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第730回 2007/02/16(金)

《吉本ファシズム論より》:社会ファシズム(2)


 吉本さんは別の論文(「転向ファシストの詭弁」)で次のように 述べている。


 丸山真男や竹内好をはじめ、日本の進歩的な学者は、日本ファシ ズムの思想や行動を研究するばあいに、例外なく農本主義的なファ シズムだけを問題にしている。わたしは、絶対主義天皇制下のファ シズムの形態を農本的なファシズムにだけもとめるのは、一面的な 理解にすぎないとおもう。

 この農本的なファシズムは、厳密な意味では、ファシズムとはい いえないのであって、藤田省三のいうように、ある意味では変革の エネルギーが変態的に転化されたものと、いいえないことはない。 いわば、盲目的な無智であり、思想以前の問題にすぎない部分をも っている。

 しかし、丸山学派などがとりあげてこなかった日本ファシズムの 他の形態、すなわち、ソレルやベルンシュタイン流の擬制社会主義 的な言辞をろうして独占ブルジョワジイに奉仕するファシズムこそ 問題としなければならないはずである。


 農本ファシズムと社会ファシズムの違いをおさらいしておく。
 農本ファシズムは1935(昭和10)年前後から敗戦まで、変革を求める 民衆の良質な部分の心情に深い浸透力をもったイデオロギーである。 それは反資本主義の立場をとりながらも、前近代的な伝統意識につなが り、国家権力の天皇制支配の側面に結びついていった。
 一方社会ファシズムは、独占資本の戦時社会経済体制の内部矛盾 を、国家権力と一体化することによって打開しようとたもので、 危機に瀕した国家独占資本のイデオロギーにほかならない。


 日本で社会ファシズム的な政治運動を推進し、これに附随するかた ちで文化組織を小規模ながらもつくり出したのは、中野正剛一派の東 方会(1936年設立)ファシズムと、そこに寄生した文化ファシズムで あった。


 ここで言われている「文化ファシズム」とは東方会に参加して、 1940年に「文化再出発の会」(その機関紙が「文化組織」)を結 成した花田清輝、中野秀人、岡本潤らを指している。

 最近で「文化ファシズム」と呼ぶにふさわしいものとしてすぐ思い 当たるものに「日本を守る国民会議」というのがあった。この団体は 1997年に「日本を守る会」と合体していまは「日本会議」となっている。 その役員の出所は、財界人、元官僚、政治家、学者、文化人、宗教家 などほとんどの分野にわたっている。組織力・経済力ともに巨大な 勢力となっている。もちろん、あの「新しい教科書をつくる会」 もその傘下の団体である。

「日本会議」 という組織のあらましを客観的にまとめています。)


 戦争中、東方会ファシズム、文化ファシズムは、ブルジョワ・イデ オロギー的な必然と、天皇制の特殊な双面性によって支配的なカをも ちえなかった。そして主要な打撃をうけることなく戦争をくぐりぬけ ることができたのである。

 そのため、この擬近代的ファシズムが、どんなもっともらしい思想 を流布し、デマゴギーを一般化したかは、なお、検討すべき余地をの こしている。


 「天皇制の特殊な双面性」とはその「ブルジョワ地主的近代支配 と軍事的な封建支配」を指している。


 わたしの知見のはんいでは、東方会のイデオロギーは、終始、 中野正剛が昭和8年にかいた『国家改造計画綱領』をでるもので はない。ここに日本における社会ファシズムの問題は、集中 してあらわれている。

 この綱領は、軍部と民間の農本的なファシストたちによって企 てられた五・一五事件を直接の刺激として、満州事変以後の時代 的な転換を間接の契機としてかかれたものであった。いうまでも なく、当時、非合法的な形で流布されていた北一輝の<日本改造 法案>は、中野が原形として模倣したものである。

 中野は北にたいして独自な綱領を対立的に提出しようと試みた ものにほかならぬ。もともと、党人くずれのブルジョワ・イデオ ローグにすぎない中野と、本来的な土着の思想家であった北とは、 比肩しうべくもないが、中野の綱領と北の法案のあいだには、ブ ルジョワ・イデオローグが民族的な国家機構を至上化した場合 と、日本型の社会主義者が民族的な封鎖性に足をとられていった 場合とのあきらかなちがいを指摘することができる。


 以下、社会ファシズム(中野正剛)と農本ファシズム(北一輝)の 相違を論じている部分に重点を置いて読んでいくことにする。
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