念を一大転換させ、課税根拠のない「バランス論」や「広く薄く論」を前面に出してきました。

 公平という考え方にしても、税負担能力を基礎においた応能負担原則を重視し、企業活性化、国際競争力強化といった負担能力とは異なる次元での「公平」論ではなく、すべてのものに共通する客観性をもった公平概念を審議会の委員はもつ必要があります。

 これまでの制度の改廃理由を見ても、消費税導入後の反国民的改悪の数々は既存税制における創設趣旨を変更するための理由も述べずに一方的な考えを押しつけています。

 「公平・中立(活力)・簡素」という税制調査会の「理念」は、
「公平」とは、富める者も貧しき者も同額課税するフラット化をいい、
「中立」とは、所得の再分配や経済政策をほどほどにし、経済活動を重視する活力論です。
「簡素」とは、税率を適用する所得区分を少なくして高額所得者の税額を少なくすることをいっており、つまり「広く薄く」課税することを意味しています。

 さて、消費税導入後の税制改悪の実態を見ていくが、結論を先に言えば、消費税導入以来、一般庶民の税負担や社会保障負担(これは本来的には名を変えた税負担である)は増加の一途をたどってきた。その一方、高収益企業・高額所得者・大資産家への負担はどんどん軽減されていった。つまり、一般庶民の消費税・社会保障負担増は高収益企業・高額所得者・大資産家の負担減に使われたことが明らかになるだろう。

企業課税に見る高蓄積のしくみと実態

 自公政権は「企業の活性化」「国際競争力強化」を最重要政策課題とし、その大義名分のもと、全面的な規制緩和・多額の財政出動・高収益企業などへの大減税を繰り返してきた。その施策の結果、大企業はどれだけ儲けなのか、そしてその儲けはどこへ行ったのかを検証し、かつ高収益企業などへの大減税の仕組み(制度)を見てみよう。

消費税導入(1989年)以降の企業の内部留保額(儲けによる蓄積額)

全産業の内部留保額
1989年度 175兆9810億円
2006年度 411兆1077円
 235兆1267億円も増えている。この増加額は、この間の特例国債(赤字国債)増加額223兆1000億円を12兆267億円も超える莫大な額である。

 同じ期間における大企業(資本金10億円以上の企業)の内部保留額
1989年度 100兆3961億円
2006年度 228兆7578億円
 128兆3617億円も増えている。消費税導入時に比べ蓄積額の増加は約2.3倍になっている。

 全法人数に占める大企業の割合は、わずか0.28%である。消費税導入後に得た全産業の内部保留の55%を、そのわずかな大企業が独占していることになる。このことは法人間での較差が拡大していることを裏づけている。

 このように儲けの大企業への集中が進んでいる理由を富山さんは次のように分析している。(次回へ続く)

「財源=税」問題を考える。(8)
消費税導入後の税制改悪(2)


 大企業や高収益企業は、不況期にあっても高蓄積を続けてきた。それではどのようにして利益を上げてきたのだろうか。

企業の税・社会保障負担における優遇措置

 当然のことに利益を上げている少数の企業と、とんとんか赤字の企業もたくさんある。その中で景気を引っ張ったのは輸出企業であり、海外進出企業が中心となって景気を持続させてきた。業種的にみますと、自動車、家電、情報産業である。

 経済産業省委託調査の「公的負担と企業行動に関するアンケート」で、生産拠点を海外移転する理由(複数回答)を問う項目がある。その結果は
1位 労働コスト84.7%
2位 海外市場の将来性65.1%
3位 取引先の海外移転47.6%
4位 その他のコスト42.8%
5位 税・社会保険料負担40.2%
であった。税・社会保険料負担は5番目であり、これを海外進出の理由とする意識は低いと言える。この企業の判断は、企業の税・社会保障負担の国際比較からも、妥当な判断であることが分かる。

企業の税・社会保障負担の国際比較

自動車産業
 日本   30.4%
 ドイツ  36.9%
 フランス 41.6%

エレクトロニクス製造業
 日本   33.3%
 ドイツ  38.1%
 フランス 40.2%

 日本では税・社会保険料の負担の面で、企業が優遇されていることが分かるとともに、海外進出企業が日本以上の税・社会保険料の負担をしても利益を上げている実態が裏づけられている。

リストラによる収益増

 財務省の法人企業統計をみても10億円以上の大企業は増収増益であっても人件費などの抑制により利益の蓄積を増やし続けてきたことが分かる。企業の人件費抑制策は、今では周知の事実となっているように、派遣労働者の拡大など正規社員から非正規社員への置き換えを急速に進めることであった。

