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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
『続・大日本帝国の痼疾』(14)

慶応期の一揆・騒動(6)


「ええじゃないか」騒動

 8月4日、三河国宝飯(ほい)郡御油(ごゆ)宿 の「お札ふり」が「ええじゃないか」騒動の初動 と言われている。以後、次の表のように展開され ていった。

ええじゃないか騒動
 これら各地の騒動に共通の運動形態の特徴をまと めると


 神仏の各種の「お札ふり」を契機とし、その 祭りの踊りとして展開した。


 異装・盛装の男女が、それぞれの地方特有の囃 し言葉によって、群をなして踊り歩いた。


 有力豪農商に金品施与を強要した。


 その強要は豪農商家への「おどりこみ」という 制裁の可能性を強くもっていた。

 これらの騒動は、伊勢・京坂以西、とくに山陽筋と四 国では「ええじゃないか」のはやし言葉とともに 展開されたので、「ええじゃないか」騒動と総称さ れているが、美濃以西では「お札祭り」「お札ふり」 「お札様」「おかげ」「チョイトサ踊り」などと 呼ばれている。

 次にこの騒動の内容に立ち入って、その特質 をみてみよう。

(A)
 この騒動は「世直し」あるいは「世直り」観念 とかたく結びついていた。金谷宿をはじめ、 京都・阿波・淡路・伊豆三島等でははっきりと これらの言葉が囃し言葉などに繰り込まれていた。 そして、江戸や広島でも、この騒動は「世直し踊」 「世直り踊」として伝えられている。つまり、 この騒動の急速な拡がりは、「世直し」「世直り」 の観念を、急速に各地に拡げることになった。 そういう意味で、この「ええじゃないか」騒動は 「世直し」運動の一つの形態であると考えられる。

(B)
 しかし、この騒動は単なる願望の祭りや踊りで はない。兵庫津の例をみると

「誠ニ十分之豊作なれバ米価もひたすら安からん ニ、商家の者共利慾二耽り、聊の事を故障申立、 思ふやうに直段安うも相成らざる」

故の騒動であった。ここには、米価は豊凶による のではなく、政治的に、或いは商人の利慾によっ て左右されるのだという、都市打ちこわしの主体者 たちがもっていた政治社会的な理解が引き継がれている。 この理解に「世直し」観念が結びついた思想が、 この騒動の基底をなしている。その意味では、この騒動は、 村方騒動における村落支配体制の改変の希求という 側面と都市打ちこわしがもっていた政治社会的構 造への理解とが結びついた両者の発展形態であるととら えることができる。このことは、この騒動が相対的安定に 入りつつあった時期におこったことと無関係では ないだろう。

(C)
 この「ええじゃないか」騒動は、町・宿方 から起こり、町・宿方を通じて伝播している。 そして、さらに多くは、それらの町・宿から近隣の 農村へと伝播している。しかし、この騒動での要求 は、直接には、富家への米・金の施与の強要で あり、農民的要求はほとんど皆無であった。 つまり、この騒動の主体は下層町民・宿民(都市 前期プロレタリア層)であった。

 以上の特徴を併せ考えれば、この騒動は、相対 的な安定状況において政治的変動から疎外され た町民・宿民を主体とする「世直し」願望の 騒動であるということができる。言い換えると、 この騒動の特色は、農民の諸騒動から切り離され、 かつまた、自ら変革のための指導勢力を生み出し 得なかった都市民による社会運動という点にある と言うことができる。

 幕藩領主の「ええじゃないか」騒動に対する関 心は、もっぱら治安風俗秩序の維持にあった。その 観点からの藩の禁令等によって、騒動の多くは1867 年末迄の間に鎮まっていった。

 しかし、例えば、翌68年1月まで続いた備中井 原・笠岡・倉敷の騒動は、幕府と長州との戦争の 可能性を目前にして、明確に反幕府の政治性をも っていた。とくに内戦の可能性を強 めていたところでは、この騒動は重要な直接の政 治的効果をもっていたのである。

 最後に、「ええじゃないか」騒動には討幕派の 志士の働きかけがあったとし、志士らの謀略説を 説く説もあるようだ。しかし例えば、「お札ま き」の張本人として露見されたものが、摂津有馬 郡では地主の下男であり、丹後加佐郡では小前百 姓でり、名古屋では寺僧であったという。これは、 この騒動の基盤の民衆的広さと深さとを示して いる。自然発生的であったとし ても、志士の働きかけがあったとしても、 やはりその本質は民衆の体制変革の願望から生じた 政治社会的直接行動であった。

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