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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
『大日本帝国の痼疾』(6)


「英将秘訣」全文


「英将秘訣」入手顛末記

 「英将秘訣」の条文は全部で90条ある。『「英将 秘訣」論』で引用しているのはそのうちの半分ぐら いだ。そこで、本論(『「英将秘訣」論』)に入る 前に「英将秘訣」を全文読んでおきたいと思った。

 10月31日、久しぶりに神保町古書店街に行ってみた。 数軒目で「坂本竜馬全集」(光書房  1978年)を 見つけた。 B4版で厚さ10センチほどの大冊、何と4万円の値が ついていた。坂本竜馬の研究をするのならともかく、 「英将秘訣」の本文を知るためだけのためにそんな大 枚は費やせない。一ヶ月絶食しなければならなくなる。 あきらめた。

 何で気がつかなかったのだろう。近くに図書館が あるではないか。その蔵書が貧弱だという印象を持 っていて、その存在は頭の片隅に追いやられていた のだろう。昨日、これも本当に久しぶ りに、近くの図書館に行ってみた。ありました。 「英将秘訣」を全文掲載している本を、くだんの 「坂本竜馬全集」と「坂本竜馬読本」(新人物往来社  1985年)と、2冊見つけた。どちらの「英将秘訣」 も出典は千頭清臣著「坂本龍馬」(初版1914〈大正 3〉年)のようだ。近代になって「英将秘訣」を世に出 したのはこの本だとされている。これを「原文」と 呼ぶことにする。

 ということで、念願の「英将秘訣」の全文を知るこ とができた。前回と順序が逆になってしまったが、 それを一気に掲載しておく。よく意味の わからない条文もあるが、それは必要になった時点 で考えることにする。また、原文にはところどころ にルビが振ってある。前回に取り上げた条文で私が 考えた「読み方」が間違っていた部分がある。以降 は原文のルビに従って読むことにする。

英将秘訣

一、日月はあまり役に立たぬものなれども、日は六 時の明(あか)り也。月は夜の助けにもなる歟。

一、世に活物(いきもの)たるもの、皆な衆生なれ ば、何れを上下とも定め難し。今世の活物にては、 唯我を以て最上とすべし。《されば天皇を志すべ し。》

(千頭清臣著「坂本龍馬」では上の条文の《》内 の文言は伏字になっていたようだ。 これを復元したのは井上清だという。復元された 文言が後の方の条文にもう一ヶ所ある。この復元 された文言については、次回取り上げる予定だ。)

一、親子兄弟と雖も唯執着の私なれば、蠢虫(うじ むし)同様の者にして、愛するにも足らぬ活物也。 況や夷人をや。

一、親子を人質に遣はすとも、愛着の義を思ふ事な かれ。其時を打死の日と定むべし。猶其人にも申し 聞かすべし。

一、本朝の国風、天子を除くの外、主君と云ふ者は 其世の名目也。独夫なれば、やがて予(われ)主人 と為るは唐の例也。聖人の教也。猶ほ物の数とも為 す事なかれ。

一、予が身寿命を天地と共にし、歓楽を極め、人の 死生を擅(ほしいまま)にし、世を自由自在に扱ふ こそ産れ甲斐は有りけれ。何ぞ人の下座に居られん や。

一、大悪の限りを為さんとしても、少しは善の出来ね ばならぬもの也。物の理合は万品同じがるべし。

一、俸禄などいふは鳥に与ふる餌の如きもの也。天 道豈(あに)無禄の人を生ぜん。予が心に叶はねば、 やぶれたるわらんぢをすつるが如くせよ。

一、人に対面せば、此奴はいかにせば打殺さるゝぞ と見取るべし。此奴殺すはわけは無いと思ふ位な者 は智なし。少し六ヶしきと思ふ位な者は智あり。其 智あるは早くだまして味方にすべし。

