2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
463 市民的不服従(2)
2006年4月2日(日)


1964年
 公民権法成立。すべての公共施設における人種差別を禁じる。
 しかし、黒人の実質的平等は実現されず、翌年には公民権デモが組織されさた。
 9月
 カリフォルニア州立大学バークレー校で、18の学生団体からなる共闘組織 FSM(フリー・スピーチ・ムーヴメント)が当局による政治活動の制限に抗議して「反乱」を起こす。
 これが全国の大学に飛び火。また北爆開始にともなう反戦ティーチインや徴兵カード焼却といった市民的不服従のベトナム反戦運動も、65年から本格的な動きを見せるようになっていった。
1966年
 黒人の自立・武装自衛を説く「ブラック・パワー」路線がSNCC(学生非暴力調整委員会)によって首唱される。
 以上のような時代背景のもと、1966年9月、アメリカ政治学会の大会でロールズはおおよそ次のような「市民的不服従の正当化」を報告する。川本さんの要約は次のようだ。


 はじめに「市民的不服従が正当化される場合、それは多数派の〈正義感覚〉に訴えて、異議が申し立てられている措置の再考を促し、反対者たちの確固たる意見では社会的協力の諸条件が尊重されていないことを警告する、という政治的行為として通常は理解しうる」と明言した彼は、再び「正義にもとる法を遵守することの根拠」をとりあげる。だがその節のおわりでは「もし多数派の制定する法規が不正義の一定限度を越えていると判断できる場合なら、市民たちは市民的不服従を考慮してもよかろう」という留保を加えて、不服従の位置づけと正当化とに向かう。
 彼が不服従の運動を正当化する三つの条件に挙げるのは、

(1)通常の異議申し立てをしているにもかかわらず、相当期間にわたり意図的な不正義のもとにおかれていること。
(2)その不正義が平等な市民の諸自由に対する明白な侵害であること。
(3)同様の場合に同じような異議申し立てをすることが一般におこなわれたとしても、受容可能な結果がもたらされること。

 以上であり、さらに戦術上の問題として、不服従の権利行使は合理的であってかつ異議申し立て者の目的を促進すべく無理なく計画されたものでなければならない、という条件を補足している。



 翻訳のせいか、あるいは原文そのものの晦渋か、なんともまわりくどく分かりにくい文章だ。とくに「反対者たちの確固たる意見では社会的協力の諸条件が尊重されていない」の部分は私には読解できない。その部分は無視して読むことにする。
 実はこの報告が公刊されたのは3年後の1969年だった。その3年間には次のような激しい市民的不服従が展開された。

1967年
 7月
 死者41名を出したデトロイトでの黒人蜂起
 10月
 ペンタゴン前に十万人を結集したベトナム反戦の大デモンストレーション
1968年
 4月
 不服従運動のシンボル的存在であったキング牧師暗殺される。
 6月
 小児科医ベンジャミン・スポックらベトナム反戦運動活動家に対する有罪判決
 8月
 シカゴの民主党全国大会の会場周辺で、反戦・平和を訴えるデモ隊と警官隊とが衝突(翌7人の被告が「騒擾防止法」違反容疑で取り調べを受け、いわゆる「シカゴ・セブン」の冤罪事件として世人の注視するところとなった)。
 11月
 「法と秩序」回復を謳った共和党リチャード・M・ニクソンが第三十七代大統領に当選。

 これらの動向を踏まえて、ロールズは「市民的不服従の正当化」の公刊の際、最終節に二つの段落を加筆されたという。川本さんは「学会発表後の時代のうねりを反映してか、いつになく歯切れがいい。」と言い添えて、次のように要約している。


 憲法についての連邦最高裁の見解が、もし永続的な評価を得ようとするものであるならば、人びとにその健全さを納得させなければならない。訴えの最終審は、連邦最高裁でも連邦議会でも大統 領でもなく、選挙民全体なのである。市民的不服従を続ける者はじっさい、この選挙民全体に訴えかける。‥‥‥分裂・抗争の危険を完全に回避する方法など存在しない。だが、正当な市民的不服従が国内の平和を脅かしていると思われるような場合でも、その責任は異議を申し立てているがわにあるというよりもむしろ、そうした敵対を正当化するような権威や権力の濫用をおこなっている人びとのほうにこそある。



 このもの言いは実によく分かるし、わが意にもかなっている。やがて「正義論」を打ち出すロールズの面目躍如たるところがある。ただ、「正当な市民的不服従」というときの「正当」が問題だ。先の引用文の「三つの条件」がその正当性の根拠ということなのだろう。


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