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第724回 2007/02/06(火)

《滝村国家論より》:国家社会主義(8)
北一輝・土着の革命思想(1)


 北一輝が代表する日本ファシズムの一典型を吉本さんは「農本ファ シズム」と名づけた。この場合の「ファシズム」はどちらかというと 「国家社会主義」という意味合いが強い。しかしもちろん、北は単なる 西洋直輸入の社会主義者でもないし、単純浅薄なファシストでのない。 桶谷秀昭さんは北を『孤立した土着の革命思想家として、日本ナシ ョナリズムの命運に殉じた』思想家と捉えている。

 ここで教科書として、『「天皇制」論集』(三一書房)所収の滝村隆一 「日本国家論」を追加する。

 この論文は、北一輝『国体論及び純正社会主義』中の核心をなす 第四編の公認「国体論」への批判を取り上げている。そのモチーフを 滝村さんは『後の「改造法案」に結晶される日本革命論の理論的前提 ともいうべき北の日本国家論を、あくまで彼自身が確立した原理的= 方法的基礎との関連において再構成することにした。』と述べている。 以下、この論文を中心に北一輝の思想を概観していく。

まず前回で検討したように公認「国体論」=「制度イデオロギー」 の核心は<天皇=現人神>観と<天皇-即-国家>観の2点に集約され る。

 一方、北が確立した原理的=方法的基礎とは進化論に依拠したもの であり、科学的発想と全てを疑う合理的精神をその根幹としている。 従って、「神」を認めることができないのはもちろん、<天皇-即 -国家>という国家観も全く首肯できるものではなかった。北に とっては「国家」とは実体的なもの、つまり「社会」そのものでな ければならない。

 また、北が方法的に一貫して援用してきた生物・社会進化論の有機 体発想は、対象を<有機体>と<器官>、<全体>と<部分>という 実体論的関連において把握するものある。北が、天皇とは国家社会 を国民とともに構成する一分子にすぎない、と考えるのは必然であった。 滝村さんが引用している北の論述を並べてみる。


……天皇と云ふ国家の部分が国家全部の利益と目的との為めに意志すと 云ふことを以て部分と全部とを同一なりと云ふ能はざるは、恰も共和 政体の国に於て議会と云ふ国家の部分が同時に共和国の全部ならざる が如し。

……博士(穂積八束のこと……滝村)の如く、国家主権論の国家観た る国家とは主権的に見れば統治権の主体なりとなし、従て其の主体た る天皇を恣に国家なりと命名するならば、日露戦争は国家の戦争にあ らずして天皇一人の戦争となり六万の死者を出したる者は万世一系の 天皇なりと論ぜざるべからず。

 吾人は固より国家有機体説を主張する者なり。……今日の天皇は 国家の特権ある一分子として国家の目的と利益との下に活動する国家 機関の一なり。


 北は、このように、<天皇>を「国家(社会)」という有機体の 象徴的な部分器官としてとらえた。つまり<天皇機関>説である。

 <天皇機関>説といえば、美濃部達吉しか思い浮かべることがで きなかった自らの不明をいま恥じている。ちなみに「ウイキペディア」から 『美濃部の天皇機関説のおおよその理論構成』を参考資料として 転載しておこう。滝村さんの論稿は、この後、北の天皇機関説を詳 述しているが、そこに美濃部博士もチョッとだけだが出てくる。


1. 国家は、一つの団体で法律上の人格を持つ。
2. 統治権は、法人たる国家に属する権利である。
3. 国家は機関によって行動し、日本の場合、その最高機関は天皇である。
4. 統治権を行う最高権限たる主権は、天皇に属する。
5. 最高機関の組織の異同によって政体の区別が生れる。

(衆議院憲法調査会・事務局作成資料「明治憲法と日本国憲法に関する基礎的資料」から引用参照)

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