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第658回 2006/11/16(木)

『柄谷行人著「世界共和国へ」を読む』(10)
国家の誕生


 柄谷さんは第Ⅱ部を「世界帝国」、第Ⅲ部を「世界経済」と題している。 「世界帝国」とは資本制以前の世界、「世界経済」は資本制以後の世界を指している。 より詳しく次のよう述べている。

 世界帝国とは、古代から世界各地にあった国家です。それは交易圏として、文明として、 あるいは世界宗教として一つのまとまりをなします。古代の国家や部族社会は孤立して 存在していたのではなく、こうした帝国と関係しつつ、その周辺や亜周辺に位置してきた のです。

 15・16世紀に成立した世界市場の下で、それまで切り離されていた多数の世界帝国が 相互につながれ、また、その内部で多数の主権国家に分解されるようになります。その ように成立した「世界」が世界経済と呼ばれるわけです。その世界経済の中で、旧来の 多数の世界帝国は解体され、発展した中枢部と未開発の周縁部というふうに再組織され るようになります。


 四つの交換様式の連関を「世界帝国」と「世界経済」に分けて論じていこうというわけ です。

 第Ⅱ部「世界帝国」は、まず国家の起源から説き始め、互酬的な交換様式を主とする 共同体が国家として転成する契機を次のように述べている。


 生産物交換が共同体と共同体の間に始まるのと同様に、国家は共同体と共同体 の間に発生するのです。しかも、これらは別々の事柄ではありません。共同体 と共同体の間での交換は、共同体の中での互酬とは別のものです。共同体の内 部では、互酬にもとづく規範(掟)があります。しかし、共同体と共同体の間に はそれがない。そこではむしろ、交換がなされる前に、略奪がなされる可能性があ る。交換は、むしろ暴力的略奪が断念されたときに生じるというべきです。共同体 間の生産物交換は、一つの共同体が他の諸共同体を支配し、それ以外の暴力を禁じ ること、いいかえれば、国家と法が成立することによって可能になります。

(中略)

 国家は共同体と共同体の間にはじまるのであって、共同体の内 部からはじまるのではありません。共同体の内部から国家が出てくることはあ りえない。共同体の互酬原理がそれを妨げるからです。

 たとえば、未開社会にも首長はあるが、その互酬原理が、首長に固定的な権力を 与えることを斥けます。互酬的共同体の中では、富を得た者は、それを贈与によって 消費するように強いられる。一人の人間が贈与によって勢威を得ることはあるとして も、そのために富を失うので、もとの状態にもどってしまいます。

 共同体から国家が形成されるように見える場合、実際は、外に国家が存在し、それに 対して周辺の共同体が防衛したり、支配から独立しようとすることによって、国家が形 成されるのです。国家は、そもそも他の国家(敵国)を想定することなしに考えること はできません。国家の自立性、つまり、国家を共同体や社会に還元できない理由はそこ にあります。

 たとえば、カール・シュミットは、道徳的なものの領域が善と悪、美的なものの領域 が美と醜、経済的なものの領域が利と害であるとしたら、政治的なものに特有の領域は 「友と敵」という区別にあるといいました。この見方は正しいと思います。ただ、 「友と敵」という区別は、さらに基礎的な交換様式B(略取-再分配)に由来するという べきでしょう。


 ここで強調されていることは外的国家(<共同体―即―国家>)構成が第三権力 (<共同体―内―国家>)の構成に先行するのであってその逆ではないということです。 滝村国家論から得た私(たち)の理解とおおよそ一致する。しかし、少し補足したい。

 近代以前の形成途上の未熟な(近代的国家から見て)国家にあっても外的 国家構成だけではなく第三権力の形成にも一定の歴史的進展がある。ただ、 外的国家支配の先行的な発展性に比べて、第三権力形成が立ち遅れていて未熟だった。

 その原因は、やはり、経済社会的基盤に求めなければならない。すなわち、局地化 された個々の各種共同体が自給自足的に完結していたために、国民的規模での 生産関係がいまだに形成されていなかったことがその原因です。つまり、その経済社会的 基盤大きく規定されて、国民的規模での一般的共通利害の遂行に任ずる第三権力の全面 的な組織的発展の必然がなかった。

 従って、そこでの国家の形成・発展は、多かれ少なかれ支配共同体が他共同体を、 平和的にあるいは武力的に、次々に束ねたり積み重ねていくように外的国家体制を 形成するほかなかった。交換様式という面で言えば、略取―再配分が支配的な形態と なった。
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