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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
237 教師の戦争責任(7)
墨塗りをしなかった教師たち(1)
2005年4月9日(土)


 「日本ファシズム教師論」の「第四章 教育における戦争協力の論理と倫理」を読んでいきます。
 まず、岩手の辺地で教師をしていた一条ふみという方の日記「淡き綿飴のために」からの引用文を 掲載します。1945年8月17日、敗戦からわずか二日後の記述です。
 「ね、先生。やっぱり辞職すべきでしょう。私、そう思うわ。だって責任というものがあるでしょう。 今まで子どもたちに押し付けるようにやってきた教育が、根こそぎひっくり返されて、全然別のものを、 同じ教育者である自分がそのまま子どもたちに与える……。そんなこと、とても私にはできない……。 良心の呵責にとても耐えられないわ……」
 「そうね、たみ子先生の考え方にも賛成。たしかにその通りよ。現在までにやってきた教育に責任を もつべきだと思うけど……。ただそのことにだけ責任を感じて辞職するということが、果たして許され るものかどうか。自分はそれで割り切れるかも知れないけど、子どもたちはどうなることかしら……」
 「子どもたちのことを考えていたならば、いつまでたっても辞職なんて、できゃしないじゃないの。 これはあくまで自分自身の責任の問題じゃないかしら。自分が、現在までのことについて責任をとると いう……」
 「責任というものは、それは自分自身がとるべきものなのよ。でも、今この敗戦という惨めすぎる現 実に遭遇して、現在までの教育に責任を感じて辞職しても、それで責任をとったとは言い切れないと思 うの。相手は日々成長していく子どもたちよ。その子どもたちを投げ出してしまったことにもなると思 うわ、自分たちの現在までにやってきた教育という仕事に責任を感じて、その責任をとるためにも、今 後子どもたちを見守っていくべき重大な責任があるとも言えると思うのだけれども」
 「そういう責任のとり方もあると思うわ。でも私は、自分という人間が生きていく過程の一つの段階 としての区切りをつけたくなっちゃったのよ。つまり自己の内部問題……」
  「そう。それは誰でもおんなじだと思うわ。自己の内部の転換を迫られることにおいては教師はみ んな逃げられないのよ。絶対、ということはありえないなどと言ったりしたけど、敗戦国となった今、 もうどんな人でも絶対だと思うわ。その間題を考える個人個人の差によって、責任の感じ方もずいぶん 違ってくると思うの。それは、現在までの生き方につながっていると思うわ。真剣に毎日を生き抜いた 者ほど、責任を強く感じるのは当然だと思うけど……」

 女教師の中にも「股を開け、歯を食いしばれ」と言ってピンタを張ったものもいたそうですが、 この会話の二人はそんな暴力とは無縁の人でしょう。むしろ児童たちに慕われるような教師だと 思います。
 軍国主義教育下にあってもどちらかと言えば良心的だった教師が真摯に自らの進退の是非を 悩んでいます。ただし、敗戦後二日のことでないものねだりになりますが、個人的な内部問題の みの議論で、責任の核心の議論がありません。つまり教育そのもの、これまで信奉してきた教育 内容や方法への反省・批判、さらにそれに取り込まれてしまった自らの思想との対峙という踏 み込みがありません。
 辞職という責任をとることは逆にこどもへの責任放棄ではないかという議論に対する長浜 さんの意見は辛らつです。
 このことに関するわたしのコメントは簡潔である。日く、そんなことはない。戦時下の教育は 惨憺たるものだった。勤労動員で授業がまったく停止したこともある。 しかし彼らは育った。いまの日本を支えているのがこの世代である。現代社会の評価はともかくとし て、へたな教育など行われないほうがいいのだ。いまでも、いやがるこどもを大学だけは、高校だけ は行けと強制的に送る親が多いが、そういう〝教育″のなかで、こども・青年はどれだけ歪められて いるかわからない。右も左もわからず、ただひたすらお上のいいなりにしかやれない教師は一人残ら ず教壇から消えてしまったほうが、こどものためになるのである。

 上記の会話では辞職に否定的だった一条ふみさんは結局はこの年の12月に「まるで私の魂は宙に浮い ているわ。とてもこのままでは、自分が失われてしまい、子どもたちに何もしてやれないことに気づい たのよ」と同僚に告げて教壇を去ります。その日の日記に
 「国民をここまで引きずってきた巨大な権力機構の責任などというものの存在とは、まったく別に、 私は、子どもたちに対して、自分自身の今迄の生き方に対して、深い責任をはっきりと感じとめていた」
と書きとめています。
 その後は岩手で民衆の文化運動の記録という活躍を続けたと言うことです。
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