 この大企業の意図を政治政策として、自公政府はいわゆる「規制緩和」を強引に押し進めていった。その結果、非正規雇用者は労働者の3人に1人という状況が作られ、大企業は3社に1社が最高益を更新するというバブル期の2倍を超える好決算を得ている。このような「安上がり労働者」を酷使する大企業の貪欲な儲け主義が今日の日本の社会や経済の由々しき破綻をもたらしたことも、今では周知のこととなっている。

 財務省総合政策研究所の報告書(2006年)によると、35歳以上の「中高年フリーター」が2021年には現在の3倍の146万人になると予想されている。そして「正社員になれないことで失われる可処分所得は年4兆4000億円で、名目GDP(国内総生産)を0.9ポイント押し下げる」としている。

高収益企業の利益の行方

 いざなぎ景気を超えるといわれた景気高揚の中で、大企業は莫大な利益を挙げていった。その莫大な利益は、そこで働く労働者の努力のたまものであるのに、労働者の収入は減少し、格差と貧困が拡大し、国民の生活は窮地に追い込まれていった。利益は確実にあがってるのに、2002年以降、大企業での労働分配率は連続して低下している。では、その莫大な利益はどこに消えてしまったのか。

 莫大な利益の行方は、大まかに次の三つに絞られる。

 役員報酬が急膨張している。

 株主への配当が急激に増えている。

 それで残ったものは内部留保として蓄積している。

1について
 役員報酬の2006年分1人当たり平均額
日産自動車  2億9623万円
ソニー    2億3757万円
住友商事   1億3897万円
コマツ    1億2914万円
マツダ    1億2666万円
トヨタ自動車 1億2088万円

2について
 2003年から証券優遇税制によって株式配当や株式譲渡益の税率が所得税と住民税を合わせて、それまで20%だったものが10%と半分になった。所得税最高税率は現在40%だから、高額配当者は4分の1になる大減税である。総合課税でみると、消費税導入前の6分の1という大減税になっている。この租税特別措置が引き金になって配当の支払い金額が急膨脹していった。

3について
 内部留保増加の要因は租税特別措置拡大と税率引き下げある。課税の公平という観点からみると、企業課税における最大の問題点は、儲けた額に応じた税負担をしないですむ仕組み(税制度)になっていることである。その仕組みは、大別して2つある。

(1)
 儲けのすべてを課税対象としない仕組みになっている。具体的には、
①費用でないのに費用として認める制度(利潤の費用化=引当金・準備金・特別償却)
②利益であるのに利益でないとして除外する制度(利潤の資本化=株式発行差金・受取配当益金不算入)
③資本を少なく見積る制度(過小評価)
④税負担の公平を著しく損なわせている制度(税額控除・外国税額控除・連結納税制度)
⑤税の執行上著しく公平を損なわせている制度(公益法人課税)


 利益を実際の額より過少にすることができる仕組みが、外国に比し日本にはあまりにも多いのが特徴的です。一般的にいわれる「課税ベースの縮小」(税額を計算する際の基礎となる課税所得)です。これら租税特別措置は利益を多く上げたものほど多額になり(利用できる金額が多くなる)、そのことによる減税額も収益に比例して多くなります。

(2)
 もう1つは、法人税基本税率引き下げによる減税策である。これは消費税を3%から5%に増税したことによる不況に対処するため「定率減税」や法人税の基本税率引き下げ、所得税最高税率の引き下げを1つの法律で決めたものだった。そかしその後、定率減税のみ廃止し、法人税基本税率や所得税の最高税率は同じ理由でありながら元に戻さなかった。それは高収益企業・高額所得者優遇の不公平税制の拡大であった。ここでも自公政府は国民を欺いている。

 消費税導入前には43.5%あった法人税率がその後数次にわたって30%にまで引き下げられた。これによって例えば、トヨタ自動車のような大企業はこれまで年間1兆円を超える高利潤を上げており、この場合減税額は1000億円を超える。前出の租税特別措置による課税所得の縮小では、2007年3月期で5747億7400万円(国公労連試算)もの減税となっており、それに税率引き下げ分が加算される大減税額となる。

 トヨタ自動車の儲けによる蓄積額(内部留保額)はこの期で、従業員1人当たりなんと1億2251万円にもなる。これを用いれば、トヨタ自動車の労働者の大幅賃上げが可能だし、また期間労働者、派遣労働者の首切りをしないですむ原資にもなるはずだ。

