2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
第690回 2006/12/25(月)

唯物史観と国家論の方法(12)
「1812年憲法」(続き)


 続いて滝村さんは「1812年憲法」についてのマルクスの「かなり詳細な紹介と周到な分 析」を検討している。しかしこの部分については、後に続く論述につながる要点を概観 するにとどめる。

 「1812年憲法」は、新たに結集した政治的権力が、スペインにおいて形成されつつあった 近代的市民社会に上から積極的対応しようと試みたものであり、近代的憲法としての 側面を備えてはいる。

 まず、<裁判権>一般と区別される<司法権>の独立が明示されていて、その根底には 三権分立思想が明らかに見て取れる。また、地方政治体制の規定においても、都市及び自治体の 行政的機関の構成員や州代表者会議も、すべて総選挙時に選出される。さらに租税は、 近代的統一租税としての規定と、近代的関税以外の城内関税の撤廃が明記された。 軍制においては近代的国家構成員による一般的国民軍役制を設け「国民民兵隊の軍団 が結成されるものとする」とある。

 これは、すでに崩壊し始めていた旧い封建的社会制度に対する近代的市民社会形成の ための根本的変革を促進するところとなった。マルクスは次のように述べている。

「議会が、スペイン国家のこの新構想を作成したとき、このような近代的な政治憲法が 古い社会制度とまったく両立できないであろうことに気がついていたのはもちろんで、 そのため、議会は、市民社会における体質変更を目的とした一連の法令を公布した。」

「議会は異端審問を廃止した。それは領主裁判権を撤廃した。また、それとともに領主た ちの排他的・禁止的・略奪的な封建的諸特権、たとえば狩猟、漁撈、森林、水車などにつ いての特権を、代価を支払って獲得されたもので補償されるべきであったものを除いて、 撤廃した。議会は、王国全土にわたって十分の一税を廃止し、祭祀をつかさどるのに必要 でない聖職受禄者すべての任命を中止し、修道院の撤廃とその財産の収用にとりか かった。」

 しかし、これまでに見てきたような「スペイン革命」の特質が必然的に統治形態のう えに反映される。そこには旧体制の遺物が否応なく混入していて、近代的憲法としてはきわめて不徹底 なものであった。

 第一に選挙制度は、「聖堂区選挙、地区選挙、州選挙の三級を経なければならない」 「間接選挙」であった。また、州総督任命権は国王にあった。
 そして最も問題なのは、議会が立法上の実権を掌握するものと規定していながら、 他方では、「国政会議」という国王の「枢密会議」となんら違わない遺制を存続せし めていた点である。しかもこの「国政会議」は「いっさいの重要な事項についての意見を国王に 上奏」するばかりか、「教権的および司法的官職につくべき者」への官職任命権を掌 握するものとされている。これでは近代的憲法の一要件である<司法権>の独立自体 がまったくの名目的なもとなりかねない。

 この最後の<司法権>についての不徹底さについて、滝村さんはさらに次のように述べ いている。


 われわれはここでマルクスが、1848年のプロイセン絶対王政による反革命的政治改革を 端的に象徴する「裁判所の絶対主義的改造の最初の徴候」をとらえて、「裁判官が従属的 な立場におかれれば、ブルジョア的司法そのものが政府に従属するようになる。すなわ ち、ブルジョア法そのものが、官吏の恣意に席を譲る」(「プロイセンの反革命とプロイ センの裁判官」)と記したことを想起すべきであろう。


 上記のような危惧は日本の<司法権>にも当てはまるのではないか。「司法そのもの が政府に従属」していると思わざるを得ない事例にこと欠かない。それは法制上の問題 なのか、あるいは個々の裁判官の思想・イデオロギー上の問題なのか。この問題も、 「<三権分立>とは何か」という問題としていずれ取り上げたい問題である。



今日の話題

「余人に代えがたい」芸術家の作品鑑賞

 きっこの日記 で紹介されている芸術作品の対比がとても楽しめるので、まだ未見のかたのために お伝えしたい。

「余人に代えがたい」お方の作品
http://shikishima.cool.ne.jp/artist/isihara/2004dance_of_spirits.jpg

天才アイ氏の作品
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/gallery/gallery.htm

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