一、人の家に入れば、兵器は何所に在ると、先づ目 を付くべし。其次は財宝の類は何に入れ置くと考ふ れば、家の部分(ぶわ)けせるが如し。

一、万国に生れしか、或は外国へ渡らば、王に成る を以て心とすべし。日本にて《は開闢の昔より天子 はころさぬ例なれば、是斗りはいけて置くべし、》 将軍とかいふ者に成る心を工夫すべし。《天子と 同様なり》

(《天子と同様なり》という部分は、「坂本竜馬 全集」にも「坂本竜馬読本」にもない。近藤さん が引用している条文にあるので追記した。)

一、予に随ふ者は生捕同然、予に不随者は皆讐敵と 見て、心をゆるす事なかれ。

一、人を殺す事を工夫すべし。刃にてはヶ様のさま、 毒類にては云々と云事を暁(さと)るべし。乞食な ど二三人ためし置くべし。

一、海賊は船軍の手習なり。よく心を用ゐて、かり そめに過す事勿れ。

一、人を一人殺せば、其魂我に乗りうつりて、智も ふえ、命も延るものと心得べし。兼て工夫満つれば 戦場面白きもの也。

一、博奕の類は一ものがす事なく心得置くべし。さ れど小芸にて人智をためす也。拙(つたな)し。

一、無音砲、毒煙の類、ためし置くべし。是亦人の 死するを主とす。其死ぎはに目を付べし。犬切にす べし。

一、予死する時は、命を天に返し、位高き官へ上る と思定めて、死を畏るゝ事なかれ。

一、悪人の霊魂を祈らば、我に知慧よく付く者也。 先づ釈迦、歴山王、秀吉、始皇。而して泉の如く策 略も亦生ず。

一、神明は有者(あらもの)なれば、用捨すべし。 造物神策の密事なれば、鬼神も之を知らしめず、 只幽界と云は隠形(おんぎやう)の道にて知らるゝ 者也。

一、世に生利を得るは事を成すに在り。人の跡を慕 ひ、人の真似をする事なかれ。釈迦、孔子の類、唐 土の世々の天子も皆しかる事をせり。

一、義理などは夢にも思ふ事勿れ。身を縛らるゝも の也。

一、耻と云事を打捨てゝ世の事は成るべし。使ひ所 によりては却って善となる。

一、なる丈け命は惜しむべし。二度と取かへしのな らぬもの也。拙きと云事を露斗(つゆばか)りも思 ふ勿れ。

一、盗賊と世に云者は、予世を見るの手遊なり。歴 代にさせて心を慰る所也。

一、薄情の道、不人情の道、忘るゝ事勿れ。是を 却而(かえつて)人の悦ぶ様にするを大智といふ。

一、礼儀など云は、人をしばるの器也。世をしめか ためて吾が掌中に入る具也。

一、涙と云は、人情を見する色也。愚人、婦女子に 第一の策也。

一、忍は知らせぬを主とす。事を成就するを本意と す。

一、事は七八分成就の時を大切とす。必ず気を許す 事勿れ。征夷の大将も帰るさには疲るゝ事あり。

一、衣食住、財宝を与ふるに、智あるものは偽とし れども、幾度もすれば其心切(しんせつ)に落入者 也。

一、隠形などは覚置くべし。されど芸少き故取るに 足らず。

一、弓馬剣槍も人を殺すの術を主とす。むだ事にな すは益なきの日光を消す也。

一、王陽明曰、六経は心の註也。仏者曰、断見と。 是は見処(みどころ)あり。

一、日輪の影に贔負なきが如くすれば、世は知らず 識らず我に落入者也。

一、世界の人民、如何にせば鏖殺(みなごろし)に ならんと工夫すべし。胸中に其勢あれば天下に振ふ もの也。

一、世界に撒(ま)き散らしたる人民又は金銀の類、 自在に予が言を聞けば、天下を掌握するの才ありと 知るべし。

一、天下の物各其主ありて、一銭を奪はゞ盗賊と称 し、一人を殺せば人亦予を害す。斯くて地震の霹靂 (へきれき)するや、数万の家を破壊し、洪水の溢 るゝや幾億の生霊を殺す。是を天命と云て恐るゝは 何事ぞや。人倫素より小量にして大器なきか故なり。 されば世界を嗚動せんと思ふ人こそは、胸中に此心 無くんばあるべからず。