 品川正治(経済同友会終身幹事)さんが「昔の経営者は、儲かったものはまず従業員に配り、その余りを経営者がもらったが、今の経営者はその逆だ」と苦言を呈している。

 従業員が頑張って働いてくれたからこそ利益が上げられたのであり、役員だけで儲けたといわんばかりに役員報酬を巨額にしたり、株主への配当を倍増するなど、労働分配率を低くすることが一流の経営者と考えているような経営が最近とみに目立ってきています。

 「昔の経営者は儲けをまず従業員に分け…」の話をトヨタの経営者は考えてほしいものです。なぜなら役員報酬を1億数千万円も経営者はもらっているのですから。

 最後に富山さんは法人税に関連して、政府や官僚の出す資料を鵜呑みにしてはいけないという例を提示している。

 現在、法人税率は30%であるが、租税特別措置により課税所得が大きく減少することにより、税額は本来の利益に対して計算する税額とはかなり異なった額になる。しかし財務省で計算している実効税率は、租税特別措置による減税額を課税ベース(課税所得額)から除外し、減税分を少なく計算している。従って、財務省発表の実効税率は、実効税率を客観的に表したものとはいえない。

 租税特別措置によって実質税率がどれだけ下げられているかを示す試算(国公労連)がある。例えば大企業がほとんど採用している連結法人(完全支配関係にある企業グループを1つの納税単位とする)の場合、実質税率は1.7%と極端に低く、資本金100億円以上の法人も4.8%と財務省試算の28.0%、27.7%とは大きく開いている。租税特別措置が大企業にいかに有利な仕組みになっているかがよく分かる。

 強欲財界は、さらなる法人税率の引き下げ(30%→10%)を要求しているという。
「財源=税」問題を考える。(9)
消費税導入後の税制改悪(3)


 消費税導入後、大企業が大儲けをしている一方、中小企業は青息吐息の状況で倒産する会社が増えている(中小企業の問題は後ほど取り上げる)。そして個人所得の面でも、高額所得者の大減税の一方、労働者(サラリーマン)・年金生活者に対しては増税が行われ、貧富の二極化が顕著になってきている。労働者(サラリーマン)・年金生活者に対する増税については後ほど見ることにして、今回は高額所得者の税金がどのようになっているのか、具体的に見てみよう。

高所得者の大減税

 2007年分の確定申告者のうち、所得金額が10億円超の395人の内訳は事業所得者が11人で、残りの384人は給与所得(報酬)が中心の人で占められている。前回、企業の儲けが大企業の役員報酬として多額に支払われていることを知ったが、そのことが確定申告にもはっきりと現れている。
所得100億円超が9人
50億円超100億円以下が27人
20億円超50億円以下が92人


 このような高額所得者の税はどうなっているのだろうか。  富山さんはまず、最高税率引き下げの不合理性(高所得者ほど減税額は多くなる)を示すため、消費税導入前と比較する試算を行っている。

 所得税の最高税率は消費税導入前の75%が、地方税への税源移譲前までは37%まで引き下げられている。最高税率引き下げは1986年頃からを始まったが、消費税導入直前の税率65%との比較で、その試算は行われている。

 それによると、2005年分確定申告で課税所得2000万円超の納税者は27万7073人(所得税申告者の0.03%)で、その人たちの減税額の合計は2兆133億円に達する。この減税額は、小泉政権時代における労働者・年金生活者の増税額1兆6860億円(定率減税の廃止分を除く)を大きく上回っている。

 この間の社会保障の負担増や給付減と比較しても、医療・年金を除く、介護保険・雇用保険・大学授業料の引き上げ・生活保護の老齢加算や母子加算廃止・年金給付減・失業手当減・障害者医療の縮減と自己負担増の額を上回る大減税を一握りの金持ちに与えているのです。

 さらに具体的にどの階級がどれだけ減税になっているのかを、課税所得別に見ると、(1人当たりの平均)
5000万円超 2337万円
3000万円超 499万円
2000万円超 243万円
という大減税になっている。

 では、これら大減税の恩恵を受けているのはどのような者たちなのか。5000万円超の所得階層では
豊田幸一郎(トヨタ自動車名誉会長)
奥田碩(トヨタ自動車相談役=前日本経団連会長)
御手洗富士夫(キヤノン会長=現日本経団連会長)
宮内義彦氏(オリックス会長)
西室泰三氏(東芝会長)
などで、その報酬額が1億円を超える高額所得者である。これらの人物は財界を代表する人であり、また、政府の主要な政策会議である経済財政諮問会議、規制改革会議、税制調査会、財政制度審議会、産業構造審議会、社会保障審議会等々の主要メンバーでもある。

