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第808回 2007/06/17(日)

「真説・古代史」補充編

「神代紀」再論:「思邦歌」の従来の解釈


 いま、岩波版日本古典文学大系の
(1)「古事記」
(2)「日本書紀」
(3)「古代歌謡集」
の三種の「思邦歌」を眺めている。

 前回掲載したように、(1)では三つの歌をそれぞれ独立 した歌として扱っている。(2)では(1)とは違う順になって いて、全体で三連一組の詩の形になっている。どちらが古形 (もとの形)なのか。私は判断の決め手をもたないが、 景行紀の九州討伐譚が日本旧紀からの盗用であることを考 えると、もともとは(2)の形だったのではないだろうか。 前回では(1)と(2)の訓読を転記したので、今回は (3)の日本書紀からの訓読を転載して、それを眺めながら論を 進めていこう。(それぞれ定本が違っていて、少しずつ異 なるところがある。)

① 愛しきよし 我家の方ゆ 雲居立ち来も

② 大和は 國のま秀らま
  畳づく 青垣山
  籠れる、大和しうるわし

③ 命の 全けむ人は
  畳薦 平群の山の
  白橿が枝を 髻華に挿せ この子

 (1)(2)(3)とも、もちろんのこと、ヤマトタケルや オシロワケ(景行天皇)が創作した歌などという解 釈はしていない。当時流布されていた歌謡をそれぞれの 物語の中に挿入したものと考えている。

 ではその歌の意味を従来はどのように解していたのか。 (1)(2)(3)の頭注を総合すると次のようである。 (口語訳は(2)による。)

① ああ我が家の方から雲がわいて流れてくることよ。

 雲が立つことは、その下に人間の生活があることを示す。 親しい人をしのぶときに、雲だけでも立てと歌う例が万葉に ある。

② 大和は最もすぐれた国。
  青青とした山が重なって、
  垣のように包んでいる大和の国は立派で美しい。

 独立の国ぼめ歌で、国見の儀礼の寿歌か。

③ 生命力のあふれた人たちは、
  この平群の山の
  白橿の枝を髻華として髪に挿せ。この子よ。

(1)の解説
 この歌も伝説に即すれば、命の無事な部下に対して、帰 郷後の生の悦楽を希望した歌となるが、独立した歌として 見ると、長寿を祈る民謡と解することができる。

(2)の解説
 歌垣の民謡で、若者たちに青春を無為に過ごさぬように 訓す老人の歌であろう。

 次に、「思邦歌」のなかで難解とされている言葉、 ②の「マホラマ」をどう 解しているか。

(1)原文「麻本呂婆」=訓読「マホロバ」
  「マ」=接頭語、「ホ」=「秀」、 「ロバ」=確実性を示す接尾語「ラマ」

(2)原文「摩倍邏摩」=訓読「マホラマ」
  「マ」=「真」、「ホ」=「秀」、「ラ」=状態を示す 接尾語、「マ」=「場」

(3)原文「摩倍邏摩」=訓読「マホラマ」
  「ラマ」=接尾語 「ラ」と「ロ」は相通、 「マ」と「バ」の相通((1)の「マホロバ」と同じ意である ことを主張している。)

 要するに、なんとかつじつまを合わせようと試みているが、 いずれも恣意的は解釈でしかない。

 次に「白橿(熊白檮)が枝を 髻華に挿せ」の意味について はどうか。

(1)
 生命の樹と信ぜられていた樫の葉を髪に挿すのは長寿を ねがう類似呪術である。

(3)
 木の花や葉を髪にさして、植物の生命力を人体に感染させ る呪術。後には単なる装飾となり、造花なども用いる。

(2)では巻末の補注で②の歌全体を詳しく解説している。全 文転載しておこう。

 マソケムは全ケムの意。完全であろうの意。生命力の完全 であるとは、若くて生命力に満ちている意。若者を称える表 現。

 畳薦はタタんだコモ。幾重にも重ねる意で、へグリのへ (重に通じる)を導く修飾語。へグリは、今の奈良県生駒郡 平群村一帯。

 橿は、橿原の地名などにもあるように、当時多くあった木。 大樹となり神聖視された。

 ウズはカザシ、植物を頭髪にさすもの。植物の生長の呪力を 人間に感染させるもの。

 此ノ子は、近くにいる若者に呼びかけた語。

 この歌本来は、若者の春の野遊びなどで、老人が歌って、 生命ある若者を称え、また自ら老年に近づくことを嘆く歌で あろう。

 (2)の補注を定説とみなしてよいだろう。長寿や健康を願う 「おまじない」と解している。
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