一、世下り、道衰へては、天下の人民貧苦病苦にな やめり。是を治むるの術金銀薬種にあり。

一、釈迦、空海、義経、正雪等奇術を知りて世を扱 ふとも、何れも小智短才の者也。日本にては神武天 皇、唐にては泰始皇が如き天下を併呑する大量を以 て、加之(しか)も彼の術も亦存せば、地球に名あ りて後世に及ばんか。

一、学問の道他なし、只生死の情を察する而己。

一、天文を覚り、地理を握る、人意を併呑する一術 也。

一、天下の人倫悪を好めば善にうとし。善を行へば 悪ににぶく、両不全を英将の不具とす。

一、己の欲する所を人に知らしむる勿れ。己が悪処 も亦然り。反之他の二情を覚るを英明 の器とす。

(「」は返り点のつもり)

一、愛すれば近づき、悪めば去り、与ふれば嬉ぶは 禽獣の様也。人倫亦何の異る処かある。

一、鳥獣といへども、己を殺さんといふを知れば、 身構えするもの也。如何なる馬鹿者にても打解けざ る内は殼中に入れ難し。是を生捕り侯術他なし、食 色の二つにあり。

一、世界を滅するは大洋の溢れ漲るに在り、是は天 竜の如し。人倫一目行ひては、如何にせば 加斯なるを得ん。只火術に在り。山野 を赤裸に焼払ひ、家屋を焼滅し加之、炮烽地雷の決 震を以てせば疑ふ所なけん。

一、牛割(うしざき)に遭ふて死するも 逆磔(ぎやくたく)に会ふも、又は席上にて楽しく 死するも、其死するに於ては異なる事なし。され ば英大なる事を思起すべし。

一、重賞の下に智士死するを見て、将に将たる人は 天下の器を見るべし。

一、蛇竜混雑といへども、吾竜なれば、他に於ては 同気相求の意あり。匆忘言合(いいあひ)て置に 不及。

一、人に一勝を与へて予に百勝を取るを知らしむべ し。古今の英傑大方は然かして豪卒を掌中に入れた り。

一、平談にして、我年齢にまされる人に淫談戯論を 為せば、其語中に見下げらる所を生ずる也。

一、我に劣る人は、我が行きたてを見て策れば、大 方は同じかるべし。

一、我より身分まされる人と年高きは、策るに意外 の智ありと知るべし。

一、如何なる臆すべき所なりとも、其対面の人、彼 奴原夫人に戯ける様は如何なる振舞ならんかの意を 以て其容体を見れば論ずるに足らぬ風俗あるべし。

一、形を望んでは下賤を見下し心を察しては凡夫と 暁り、動揺せば小蝉の如くと一目の胸中にありたし。

一、蜘蛛は網を乾坤に張りて虫のかゝるを待つ。士 農工商の様凡此虫の如し。

一、地上の活物中にて、言語して智ある虫を人とい ふ。そは万物を取扱ふ様にて知らる。されど天変を 知らず。

一、威光を見する、人を殺すに在り。人十人を害す るには十処にして衆目を威(おど)す。

一、天下は我手に入て後は、進退周旋威光を見する 事主意也。太閤が龍造寺に大小を為持、 始皇が阿房宮を築くの類也。

一、主君を大悪に陥れて後ち之を殺すには、天下手 を我に借るといふ各自よし。(外国)

(「各自」→「名分カ」との註あり。)