 見方を変えれば、この人たちは消費税が100%になろうが、所得税の所得控除がゼロ(全廃)にされようが、既にそのことによる増税額を大きく上回る減税額を長年にわたって享受しているわけであり、それらの増税では痛くも痒くもない額なのです。

 所得税の最高税率引き下げによる減税額は、消費税導入以降2004年分までの累計額で22兆3369億円(筆者試算)という膨大な額になり、確定申告者だけでみた割合でも0.03%というごく限られた階層への恩恵となっています。

 収入の二極化の一方の側(高額所得者)への負担の減少は、財務省総合政策研究所の報告書でも「最高税率の引下げが格差を拡大している」と指摘されており、所得の再分配を損なっています。不公平税制の是正として早急におこなわなければならない喫緊の課題です。

 次に富山さんは、高額所得者の大減税のカラクリの一つとして、給与所得控除の不合理性を挙げている。

 所得税法では給与所得控除の規定は、収入180万円までは40%、30%、10%と所得階級別に割合を区分している。1000万円超の部分については5%であるが、上限の定めがない。つまり、収入額が多くなればなるほど多額の控除ができる青天井方式になっている。

 考えてみれば、多額な収入の人には企業の役員や高級官僚が多く、一般サラリーマンと比べ仕事にかかわる費用については企業で賄われていることもあり、給与所得控除の青天井は実態に反する不公平税制なのです。

 前回、大企業利益の分配が第1に役員報酬の急増となっていることを指摘したが、これを高額所得者の給与所得控除分の減税という観点から詳しく見てみよう。

 日産自動車役員の場合、平均給与所得控除を試算すると1651万円になり、平均的サラリーマンの給与の約4年半分に匹敵する額が控除されている。

 サラリーマン平均給与でみた給与所得控除額は年142万円で、月換算で12万円弱である(2004年分での試算)。それにひきかえ高額所得者トップの柳井正(ユニクロ会長)の場合は年収が29億3627万円あり、その収入で給与所得控除を算出すると、1億4851万円という膨大な額になる。サラリーマン平均年収の33.8年分という額が経費として控除されることになっている。この仕組みは給与所得控除が「青天井」になっていることによる不合理性に問題があることを示している。
「財源=税」問題を考える。(10)
消費税導入後の税制改悪(4)


資産家の大減税

 資産と言うほどのものは何ももたない私には資産家に対する課税など全く無縁だし、関心も持ってこなかった。改めて資産家に対する課税について学習することとなった。

 資産家に対する課税として、資産性所得への課税、有価証券取引税、相続税の三点を見てみよう。

(1)資産性所得税の大減税

 資産性所得とは利子、配当、不動産、一時所得、雑所得のほか、不動産や株式の譲渡所得などである。

 これら資産性所得にも所得税・住民税が課税されるが、その大半は総合累進課税からはずされ、分離課税・比例(低率)税率という課税形態になっている。政府の方針では、これら資産性所得は、勤労性所得(事業所得や給与所得)と切り離して二元的所得税構想を目指して税制改正を着々と進めてきている。

 簡単ないいかたをすれば、額に汗して稼ぐ勤労所得については総合課税・累進税率という重い税金を課し、働かなくとも所得が得られる不労所得の資産性所得については分離して低い比例税率にし税金を軽くしようというのです。

「構造改革」路線の中で、竹中平蔵氏は「貯蓄から投資へ」と1500兆円に及ぶといわれる貯蓄に目を付け、株や投資にその資金を回そうと企てたのです。民主的な課税のあり方として「勤労軽課・不労重課」の原則というものがあります。額に汗して得た所得には軽く、働かずして稼いだ所得には重い税金をかけるという考え方によるものです。しかし、現行税体系は、それとは逆の仕組みになっています。

 収入の二極化のところでも説明しましたが、高収益企業の莫大な利益は、勤労者の賃金や下請け単価の引き上げには向かわず、役員報酬の大幅引き上げと株主への高配当という分配に主力を注いでいます。現在の世界同時不況下でも高配当は続けられています。

 ここで富山さんは『プレジデント』誌(2007年12月3日号)に掲載された配当金額表を参考に、次のような二つの観点から、どれだけ減税になっているのかを試算している。


 消費税導入後の高取益・高収入者を優遇するための税制改革は非常に極端であった。配当課税や株式譲渡に至っては、消費税導入直前の65%を10%にまで大幅引き下げ、大減税を行っている。これに着目して導入前との比較をする。

