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第702回 2007/01/08(月)

戦争と平和(3)
私たちにはどんな抵抗が可能か


 憲法に「リコール権」を追加することなど、現在のどの政党にも期待できないのは明ら かだ。どの政治党派もいったん権力を握ればそれに頑強に固執して手放そうとはしない。 もちろん歴史上、リコール権を明文化した国家は皆無だし、したがって国民の命運に関 わる重大時に対処するために合法的なリコールがおこなわれた事はかって一度もない。 しかし、これまでに民衆による「叛乱」という暴力的なリコールは枚挙にいとまない。 最も最近の例ではソビエットの崩壊がそれに当たる。(クーデターは民衆によるリコール とは全く異なる。)

 しかし、ソ連の創成期、レーニンにはリコール権という考えがあった。しかし、それが 明文化されることはなかった。もしソビエット憲法にそれが明文化されていたなら、ソ連 はもっとましな国家になっていただろうし、民衆の血を流しながらのリコールという惨事 は必要なかった。

 「リコール権」の獲得は容易には実現し得ない。しかし、それが現在では最も重要な 政治的課題であるという認識を一般大衆が共有して得れば、その実現への可能性は 芽生えるだろう。

(少し、吉本さんの著書から離れます。)

 法やシステムの改革を通して戦争をなくす道は遥か遠く、容易ではない。あとは 個人的な抵抗・非協力を貫く道があるが、現実の戦争が起これば、これは命を賭しての 闘いとなる。わずかながら「大東亜戦争」時の抵抗者が記録されているが、記録される ことなく埋もれてしまった無名な人たちの抵抗が、点の様にではあっても、存在したで あろうことを私は疑わない。しかし、いわゆるレジスタンス運動は皆無であった。 私たちが持っている無名者の記録は、靖国神社、知覧特攻平和会館、『きけわだつみの こえ』など、国家のまやかしの「聖戦」に殉じた悲劇ばかりだ。

 私は20年ほど前に手にした一冊の本を思い出した。『イタリア抵抗運動の遺書』(冨山房 百科文庫)。フランスのレジスタンスは侵略者ドイツへのレジスタンスであったが、 イタリアのレジスタンスは自国のファシズム政府へのレジスタンスだった。そして、 イタリアと同じような状況下の日本ではレジスタンスは皆無だった。何故なのだろうか。

 同書の河島英昭氏の「解題」から。


それにしても、イタリアにおいて、なぜ反ファシズム闘争が可能であったのか?  本書の《手紙》の老若男女の書き手たちは、どのようにして個人の苦しみと歴史の苦 しみによく耐ええたのか? この疑問に対する答えは、掛け替えのないこれらの魂の 記録の一篇一篇の行間に、いわば無限の深淵となって、垣間見えるであろう。それ らを覗きこむたびに、私たちは目の眩む思いがする。それはあたかもすぐれた詩に出 会ったときの衝撃に似ている。一瞬後に、私たちは閉じたおのれの瞼の裏に、永遠の 暗い輪を認めるであろう。死が永遠であるが.ゆえにそれは死から発せられた一つの 答えだ。思うに、本書ほど死の影に満ちみちた記録は少ない。しかも個々の戦士 は、みずからの意志で、死に立ち向かったのである。

 1920年代から40年代にかけて、イタリアの民衆はファシズムから反ファシズムへと、 激しい思想の変革を遂げた。もちろん、A・グラムシやP・ゴベッティのように、すぐ れた思想家や知識人たちが果たした指導的役割の重要なことは、言うまでもない。 しかし、それに劣らず重要なのは、民衆が彼ら自身の生活のなかで、結果的に思想の 変革を果たしたという事実である。その変革の日々のなかでの、個々人の精神の軌跡 が、そして彼らの共通の理想を支えた叙事詩的クリマが、本書のなかには読みとれる であろう。

 最後に、不幸にしてイタリアの民衆と同じく、困難な状況下におかれた日本人に とって、昭和18(1943)年から昭和20(1945)年にかけて、抵抗運動が、ましてや 解放闘争が、ほとんど存在しなかった事実を、確認しておかねばならない。この甚だ しく不幸な時期にあって、いわば体制の犠牲者としての魂が、なかったわけではない (たとえば『きけわだつみのこえ』のように)。′だが、私たちは苦しい共感をもって それらの記録に接することがあっても、それらが〈レジスタンス〉の記録でなかったこ とだけは忘れないでおきたい。なぜならば、彼らの銃口は ―たとえば学徒動員され た兵士のそれは― 別の方角へ向けられていたのであるから。本書の手紙本文や略歴 から容易に読みとれることだが、イタリア抵抗運動のパルチザン兵のなかには、正規 軍からの脱走者が数多く含まれていた。銃口の向きを変えるためには、おのれの肉体 の消滅を賭けて、思想の変革を果たさなければならない。

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