2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
第666回 2006/11/24(金)

『柄谷行人著「世界共和国へ」を読む』(17)
呪術から普遍宗教へ


 宗教の前段階である呪術とは何か。それは超感性的な何かに贈与する(供犠を与える) ことによって、それに負い目を与えて人の思う通りにすること、すなわち超越的・超感 性的な何かへの互酬的な関係といえる。その呪術的な関係は宗教へと発展した段階でも なお生き残っている。祈願、供犠、崇拝などの宗教的な形態は呪術に由来する。柄谷さんは ウェーバーを引用している。


 宗教的行為は「神礼拝」ではなくて、「神強制」であり、神への呼びかけは、祈りで はなくて呪文である。

 すなわち、「与えられんがために、われ与う」(Du ut des)というのが、広くゆきわ たっているその根本的特質である。このような性格は、あらゆる時代とあらゆる民族の 日常的宗教性ならびに大衆的宗教性にのみならず、あらゆる宗教にもそなわっている。 「此岸的な」外面的災禍を避け、また「此岸的な」外面的利益に心を傾けること、こう いったことが、もっとも彼岸的な諸宗教においてさえも、あらゆる通常の「祈り」の内容 をなしているのである。(「宗教社会学」、武藤一雄ほか訳)


 「呪術から宗教へ」あるいは「呪術師から祭司階級へ」の変化は、社会的には、共同体 から国家への移行に対応する。読み書きに堪能な祭司階級が官僚体制と接合し、祭司階 級は支配階級の一環を担うようになる。

 古代国家において、宗教は国家の「イデオロギー装置」としての役を担っている。 しかし、これは他の国家との関係においては通用しない。神に祈ろうと、国家が戦争に 敗れれば、それは神が敗れたことになる。神の力は国家の力に比例する。つまり、宗教の 普遍化は、国家の普遍化=世界帝国の形成に随伴する現象だということができる。  ローマ帝国からアラビア・モンゴルなど、どの世界帝国も普遍的な神性を必要とした。 つまり、のちにあらわれた普遁宗教も、現実には世界帝国の支配の手段となった。従って その影響力もまた、その領土の範囲を超えることはなかった。

 司祭者宗教から預言者宗教への発展は呪術の廃棄を意味する。
 ユダヤ一神教は、多数の部族の「盟約共同体」に起源をもつ。つまり、それは「エホバ との契約」として表象された。しかし、この契約はもともと互酬的な関係で、神もまた 約束を守らなければならなかった。
 神が約束を守らない場合でも、すなわち、民が敗北や捕囚の身におかれた場合でも、 神がその責任を問われないどころか、逆に、民が約束を守ることのみが求められるように なったのは、バビロン捕囚期以後のことで、ここに、ユダヤにおける預言者の特質がある。 預言者は、呪術師や占い師とは違って、神と人との互酬的な関係つまり呪術を廃棄した。

 この預言者の役割は、ユダヤ教・キリスト教・イスラーム教といったユダヤ教の系譜に 限定されるものではない。

   ウェーバーは、預言者を倫理的預言者と模範的預言者の二つに区別しています。
 前者の場合、預言者は旧約聖書の預言者・イエス・マホメットのように、神の委託を 受けてその意志を告知する道具となり、この委託にもとづく倫理的義務として服従を要 求する。
 後者の場合、預言者は模範的な人間であり、仏陀のように、みずからの範例を通して他 の人々に宗教的な救いへの道を指し示す。だが、いずれの場合でも、預言者が出現したこ とには、共通した点があります。

 彼らはカリスマ的な個人です。それは次のことを意味します。第一に、彼らは祭司階 級に属さないがゆえに、国家機構に対立するということ。第二に、彼らが都市に基盤を もち、かつまたそこでのみ広がったということ。普遍宗教が、農業共同体ではなく、 都市に始まるということは重要です。ウエーバーもそれを指摘しています。

《農民こそは神意にかなった敬虔な人間の特殊な典型であるとみなされるのは、一般的にはまった く近代的な現象である》(「宗教社会学」)。

 ユダヤ教やイスラーム教はいうまでもありませんが、仏教でも、農民は布教の対象とみ なされなかった。仏教はもっぱら都市の商人階級に広がったのです。キリスト教でも、 農民に価値がおかれるようになったのは、ルター派やロシア正教の近代版においてにすぎ ません。

 ここから見ると、普遍宗教が存在した位相が見えてきます。最初に述べたように、 それは第三象限(C)の都市空間に出現し、かつ、そこから、第四象限の空間を「開示」 (預言)したものなのです。それは、共同体と国家を拒否するものです。だから、それ は商品交換=市場経済の空間にしか出現しない。と同時に、それを否定するものです。 つまり、第四象限あるいは新たな交換様式(D)を開示するものです。

スポンサーサイト
 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/680-cbc7ed51
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック