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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
第806回 2007/06/15(金)

「真説・古代史」補充編

(お休みです。)



今日の話題

予防訴訟控訴審に右翼があらわれた。

 昨日(6月14日)、予防訴訟(国歌斉唱義務不存在確認等請 求訴訟)の控訴審・第1回法廷(東京高裁)を傍聴しにいった。 実は傍聴抽選には外れてしまったのだが、未練がましく裁判所前で うろうろしていたら、幸運にも被控訴人団の方から被控訴人団 用の余った傍聴券をいただくことができた。ご好意ありがとう。

 さて、「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちの戦列の端っこに くっついて、今まで足を踏み入れたことのない裁判所に何度か いくことになったが、今回は今までになかった異変事が あった。傍聴抽選を待っている列の中に、一見してその場の雰囲気 にまったく合わない十数名の黒っぽいスーツの一団が加わってきた のだ。5,60歳ほどの小柄で小太りのあばたづらのボスらしき 御仁以外は2,30代の青年だった。一瞬ホニャニャラ団かと 思ったが、裁判傍聴のためにおめかしをしてきたのだろうか、 そのスーツ姿が着慣れていないようでなんとなくぎこちない。 そういうところから判断するとやっぱり右翼さんだろう。 最も最近はホニャニャラ団と右翼の区別はしにくくなっている ので、どちらとも取れる。例えば右翼「日本青年社」は指定広域 暴力団住吉会系の団体であり、「拉致被害者を救う会」の 主要構成員だといわれている。

 この予防訴訟に現れたコワモテ集団はなにものなのか。 2,3人が傍聴券を当てたようで、公判終了後、裁判所前の 広場で円陣を組んで報告会らしきことをやっていたらしい。 それを目撃した人の話しによると、公判時に控訴人(都側) 席にいた一人がその中で挨拶していたという。まさか都の職員 ということはないだろうから、弁護士だろうか。いずれにし ても控訴人(都)側の支援者という形になっている。もしも チンタロウの臭い息が掛かっているとしたら、これはスキャン ダルになるな。

 右翼が街宣という暴力に訴えるのではなく裁判に訴える ようになったとしたのならそれはそれで悪いことではないが、 そのうち動員数を増やしてきて一般傍聴人を妨害するのでは ないかという危惧はある。単なる杞憂で終わればよいのだが。

 さて、公判の方。都側は準備書面を提出しただけで、 口頭弁論はまったくしなかった。被控訴人側は3人の弁護士が 都側が主張する控訴理由に対する反論の概略を弁論した。 (少し詳しく書こうと思っていたのだが、入手した資料と メモをバスの中に置き忘れたしまった。情けない。)

 それを聞いた限りでは、都側には9・21難波判決の判決理由 を切り崩すような論理はひとかけらもない。即控訴棄却が妥当 だと思うが、さて、憲法の番人としての裁判所の存在理由が 問われているこの控訴審を、裁判官はどう裁くだろうか。

 ところで、9・21難波判決のとき、私は抽選に外れてこの 画期的な判決を直接聞くことができなったが、その判決の、 臨場感あふれる判決瞬間の報告とともに、判決内容に対する 適切な法的解説をしている文章に出合ったので、そのホーム ページの紹介も兼ねて、予防訴訟の復習をしておこうと思う。以下は

法学館憲法研究所

からの転載です。


2006年9月21日、東京地裁において、「君が代」予防訴訟に対する判決が言い渡されました。この裁判は、都立高校の教職員が、卒業式などの行事において、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務がないことの確認等を求めた裁判です。

判決言い渡しということもあって、大勢の傍聴希望者が集まり、49枚の傍聴券に対し、希望者は250名を超えました。抽選の結果、私は外れてしまいましたが、原告団のご好意で傍聴券をいただき、法廷で判決を傍聴することができました。

午後1時半になり、裁判官が入廷し、いよいよ言い渡しです。裁判長が「判決を言い渡します」と言って、原告の名前を読み上げ始めました。すぐに主文を言わないため、法廷には緊張感が走ります。401名の原告のうち、32名の名前を読み上げ、この32名を「退職者」、残りを「在職者」と呼ぶ、と裁判長は述べました。この瞬間、私は、“「退職者」について訴えを却下し、「在職者」に対しては請求棄却か!?”つまり、敗訴判決か、と思いました。

