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第698回 2007/01/02(火)

『柄谷行人著「世界共和国へ」を読む』(22)
剰余価値とは何か


 資本が得る剰余価値は、労働力商品の価値と労働者が生産した生産物の価値と の差額です。

剰余価値 = 労働者が生産した生産物の価値 - 労働力商品の価値

 しかし、それは個別資本の利潤のことではない。それは経験的に実在するものでは なく、資本一般の増殖がどのように可能なのかを明らかにするために必要な概念です。

『生産物が売れないとか一部分しか売れないとかであれば、あるいは生産価格以下の 価格でしか売れないとすれば、労働者はたしかに搾取はされたが、彼の搾取は資本家に とっては搾取として実現されていないのであって、しぼりとった剰余価値がまったく 実現されないこともあれば部分的にしか実現されないこともあるというだけでなく、実に 彼の資本の一部または全部の喪失をともなうことさえもあるのである。』 (「資本論」第三巻)

 商品の買い手がいなければ剰余価値は生まれない。その買い手とは労働者である。労働者が 労働力を売り、その賃金で自らが作った商品を買う。その流通過程で剰余価値が生まれる。 つまり、剰余価値は個別資本においてではなく、社会的総資本において考えられねばなら ない。

『どの資本家も、自分の労働者については、その労働者にたいする自己の関係が消費者に 〔たいする〕生産者の関係でないことを知っており、またその労働者の消費を、すなわち その交換能力、その貸金をできるだけ制限したいと望んでいる。もちろん、どの資本家も、 他の資本家の労働者が自分の商品のできるだけ大きな消費者であることを望んでいる。だ が、おのおのの資本家が自分の労働者にたいしてもつ関係は、資本と労働との関係一般で あり、本質的な関係である。ところが、まさにそのことによって、幻想が、すなわち自分 の労働者を除くそのほかの全労働者階級は、労働者としてではなく、消費者および交換者 として、貨幣支出者として、自分に相対しているのだ ― 個々の資本家を他の全ての資本 家から区別するなら、彼にとってこのことは真実なのであるが、― という幻想が生まれ  てくる。

(中略)

 資本を支配〔・隷属〕関係から区別するのは、まさに、労働者が消費者および交換価値 措定者として資本に相対するのであり、貨幣所持者の形態、貨幣の形態で流通の単純な起 点 ― 流通の無限に多くの起点の一つ ― になる、ということなのであって、ここで は労働者の労働者としての規定性が消し去られているのである。』(「資本論草稿」第二巻)


 マルクスが 『資本論』を書いていたのは、1850年以後のイギリスにおいてです。 一方で、労働者の貧窮化や労働条件の悪化ということを指摘しつつ ― それは産業 資本主義がようやく始まったばかりの地域では今も否定できない事実です、― マル クスは、資本制経済が、労働者が生産したものを自ら買うことによって実現される自己 再生的なシステムであることを把握していました。産業資本主義を特徴づけるのは、た んに賃労働者が存在するということだけでなく、彼らが消費者となるということです。 つまり、産業資本主義の画期性は、労働力という商品が生産した商品を、労働者が労働 力商品を再生産するために買うという、自己再生的なシステムを形成した点にある。 それによって、商品交換の原理が全社会・全世界を貫徹するものとなりえたのです。

 このように産業資本主義が自己再生的なシステムにもとづくということは、資本が、 商人資本のように流通過程での差異から利潤を得ようとすることと矛盾しません。資本総 体にとっては、剰余価値はどこから来ようとかまわないからです。しかし、根本的には、 資本制経済は、技術革新-労働生産性の向上という「差異化」なしに存続することはで きません。


 現在この国で進行している政・財・官合作の変革は「剥き出しの資本主義」 という負の変革にほかならない。初期資本主義の時代の「労働者の貧窮化や労働条件の悪化」が顕在化しつ つある。しかし、これ以上の「労働者の貧窮化や労働条件の悪化」は、資本主義の 「自己再生」という原理からすれば、自己再生力の低下を招く資本主義の自殺行為では ないだろうか。このような観点から、いま進行中の「政・財・官合作の負の変革」を論 じている経済学者はいるのだろうか。いま耳目に入ってくるのは幇間ブルジョア学者の 皮相で薄汚い言説ばかりだ。

 もちろん、資本主義を超える新しいシステムの準備が熟しているのなら、資本主義な ど滅ぶのがいい。しかし、それにはまだ百年単位の時間を要するかもしれない。
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