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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《「真説・古代史」拾遺編》(1)

三本足のカラス


 デジタルテレビ「BSフジ」で『朱蒙(チュモン) 』という韓国の連続ドラマを放映している。いま 私が一番興味を持って見ているテレビ番組だ。

 朱蒙というのは高句麗を建国した王である。 その物語の面白さに惹かれているのはもちろんだが、 私の関心は同時代の倭国にある。倭国が登場するわ けではないが、同時代の倭国に思いを馳せながら 観ている。

 高句麗建国前後の年表は下のようになる。 (「真説古代史」で使った年表の一部を取り出した。)

年代 中国 朝鮮 倭国 東鯷国・ヤマト王権
BC4th 戦国時代 青銅器文化始 銅矛文化圏 銅鐸文化圏
BC3th 秦(221-206) 鋳造鉄器伝播    
BC2th 前漢(202-)   国ゆずり・天孫降臨「天国→筑前」  
  漢・朝鮮に4郡設置(BC108-107) 錬鉄鍛造品 朝鮮からの渡来者多数  
BC1th   高句麗国成立 橿日宮の女王の筑紫統一「筑前→筑後」  
BC1th-AD1th     前つ君の「九州一円統一」  
BC1th-AD1th     「九州→淡路島以西」平定  


 年表に「漢・朝鮮に4郡設置」とあるよ うに、その頃の朝鮮は漢に領有されていた。その 朝鮮の4郡の北に、「扶余」という一応は独立した 国(半独立国)があった。朱蒙は扶余王の実子で はないが、故あって、扶余の第三王子として育て られている。

 年表に「鋳造鉄器伝播」、「錬鉄鍛造品」とい う項がある。『朱蒙』はもっか鉄器をめぐる抗争 が一つの軸になって展開している。扶余は「鋳造 鉄器」を作る技術は持っている。しかし、「錬鉄 鍛造」は伝えられているが、いまだ 「錬鉄鍛造」の技術がない。漢の「錬鉄鍛造品」 で武装している漢軍には歯が立たない。漢と対等 に対峙するためには「錬鉄鍛造」の技術がどうし ても必要だ。

 その頃、倭国には「鋳造鉄器」は伝播していた のだろうか。漢の圧制を逃れえて、朝鮮半島から 多数の渡来人があったとすれば、「鋳造鉄器」 の伝播は当然だろう。人々とともに いきなり完成品が渡来したはずだ。実際、弥生 早期の遺跡から鉄製の斧が出土している。

 と、例えばこんな関心を喚起されながら観ている のだが、今日の話題は「鉄」ではなかった。

 東京新聞の「本音のコラム」の執筆者のお一人・ 吉田司さんは、いつも政治・社会問題について切り 口鋭い辛口のコラムを書いていて、私が楽しみにし ている筆者だ。その吉田さんがめずらしく政治・社 会問題から離れて、強い関心を持って『朱蒙』のこ とを書いている(11月2日)ので嬉しくなっちゃった。 しかし、吉田さんの今一番の関心は、私とは違って、 三本足のカラスだった。次のように書いている。

 韓流人気ドラマ『朱蒙』のDVDや原作本を見て、 古代朝鮮史の闇の中をさまよつている。というよ り、ビックリ仰天! 朱蒙は紀元前37年高句麗国を 創建した王様だが、父は中国漢王朝に滅ぼされた 古朝鮮のヘモス将軍。母は河伯(河の神)の娘ユ フア姫で、ゆえあって扶余国王クムワの第三皇子 として育った。その苦難と恋と冒険にみちた英雄 神話のドラマ化だ。

 いま中国と韓国は〈高句麗の歴史認識〉をめぐ って対立している。ドラマの背景にはそのナショ ナリズム問題があるのだろうが、驚いたのはそれ に非ず。物語の中で扶余国の未来を占う巫女のこ の言葉だ。

「陽(ひ)の中に三本足のカラスが現れました。 三足烏です。太陽を象徴する神聖な烏。三本の足 は、天と地と人を意味する。王権の象徴です」。

 おい、チヨツト待てよ。その三本烏つて、古代 日本の大和朝廷を創建した神武天皇が「熊野より 大和へ」攻めのぽる時に道案内した《八咫烏》と そつくりだぜ。ネツトで調べてごらん。すぐわか る。

 「八咫烏は太陽神を意味する神聖の象徴。現代 では、日本サッカー協会のシンボルマーク」。こ ら、一体どーゆーこと!?