一、人に益を与へて後に策を廻らせば、中人以下は 陥るもの也。

一、天下万民を救ふといふ名あれば、耻る所なしと 定めて事にかゝるべし。

一、生人に疵を付るや否や、人間なりと思ふべから ず。臆(きおくれ)の生ずるもの也。畜類を殺すよ り安心すべし。

一、畏ろしと思ふ心露斗りも身に蓄ふ事勿れ。死人 なるは土の如く思ひ、死体、骨などは石瓦の如く思 ふべし。

一、今上皇帝及び王座の神璽(しんじ)を頂き持て 鳳輦(ほうれん)を迎へんには、禽獣草本と雖も 鰭伏(ひれふ)して靡かん。況や人類に於てをや。

一、蝦夷地には天皇の血統を以て新将軍を立て、我 と思ふ者之を補佐し、自在に蛮士を圧領するを主と す。

一、神式天皇本州に入る時、不随者は立処に之を殺 し、随ふに於ては其国の造とせり。この智 蠢民(しゅんみん)を扱ふに最上なり。

一、軍は本陳を切入て主将を殺すを要とす。万象も 亦自在になすは其意あり。

(「本陳」は「本陣」の誤記だろう。)

一、和儀調ては主将の人質を取りて之を扱ふ事しん の如くし、未練の条々を令云(いわし め)て敵人の勇武をにぶくす。

(「和儀」は「和議」の誤記だろう。)

一、第一兵糧の工夫致して後なれば、刀剣弑殺の具 を用意すべし。

一、外国を攻るにも、其国にて米蔵は必ずあるもの 也。是に先づ眼を付けて奪取工夫すべし。

一、愚人ほど郷間には成安きもの也。重賞を用ふる 事専一也。

一、中人以上にはホメソコナヒ有り。中人以下には 叱りソコナヒ有るもの也。

一、青人草の食ひて生くべきもの也と勅りし、天照 大神の此語中に眼を晒して人を扱ふべし。

一、衆人皆善を為さば、我独り悪を為せ、天下の事 皆然り。

一、大奸智無慾の如くにして、今世の万人測り知る べからざる人を、日本には鬼神といひ、唐土にて聖 人といひ、天竺にて仏と云ひ、西洋にてはゴツドと 云ふ。所以一つなり。

一、殺生、偸盗、邪淫、妄語、飲酒の破戒素よりに て、殺生は軍の工夫、偸盗は忍術の調練、邪淫は反 間のナラシ、妄語は差挾りのタクミ、飲酒は人をな づくるの梯なり。

一、慎而勿己とは英将 の工夫也。

一、民は之によらしむべし、是を知らしむ可らずと 云心ばえ、万事にあるべし。

一、六十余州の城都は、人体のキウ処の如し。知ら ずんばあるべからず。

一、方今の江戸を目玉とし、京都帝王の玉座を 腹腸(はらわた)とす。目玉は潰れても、腹腸あれ ば活きて居る。

一、良将英雄も慾僻に由りて謀らるゝ者なれば、之を 戒慎せんとするは智の次なる人なり。偽慾偽僻をこ たへむべし。

一、位といふは本末を云ふのみにて、恃むに足らぬ 飾也。智と勇とを蓄ふべし。天下乱れたる時により て知るべし。

一、時運を察して人情を暁るべし。衆情を傾くを見 て先づ陥る処を切る。

一、気の弱きは善多く、気の強きは悪多し。

一、信長は天下の人々高位を望で朝廷の取次をせば、 国中の人我に従ふ決定(けつじよう)を知りたり。

一、太閤は、受嗣ぎて官位を取次ぐ。斯くて取り次 げば家来も同様かく行也。

一、家康は、最早天下は天下に還るフリあり、天子 を以てタヽキて是を矢玉にさへ使はゞ、公の如く吾 天下を自在にすべしといふ事を知りて、行ひたる也。 故に口には忠を云て身には自在を行ひたり。

一、人には其性の短の限りを与へ、吾は天賦の得手 物を行ふべし。軍には敵将の愚を顕はし、不覚を与 ふること肝要なり。

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