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311 「日本」とは何か(5)
「稀なる孤島」という虚像(1)
2005年6月24日(金)


 今回は、第一回目に提示した問題『「日本は四面環海の島国」であるのは確かだが、「稀なる孤島」 だったのだろうか。』を取り上げる。この問題の解明も網野さんの『「日本」とは何か』に負う。

 日本列島を地理的側面から論じる場合、五つの内海をはじめ、少なくとも以下に述べるくらいの広い 視野をもって論じるべきであると、網野さんは言う。そしてもう一つ、「それは陸の支配の論理では なく、海そのものの特質を十二分に視界に入れた見方に立つ必要がある」と言っている。
 まず、網野さんが描写している壮大な地理的視野を地図を見ながら確認しよう。

地図1


 アジア大陸の東辺には、北から南に、五つの巨大な内海が連なっている。
 北米大陸のアラスカ、シベリアの最北東部、カムチャツカ半島東岸、そしてアレウト(アリューシ ャン)列島で囲まれた、ベーリング海が最北にひろがる。アメリカ大陸とアジア大陸はベーリング海 峡で結ばれている。
 その南に、カムチャツカ半島西部、シベリア東部、サハリン東岸、北海道東部、そして千島(クリ ル)列島で囲まれるオホーツク海がひらけている。
 それに続いて、サハリン西岸、日本列島の西岸、朝鮮半島東部、いわゆる「沿海州」にとりまかれ た「日本海」が、まさしく湖のような姿を見せている。
 さらにその南には朝鮮半島西岸、九州西部、南西(沖縄)諸島、台湾、中国大陸の東岸に囲まれ、 黄海を内懐に抱く東シナ海の広い空間がある。
 そして最も南に、台湾、フィリッピン群島、中国大陸南部、インドシナ半島、マレー半島、ボルネ オ島がかかえているのが南シナ海である。

 この海から西に向い、マラッカ海峡をこえるとアンダマン海、ベンガル湾がひろがり、インドへの 道がひらけ、東に向うと、いわゆる東南アジア ―― インドネシアからオセアニア ―― ニュー ギニア、オーストラリアに海の道が通じている。
 そしてさらに東には南太平洋の島々が連り、南米大陸に及ぶのである。

 また、日本列島の東南岸、南西諸島、台湾、フィリッピン群島を結ぶ島々と、伊豆諸島、小笠原諸 島、マリアナ諸島、パラオ諸島に囲まれた広大なフィリッピン海がひろがっている。

 次に、「海そのものの特質」を確認しよう。
 気候の変動の影響を強くうける海の世界は時には激しく荒れて人の往来を拒む。この故に、 海に囲まれた日本国は外敵からの攻撃、異民族の進攻を受けることがきわめて少なかった。 しかし、だからと言って日本列島を「稀なる孤島」というのは虚像に過ぎない。 網野さんは次のように言っている。
 しかしそれは日本国、日本列島が海によって他の地域から孤立していたことを意味するものでは 決してない。急がず慌てず、日和を十分に見定めて航行すれば、平穏な海ほど安定した快適な交通路 はないといってよい。それゆえ、長い時間をかければ多くの人も膨大な物も、海を通じて運ぶことが できるのである。荒れた海は、たしかに人と人とを隔てる障壁になるが、こうした穏やかな海は、人 と人とを緊密に結びつける、太く安定した交通路であった。
 そして青森の三内丸山遺跡から新潟のヒスイや北海道の黒曜石が出土する事実、福井の鳥浜遺跡 から船が発掘されたことなどによってすでに証明されているように、船による広域的な活動は縄文 時代以前にまで遡る。とすれば、日本列島がまさしく列島になった縄文時代以後も、さきにふれた 周辺の海を通じて、多くの人や物がたえまなく、この列島に出入していたことは確実といわなくて はならない。
 実際、日本列島はアジア大陸の北方と南方を結ぶ巨大な懸け橋の一部であった。

 網野さんは地図をもう一葉提示している。 「環日本海文化」に着目し、大きなシンポジウムを たびたび開催するなど、熱心に「日本海」を通じての諸国間の交流を追求している富山県が が作成した地図だという。(「環日本海諸国図/富山中心正距方位図(350万分1)

  地図2


この地図についての網野さんのコメントは次のようである。
 日本列島をアジア大陸から見るような形で、大陸の上によこたえ、富山を中心に250キロ、500キロ から1500キロまでの同心円を描いた地図で、実態は通常の地図と同じであるが、この地図からうける 印象はまことに新鮮で、ふつうの世界地図の中の日本列島とはまったく異なったイメージを うけとることができる。
 なにより、サハリンと大陸との間が結氷すれば歩いて渡れるほど狭いことや、対馬と朝鮮半島の 間の狭さ ―― 晴れた日には対馬の北部から朝鮮半島がはっきり見えるほどの狭さを視覚的に 確認することができる。そして日本列島、南西諸島の懸け橋としての役割が非常にはっきりと浮 かび上がり、「日本海」、東シナ海は列島と大陸に囲まれた内海、とくに「日本海」はかつて 陸続きだった列島と大陸に抱かれた湖のころの面影を地図の上に鮮やかにとどめている。
 そしてこの地図を見ると、北海道、本州、四国、九州等の島々を領土とする「日本国」が、海 を国境として他の地域から隔てられた「孤立した島国」であるという日本人に広く浸透した日本像 が、まったくの思いこみでしかない虚像であることが、だれの目にもあきらかになる。
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