しかし裁判長は、在職者について、「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務がないことを確認する」と述べました。ここで勝訴判決とわかり、法廷がどよめきました。続いて、在職者に対し、「国旗に向かって起立しないこと及び国歌を斉唱しないことを理由として、いかなる処分をしてはならない」とし、処分差し止め請求も認容しました。ここで法廷には大きな拍手が沸き起こりましたが、すぐに「静粛に!」という注意が入りました。主文の言い渡しの途中でしたが、原告や弁護団は涙を流し始めており、中にはガッツポーズをする弁護士もいました。

続いて、音楽教員について、ピアノ伴奏についても義務がないこと、および伴奏拒否に対して処分をしてはならないとしました。さらに、退職者も含め、すべての原告に対する賠償金として、一人当たり3万円の支払いを命じました。主文各項目を読み上げるたびに、法廷のあちこちで、「よし!」「やった!」といった声が上がる一方で、被告席に座っている都側代理人の表情はどんどん曇っていきました。

続いて、判決理由です。裁判所は、争点として、(1)義務不存在確認の訴えおよび処分差し止めの訴えが適法かどうか、(2)国歌斉唱義務・ピアノ伴奏義務があるか、およびそれを命ずる通達が違法かどうか、(3)賠償請求の是非の3つをあげ、順に裁判所の判断を示しました。

(1)については、不起立に対して、戒告、減給、停職などの懲戒処分を受けること、再発防止研修の受講を命じられること、退職後の再雇用が拒否されることが確実であると推認することができ、起立やピアノ伴奏についての職務命令を拒否するか、自己の信念に反して従うかの岐路に立たされる、と指摘しました。そして、職務命令が違法であれば、侵害される権利が思想良心の自由に関わるものであり、事後救済になじまない権利であるなどとして、義務不存在確認の訴えおよび処分差し止めの訴えの適法性を認めました。

(2)について、まず、日の丸・君が代が、戦時中に皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことは否定しがたい事実であって、国民の間で宗教的・政治的に見て価値中立的なものと認められるに至っていないと指摘しました。それゆえ、卒業式等で国旗掲揚・国歌斉唱に反対するものも少なからずおり、このような世界観・主義・主張を持つ者の思想・良心の自由も、公共の福祉に反しない限り、憲法上保護に値するとして、教職員に対し、国歌斉唱すること等を義務付けることは、思想良心の自由の制約になるとしました。

被告らは、国歌斉唱・ピアノ伴奏は外部的行為であって、内心領域における精神活動まで制約するものではないと主張していました。しかし裁判所は、内心の精神活動と外部的行為とは密接な関係にあり、切り離すことはできず、国旗に向かって起立したくない、国歌斉唱したくないといった思想・良心をもつ教職員にこれらを命ずることは、思想・良心の自由を侵害しているとしました。

そして裁判所は、思想・良心の自由も公共の福祉に反する場合には、必要かつ最小限度の制約に服するとして、教職員らに対する国歌斉唱等の義務付けが、必要最小限度の制約かどうかを、(i)学習指導要領の国旗・国歌条項に基づく義務について、(ii)いわゆる10.23通達(国歌斉唱等を義務付けた、2003年10月23日に出された通達)に基づく義務について、(iii)校長の職務命令による義務について、それぞれ検討しました。

(i)学習指導要領について、裁判所は法的拘束力を認めましたが、あくまで教育の機会均等・全国的な一定の水準の維持のための大綱的基準であるとしました。それゆえ、大綱的基準を超え、教職員に対し、一方的な一定の理念や観念を生徒に教え込むことを強制する場合は、教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」に該当するとしました。そして、学習指導要領の国旗・国歌条項は、卒業式などにおける国旗・国歌の取扱いを一義的に決めておらず、国歌斉唱等の義務を負わせるものではないとしました。

(ii)10.23通達については、国旗掲揚・国歌斉唱の実施方法につき、各学校の裁量を認める余地がないほど一義的な内容になっていることを認定し、通達に違反した教職員に対し、懲戒処分をしていることなどから、国歌斉唱等の強制があるとしました。そして、これらは教育の自主性を侵害し、教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」であって、違法であり、国歌斉唱等を義務付けることは、公共の福祉の観点から許されている制約とはいえない、としました。そして、10.23通達やそれに関する都教委の指導等は教育基本法10条に反し、憲法19条の自由に対する必要最小限度の制約を越える、としました。

