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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
238 教師の戦争責任(8)
墨塗りをしなかった教師たち(2)
2005年4月10日(日)


 長浜さんが次に取り上げたのは「ある教師の昭和史」という著書をもつ荻野末という人です。
 まず荻野氏が「墨を塗らなかった」いきさつはこうです。
 敗戦のとき、荻野は国民学校から青年学校に転じていて、川崎の軍需工場内の教育課長をつとめて いた。だから敗戦と同時に工場も閉鎖となり、彼は失業する。この前後、彼には戦争責任の自覚は生 まれていない。
 しかしやがて教師として復職し、新しく戦後教育を「おのれの良心をかけ」て実践する中で 「戦争責任の自己追求」がなされていきます。
 荻野は、しかし、自分の戦争責任をやや抽象的ながらも自己の責任に据え、これと正面から向きあ った数少ない教師の一人であったことは疑いようのない事実である。彼の教師としての戦争責任に関 する結論はこうである。「たんに戦場へ送ったというだけではなく、あの子どもたちの、あの頑強な、 とりかえしのつかない天皇制意識を、かれらのなかにつくった教育というもの、その太い綱の端を、 教師として力強く振っていたのだという犯罪行為が、二重にさばかれなければならないのだというこ とを思い知らされたのです」
 長浜さんは荻野氏の著書を「戦争責任の自己追求」という点で脱帽に値すると評しています。

 ところで荻野氏が再び教師の道を選んだ動機を長浜さんは二つ読み取っています。
 ひとつは散歩の途中、写生会に出てきていたかつての同僚と思いがけなく出会って、その女教師から こういわれる。「先生! 先生は小学校へおかえりにならないのですか、これからはきっと、学校も おもしろくなると思うの……」この一言は荻野をかなりゆきぶる。そのときに彼はたとえ「おもしろ くなくってもいい、もう一度子どもを教えたい」と決心をかためる。
 いまひとつは憲法と「新教育指針」である。これを目にしたときのことを荻野はつぎのように述べ ている。
 憲法と「新教育指針」に対する 荻野氏の驚き・感動・憧れの文が続きますが、略します。

 この二つ目の動機について長浜さんは次のように論述しています。現在「君が代・日の丸」の強制に どう対応すべかという問題とも重なる内容なので全文引用します。
 ところで、この荻野の教壇復帰について、わたしは一点、問題点を指摘しておきたい。それは荻野 の教壇返り咲きが、憲法と教育指針を読んだからだとしている点である。逆にいえば、それでは憲法 や教育指針というものがなければどうだったのか、という疑問が生じてくるのである。もっといやみ な言い方をすれば、これは教育における杜子春ではないか、と思うのである。金のあるときだけいい 寄るのは真の友人ではあるまい。状況が悪ければなおそれだけ、その状況をかえるための思想と人間 が必要なのだ。仮に憲法が改悪されたとして、そこで辞職する教師が出るとしよう。また教職にとど まる人も出てこよう。そのさい、どちらが正しいかということになると、早急な結論は出せない。し かし、こういうことだけはいえるであろう。辞職するのも抵抗の一つだが、踏みとどまるというのも一 種の抵抗になるだろう、ということである。というのは現実問題として辞職する人はごく少数に限ら れる。ふみとどまった人のなかには甲羅のないカニみたいな無思想の木偶がかなりいるだろう。そう なると教壇はそういった連中にふりまわされることになる。「歯をくいしばれ、股開け」としかいえ ない教師ばかりになったら教育界は暗闇である。こどもにとっての救いもなくなる。こういう事態は 極力、避けなければならない。
 さらに、もうひとつのことをいっておく必要がある。それは教育の自主性ということである。憲法 がどう、教育基本法がこういっているから教育が存在する、というのでなく、こどもの生命を預かり、 彼らの人権を守るという点に、教師の独自性が存在するのであって、憲法や教育基本法はそのための ひとつの示唆でしかない、ということである。
 生命と人権のまえでは憲法や教基法もただの文言でしかない。荻野は教壇への返り咲きを、こうし たものに求めたが、たとえ憲法や教基法がどうあっても、自分はこういう教育をやるのだ、という決 意が本来なら先行しなければならないのである。
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