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第840回 2007/08/01(水)

「真説・古代史」補充編

『ヤマト王権の近畿侵略史』:沙本城の戦い(1)


 「垂仁記」には「沙本毘古(サホヒコ)王の叛逆」と呼ば れている説話がある。「タギシミミの叛乱」や 「タケハニヤスの叛乱」 と同様に、これもヤマト王権側から仕掛けた王朝簒奪 戦争の一つであることが、追々論証されていくだろう。

 古田さんはこの説話を「記紀説話最高のシーンのひとつ」 と評している。それはヤマト王権が東鯷国を壊滅して 日本列島の中央部(近畿地方)を支配する分王朝としての地 位を確立するに至った決定的な戦いであった。

 今回はその説話のあらましを、古田さんの口語訳によって、 紹介しよう。なお部分的に、「定説」とは違う解釈があるが、 その吟味は割愛する。また説話分析の論点にしたがって、全 体を三話に分けて①②③の記号で示した。

 説話を読む前に、その説話解読のためのキーを提示して おこう。
 イクメイリビコイサチ(垂仁、以後「イサチ」と略す。) は7人の后を娶っている。 第一后は佐波遅(サワヂ)比売(説話中では沙本毘売サホヒメ)、 第二后は氷羽州(ヒバス)比売(説話中では兄比売エヒメ)。次代 の王は氷羽州比売の第二子が継いでいる。オシロワケ(景行) である。



 イサチは、沙本毘古(サホヒコ)命の妹、沙本毘売(サホヒメ) を后とした。サホヒコは、妹の婚ぐ前夜、彼女に問うた。 「夫と兄とどちらが愛(いと)しいか」と。妹は「兄さんの 方が愛しい」と答えた。すると、彼は「お前が本当にわたし のことを愛しいと思うならば、わたしとお前とで天の下を治 めよう」といい、八塩折(やしおおり)の紐小刀(ひもがたな) (くりかえし鍛えた鋭利な紐つきの小刀)を作って、妹に授 けて言った。

「この小刀をもって、夫(イサチ)が寝 ているとき、刺し殺せ」。

 その後、イサチはサホヒメの膝を枕として寝ていた。彼女 は夫の頸を刺そうとして、三度小刀をふりあげたけれども、 「哀(かな)しき情(こころ)」に忍びず、頸を刺すことが できず、泣く涙がイサチの顔の上に落ち溢れた。そこでイサチ は驚いて目覚め、「わたしは不思議な夢を見た。沙本の方 より暴雨(はやさめ)が降ってきて、にわかにわたしの顔に そそいだ。又錦色の小さな蛇が、わたしの頸にまつわりつい た。このような夢は、一体何の表(しるし)だろうか」と言 った。そこでサホヒメはたまらなくなって兄との経緯を語っ た。

 イサチは.「すんでのこと、欺かれるところだった」と言 って、すぐ軍を興してサホヒコを撃ったところ、サホヒコは稲城 (いなぎ)を作って待ちうけて戦った。この時、サホヒメは、 兄への思いに耐えず、後門より逃れ出て、稲城に入ってしま った。

 その時、サホヒメは懐妊していた。イサチは后が懐妊しているた めに、これを攻めるに忍びず、三年の間、城を包囲したまま、 時を過した。



 その攻めずにいる間に、サホヒメの妊んでいた御子は既に産れ ていた。落城に臨みサホヒメは、その御子を稲城の外に置いて、 イサチに対し「若し比の御子を、あなたの子とお思いいただ けるならば、お引取り下さい」と言った。イサチは「兄は怨 んだけれども、サホヒメは愛(いと)しさに耐えぬ」と言い、 サホヒメを得たいと思った。そこで軽捷な力士に命じた。「子供を 取るとき、母王をも取れ。髪でも、手でも、つかんで引き出 せ」と。それを察知したサホヒメは、髪を剃り、頭に覆い、玉の 緒や衣を腐らして衣服のようにまとうた。力士が御子を取り、 サホヒメの髪を取ると、髪が落ち、手を取ると、玉の緒が切れ、 衣を握ると、衣は破れた。そこでサホヒメを得ることができな かった。

 イサチはこれを悔い恨み、玉を作る人等を悪(にく)み、 其の地を皆奪い取った。そこで諺に「地(ところ)を得ざ る玉作り」というのである。



 イサチはサホヒメに言った。「凡そ子の名は必ず母が名づける ものだ。この子の御名を何と名づけようか」と。サホヒメは 答えた。「今、火の稲城を焼く時に当って、火の中に生れた。 そこでその御名は本牟智和気(ホムチワケ)の御子と名づけ てほしい」と。

 またイサチは言った。「どのように養育したらよいだろうか」と。 サホヒメは「大揚坐(おおゆゑ)、若揚坐を定めて養育してください。」 と言った。(揚坐 嬰児に湯を浴せる婦人か)

 さらにイサチが「あなた(サホヒメ)の堅めた美豆能小佩(みずの おひも 立派な小紐の意か)は、誰が解いたらいいか」 (あなたの後継者としての后は誰にしたらいいか)と聞くと、 サホヒメは答えた。「旦波(たには)の比古多多須美智宇斯 (ひこたたすみちうしの)王の女、名は兄比売(えひめ)、 弟比売(おとひめ)、茲(こ)の二はしらの女王(ひめみこ) は、浄き公民(たみ)です。ですから、お使いなさればいい と思います」

 イサチは遂に、サホヒコ王を殺した。その妹、サホヒメも また、兄に従って死んだ。
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