(iii)校長の職務命令について、原則として教職員は従わねばならないが、重大かつ明白な違法があれば、従う義務はないとしました。そして、国歌斉唱等について、思想・良心の自由に基づき、これらの行為を拒否する自由を有するとしました。また、不起立によって式典の進行や国歌斉唱を妨害することはないこと、ピアノ伴奏拒否に対しても代替手段があることを指摘しました。その上で、憲法は相反する世界観・主義・主張を持つ者に対しても相互の理解を求めているとして、いわば“寛容の精神”を被告らに求め、国歌斉唱等の義務を否定し、国歌斉唱等の義務付けは、憲法19条に違反すると断じました。

(3)国家賠償の是非について、国歌斉唱等の義務がないにもかかわらず、違法な通達・職務命令により、自身の信条に従うか、不利益を避け起立するかで悩んだこと、あるいは自身の信条を曲げ起立したことに対して、精神的損害が認められるとして、3万円の損害賠償請求を命じました。

最後に裁判所は、いわゆる“愛国心”の涵養などのために、式典において国歌斉唱等を行なうことは有意義だとしつつ、強制してまで斉唱させることは、少数者の思想良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置であると述べ、判決言い渡しを終えました。

裁判官が退廷するにあたって、弁護団・傍聴席は全員起立し、拍手で裁判官たちを見送りました。その後、法廷内のあちこちで、歓声が上がり、原告・弁護団らが、抱き合ったり握手したりする姿が見られました。本当に感動的な法廷でした。

午後6時からは、星陵会館で判決報告集会が開かれ、大勢の原告・支援者らが集い、勝訴判決の喜びを分かち合いました。また、この判決をきっかけに、「君が代」強制反対・教育基本法「改正」反対の運動につなげていくことの重要性が確認されました。

原告全面勝訴という判決は、非常に素晴らしいものでした。判決理由も、原告側の主張、すなわち、憲法学界の通説に従った論理構成であり、とてもしっかりしたものです。

判決は、指導要領の法的拘束力を認めつつ、大綱的基準にとどまるものであり、それを逸脱する場合には教育基本法第10条が禁止する「不当な支配」に該当するという判断枠組みを示しました。これは、最高裁が旭川学力テスト判決・伝習館事件判決等で示した枠組みに合致します。その中で、通達が指導要領の解釈を誤っており、違法であるとしています。その意味では、控訴審でも破棄されにくい論理構成をとっているといえます。教育基本法10条が、行政による教育への過度の介入に対する防波堤となることを示した点でも評価されます。

また内心の自由とそれに基づく外部的行為の密接な関係性を認め、君が代斉唱の拒否は、思想・良心の自由で保障される行為であると判断した点も評価できます。被告側は、外部的行為の制約にとどまり、内心の自由まで制約するものではないとの論理を立てていましたが、それを明快に斥けたのです。しかも、外部的行為に対する制約は、必要かつ最小限度でなければならないという基準を示しました。この点も、従来の判例では、精神的自由に対する制約が、たんに「合理的」かどうかで判断される(つまり、必要最小限度のものでなくても、人権制約が許容される)傾向が強かったことから見て、高く評価されます。憲法学説の理論構成にも合致しています。

それから、判決文では用いられていない言葉ですが、多数者に対して「寛容の精神」を求めたことです。判決は、「君が代」斉唱時に少数のものが着席することに対して多数者が感じるであろう「不快感」によって、原告らの基本的人権を制約することは相当ではないとしました。これは、多数者に対して、少数者への「寛容の精神」を要求したものと読むことができます。この点は、原告側(特に弁護団長である尾山宏弁護士)が、訴訟を通じて強調していた点です。少数者への「寛容の精神」こそ、人権保障にとって重要なものですから、裁判所がこれを認めたのは非常に高く評価されるでしょう。

さらに判決は、式典などにおいて国旗掲揚・国歌斉唱を行なうこと自体は、いわゆる「愛国心」の涵養や、「日本人としてのアイデンティティ」を育てるために有意義なものだと述べており、都教委などの姿勢にも一定の配慮を見せています。私自身は、「君が代」斉唱等が「愛国心」の涵養にとって有意義とは思いませんが、こうした裁判所の配慮は、判決の妥当性をより強めるものであると思います。

奥平康弘氏(東京大学名誉教授)は、その著書『憲法の想像力』の中で、憲法を「未完のプロジェクト」として、その実現を目指して、市民が日々憲法を実践していくことが重要だと述べています。この訴訟は、原告・弁護団が憲法を実践して、その一部を実現したものだと思います。

敗訴判決を「1%も予想していなかった」という都側は控訴の方針だと伝えられています。法学館憲法研究所では、引き続きこの事件をレポートしていきたいと思っています。

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2007/06/15(金) 16:28:40 | トレンド・キーワード