 現行法ベースで総合課税した場合の課税額と比べて、その減税額を算出する。

1位 任天堂相談役山内淳
受取配当額 97億7286万円
 1の場合の減税額 34億2085万円
 2の場合の減税額11億7286万円

 『プレジデント』誌の資料は自社株のみを対象にしている。このクラスの人たちは他社の株もかなり持っていると考えられる。それも加味すると、受取配当は100億を超すものと思われる、と富山さんは推定している。

2位 ユニクロ社長柳井正
受取配当額 63億1085万円
 1の場合の減税額 22億880万円
 2の場合の減税額 7億7286万円

 柳井正の場合、前回紹介した給与所得控除よる減税額を加えると25億円を超える大減税額になる。

3位 アイフル社長福田吉孝
受取配当額 40億4838万円
 1の場合の減税額 7億7286万円
 2の場合の減税額 4億8582万円

4位 SANKYO会長毒島邦雄
受取配当額 40億1400万円
 1の場合の減税額 8億8308万円
 2の場合の減税額 18億630万円
(配当軽減税率10%適用者)

5位 松井証券社長松井道夫
受取配当額 34億4563万円
 1の場合の減税額 4億1348万円
 2の場合の減税額 12億597万円


 富山さんは、上位5名のほかに、自公政府の政策づくりに深くかかわってきた財界代表者たちが受けた減税額を試算している。彼らも相当な恩恵に浴している。

トヨタ自動車名誉会長豊田章一郎
受取配当額 13億4064万円
 1の場合の減税額 2億9494万円
 2の場合の減税額 6億329万円
(配当軽減税率10%適用者)

ソフトバンク社長孫正義
受取配当額 8億3036万円
 1の場合の減税額 9965万円
 2の場合の減税額 2億9063万円

トヨタ自動車社長豊田章男
受取配当額 5億4720万円
 1の場合の減税額 1億2036万円
 2の場合の減税額 2億4622万円
(配当軽減税率10%適用者)

トヨタ自動車相談役奥田碩
受取配当額 768万円
 1の場合の減税額 93万円
 2の場合の減税額 269万円
(配当軽減税率10%適用者)

キヤノン会長御手洗富士夫
受取配当額 923万円
 1の場合の減税額 203万円
 2の場合の減税額 415万円
(配当軽減税率10%適用者)

オリックス会長宮内義彦
受取配当額 511万円
 1の場合の減税額 113万円
 2の場合の減税額 230万円
(配当軽減税率10%適用者)

(2)証券優遇税制

 小泉・竹中政府は「貯蓄から投資へ」のスローガンをかかげて、それを促進するため証券優遇税制を押し進めた。

 2003年にそれまでの20%の比例税率が半分の10%に軽減され、それに時を同じくして支払い配当額が2倍近くに急上昇した。個人株主の売買額による所得でみると、4年後には7.1倍にもなっている。

 2008年10月27日付「赤旗」紙によれば、2006年の株式譲渡による減税額は申告所得税だけで2322億円にのぼり、申告所得の合計額が100億円を超える10人の減税総額は約183億円に達している。

 国際的にみると日本の配当所得課税や譲渡益課税はアメリカ・イギリス・フランス・ドイツの諸国と比べ、2分の1か3分の1という低さだという。

(3)相続税の減税

 相続税は所得の再分配がもっとも求められる税制である。従来財産相続には、生活用財産や中小商工業者の事業用資産を除き、高い税率での負担が求められてきた。しかし、相続税の最高税率75%であったものが、1988年には70%となり、2002年には一気に50%に引き下げられた。この税率は、「各法定相続人の取得金額が20億円超」の場合に適用されるもので、相続人が配偶者子2人の計3人とすれば、相続財産は60億円超の人に適用されるという、ごく限定された人の場合であり、国税庁の統計によれば年間20人前後といわれている。

 最高税率を下げる一方で、2009年度税制改悪では、一般庶民の相続税課税強化の検討が進められていた。基礎控除の引き下げによる課税強化である。結果は先送りになったものの、次年度以降に基礎控除引き下げによる増税が検討されることは確実な情勢だといわれている。(政権交代がどう影響するのかしないのか、注目される。)

 ごく少数の大資産家が優遇され、ローンの支払いも済まない生活用財産程度の庶民にまで苛酷な税金を課そうという政府税制調査会の姿勢は問われなければなりません。資産家や金持ちへの大減税のツケを庶民の増税で賄おうとするやり方は、法人税の減税資金に消費税を当てようとする動きと同一のものです。