 わたしは江上波夫の《遊牧騎馬民族説》を思 い出した。騎馬民族とは東北アジアの扶余系の 辰王家で、朝鮮から大和に入り日本天皇になつた という説だ。

 うーん、『朱蒙』のドラマはまだ進行中。目が 離せない。

 《遊牧騎馬民族説》は「お話」としては面白い が、歴史「学」の立場からは全くの虚構でしかな いことは、「真説古代史」を知っている私(たち) には自明なことだ。

 問題は「三本足のカラス」。日本では「三足烏」 といえば「八咫烏」、「八咫烏」といえば「神武 天皇」というのが常識になっていて、日本の専売 特許のように思っている人が多いが、中国・朝鮮 (高句麗)にも古くから記録がある。

 『淮南子』に
「昔、広々とした東海のほとりに扶桑の神樹があ り、十匹の三足烏が住んでいた……」
という記述があるという。中国では太陽の象徴と して扱われている。前漢時代の記録だから、ほぼ 『朱蒙』と同時代だ。

 高句麗では古墳の壁画に三足烏が数多く描かれ ているという。『朱蒙』での巫女さんの言葉にあ るように、高句麗では王権の象徴と考えられてい る。三足烏が『朱蒙』に登場するのもうなづける。

 日本サッカー協会が三足烏をシンボルマークに 使ったことに対して、「三足烏は韓国起源のもので あるのに、先祖たちのものを日本に奪われた」など と言っている韓国の古代史学者がいるらしい。 ナショナリズムの呪縛された者たちの言説は、 どの国においても、箸にも棒にもかからない。

 中国や高句麗や日本(古事記)の三足烏の伝説 はみな紀元前2世紀以降のものだが、実はその 発祥は、「射日神事」あるいは「弓神事」にかか わっていて、縄文時代に迄さかのぼると、古田武 彦さんは言っている。そういえば「朱蒙」とは 「弓の名人」という意だそうだ。

 また、三足烏の伝播は「中国→日本」が通説に なっているが、古田説では、「日本→中国」とい う伝播が正しいと言う。もちろんナショナリズム とは無縁だ。自慢ごっこをしているわけではない。 学問の成果として言っている。皆さんはどう判断 されるだろうか、古田さんの論証を紹介しよう。 (『古代史の未来』より)

 1995年の12月、この12年間最後の年度の後半に おいて、鴛くべき新テーマに遭遇した。「三本足 の烏」の祭事である。

 この問題は、萩原法子(はぎはらのりこ)さんの 研究に端を発した。
 それによると、千葉県北部と茨城県南部。利根川 流域と利根川流域(東京湾にそ そぐ)の間に、神社の祭礼において「三本足の烏」 が出現し、分布している。
 他には、埼玉県・東京都はもとより、新潟県に も若干存在する。
 さらに、島根県の隠岐島とその周辺にも、一定 の分布がある。
 けれども、やはり最大の集中地は、上述の関東 である。

 これに対する萩原さんの「解釈」は、馬王堆 (まおうたい)や「春秋(緯)」など、周代末期 や漢代の頃の画や文中に現われる「太陽の中の三 本足の烏」からの伝播、というにあった。

 私はこの「解釈」には、疑問をもつた。この 「三本足の烏」のお祭りは、「中国風」か、それと も「縄文風」か。―これがポイントだった。

 一昨年の12月、研究室から萩原さんのお宅(千 葉県市川市)へお電話し、明けた年の1~2月、多 元的古代・関東(読者の会)の方々と共に、手分 けして、各地のお祭りを実際に見てまわり、写真 ・ビデオ等を撮った。
 回答は一つ。まさに「縄文風」だった。

 私の視点は、次のようたった。

A もし「中国→関東等」への伝播だった場合。 中国側の諸文化要素の中から他は一切受けつけず、 「三本足の烏」だけ模倣する、といったことは考 えがたい。
B 事実、馬王堆も、「月に兎とガマ」の他、複 雑なデザインの構成をもつ。
C 長崎の「竜踊」(くんち)など、文字通り、 異国風・中国風である。
D 「中国→日本列島」の伝播の場合、「関東が 中心」というのは、地理的に飛躍がありすぎる。
 実地検証の結果は、意外にも、次の方向を指し しめした。「関東→中国」だ。問題のキイは、 「黒曜石」である。縄文時代、この材質は最上の 貴重物であった。

a 関東平野は、北に高原山(栃木県)、南に神津 島(東京都)、西南に伊豆半島(静岡県)と黒曜 石の産地にとりかこまれた、縄文時代、繁栄の地 である。
b 「三本足の烏」の副中心というべき隠岐島 (島根県)は、同じく黒曜石の地である。
c すなわち、この伝播の「時期」は、縄文時代 に属するという可能性がある。

 昨年1月7日、私が直接拝観した、星神社(千葉 県八日市場市椿)の場合、 子供が手で的(三本足の烏を描く)を突く という、「弓矢発明以前」の祭事の型式を伝えて いた(桜の木の弓は、用意されているが、用いら れない)。旧石器前半期ともいうべき素朴さが守 られている【下の写真】。

三足烏

 また、1月3日の星宮神社(千葉県八日市場市吉 崎)の「おまとう」では、的に「日と月」を描き、 日(大きい方)を弓矢で射る。宮司および氏子総 代・氏子の方々による。射日神話ならぬ、「射日 神事」であった。

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新羅斧
万葉集の「梯立(はしだて)の 熊来のやらに 新羅斧……」で有名な新羅斧の実物が見つかったようです。

asahi.com:鉄斧は朝鮮半島製か 淡路・垣内遺跡-マイタウン兵庫 2010年01月27日
http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000001001270003
2010/01/28(木) 12:11 | URL | ゴンベイ #eBcs6aYE[ 編集]
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