2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
第689回 2006/12/23(土)

唯物史観と国家論の方法(11)
「1812年憲法」


 今回から「(2)唯物史観と統治形態」に入る。ここでは統治形態の確定のための 政治的・法制的な表現、つまり「憲法」が中心テーマに取り上げられている。ここでは 、いやがうえにも、現在この国で進行中の「憲法改悪」の問題を重ねて考えざるを 得ないだろう。たぶん私(たち)にとっては絶望的な状況認識に至るとしても。

 まず次の叙述をしっかりと噛みしめなければなるまい。


 一般に新憲法の確定は、激烈に相抗争する諸階級権力間の政治的権力関係の大勢、 すなわち政治的支配権の帰趨がほぼ確立した時点で、闘争により変動した社会の階級 的勢力の如何に大きく対応した統治形態、すなわち第三権力の組織的形態及び国民構 成員としての新たな法制的確定が必要とされたことにより生じる。別のところでマ ルクスはこれを、さらに周到に、

「従来憲法というものは、社会の変革過程がある休止点に達し、新しく形づくられた 階級関係が確立してしまい、支配階級内で抗争する諸分派がある妥協を見つけて、それ により彼ら相互間の闘争をつづけながらも同時に、疲労しきった人民大衆を闘争から 締め出しておけるようになった場合に、はじめて作成され採用されたのであった」 (「フランスにおける階級闘争」)

と記している。


 「今日の話題」で国会での法制定の歴史を概観した。その歴史をたどりながら、私は 改めて愕然とし、暗澹たる思いを禁じえなかった。それは被支配階級の完全な敗北の歴史 ではないか!

 60年安保闘争時には30万人の人民大衆が国会を包囲した。時の首相・岸はその人民大衆 に恐怖して、自衛隊の出動を考えたという。教育基本法改悪は安保改定以上の重要問題だ と思うが、国会前に集まったのは、多いときでも4000人ほどに過ぎなかった。憲法改悪が 強行されるような状況になっても、現時点の人民大衆の力量はその程度に始終するのでは ないかと危惧される。まさに『疲労しきった人民大衆を闘争から締め出しておけるように なった』状態であり、『政治的支配権の帰趨がほぼ確立した時点』ではないだろうか。 もちろん、そうであったとしても闘いは継承していかなければならない。

 さて、スペイン革命に戻る。
 スペイン第一次革命(1808年~1814四年)では、スペイン全土がフランス軍に 占領されていた最中(1810年~1813年)に、臨時に召集された「議会」によって、 「1812年新憲法」が発布された。さきのマルクスの論述からみれば、いまだ革命と 反革命の抗争の真っ最中のこの憲法制定は時期尚早に思えるが、滝村さんはこれに ついて次のように述べている。


 逆にいうならば、旧支配階級全体と大きく客観的な階級的・党派的関連をもち、新たな、雑居的にして 速成的またすこぶる可動的な政治的諸分派は、この時点ですでに、「革命的」ないし 「反革命的」な政治過程における指導権を掌握し、さらにそれを一層強化・確立すべく、 崩壊した古い社会体制に代る、旧支配階級の少なからぬ出血・犠牲と裏腹の各種近代的 諸改革の断行を含めた、新たな体制的再編成つまりは反動的再興への、統一的政治理念 の提示を必要とするに到ったものと思われる。もっともこの「1812年憲法」は、1813年 総選挙での保守派の勝利と、ユリオ将軍の軍事的支持を背景として復古したフェルナン ド七世によって、1814年あっさり廃棄される運命にあったのであるが。

 しかし、この憲法は、その後、第二次革命(1820年~1823年まで)においても、さら に第三次革命(1834年~1843年)の最中の1836年にも、復活・再現されようとしたと いう。してみるとこの「1812年憲法」は、スペインの旧支配階級(端的には王侯・官 職貴族・聖職者・大土地所有者等)とその所属的構成要素としての商工中間階級上層 (正確には前者に寄生・癒着することによって経済的利害を同じくし、前者と同様の 特権的身分として安堵されることによって、政治理念的にも前者に屈服した限りでの 上層ブルジョア)が、革命的危機に陥った場合、政治理念的に許容できる最大限度の 政治的改革綱領としての性格をもっていたことになる。マルクスがその紹介と分析に 多くをさいていたとしても、一向に不思議ではないわけである。

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