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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
225 そのとき「大国民」たちは?(1)
大真面目に狂気の請願
2005年3月28日(月)


 大日本帝国の大人の国民を「大国民」と呼ぶことにします。
 少国民たちは国定教科書によってしっかりと練成されました。一方、大国民たちの教科書は ラジオ・新聞などのマスコミです。大国民たちが狂気のイデオロギー(虚偽意識)に絡め取られていく 様相を、その末期症状の段階を診断することによって検証してみようと思います。現今のマスコミもほと んどが権力をまともに批判できない体たらくです。中には大政翼賛化して権力のちょうちん持ち に成り下がっているメディアもあります。よりソフトな手口ではありますが、現在の国民も巧みに 国家主義の方向に導かれつつある現在、そのイデオロギー(虚偽意識)に対する免疫をつくるためにも 「大国民」を振り返ることは意義あることと考えます。
 資料は山中恒著「ボクラ少国民第三部・撃チテシ止マム」です。

 大東亜戦争の開戦時には大国民はもうすでに心身ともにがっちりと国家権力の掌中に囚われていま した。その様子を山中さんは次のように記述しています。
 一般国民は開戦前の「国民精神総動員運働」以来、その末端まで戦時態勢を取らざるを得ないように 強力に統制されており、戦争への協力も、機会ある毎に、隣組組織を通じて、勤労奉仕であるとか、戦 時公債や弾丸切手の割当て購入などを繰返し押しつけられて、「赤誠表出」とよばれる協力度合をやた らに試され続けて来た。しかもなお生活必需物資の絶対量不足が、その生活の基盤を脅かしていた。そ の上になお、〈国内総力戦態勢強化〉が要請されたのだから、始末に悪かった。その追いつめられた意 識は、それぞれの生活の中の極めて僅かな〈ゆとり〉といったふうな間隙に向けて突出せざるを得なく なった。もちろん個々のキャパシティはたかが知れているから、それを潰してしまうと、当然のことな がら第三者の間隙を見つけだし、それを潰しにかかるという狂暴性を持った。そして、それらの狂気を 積極的に担ったのが、神官、僧侶、予備・退役軍人(在郷軍人)、町内会・青壮年団等各種報国団体役 員、そして比較的地域との接触の多い国民学校教師たちであった。

 開戦当初の相次ぐ捷報に湧き立ち興奮していた大国民のお祭り的な気分は、1942年6月のミッドウェー海 戦の大敗前後から陰湿な狂気じみたものへと変わっていきます。
 国内総力戦態勢強化のための戦意昂揚運動は開戦当初のお祭り気分にも似た陽気な熱 っぽさを失い、なんとなく陰湿な、戦争への協力度の相互点検、相互監視、相互告発といった雰囲気の 油断のならない様相を示し始めた。それは次第に、〈常在戦場〉のスローガンを前提に極めて狂信的な 〈敵性文化排撃・摘発・撲滅〉による〈敵愾心強化運動〉へと移行していった。

 「相互点検、相互監視、相互告発」は競って権力に媚びる「赤誠表出」を誘発します。 例として、山中さんは第81回帝国議会の会期中(1942年12月26日~1943年3月25日)に議会に提出され た請願書を書き出しています。中山さんは「これらの内容をいちいち読んでいくとうんざりしてくる。」 と述べていますが、人間の精神が正気のままで(ヽヽヽヽヽヽ) どこまで狂気になれるのかという観点から読むととても参考になります。私は興味深く読みました。
○国旗記念日制定二関スル請願  国旗の尊重を徹底せしめるために、国旗制定の日、即ち一月二七日を国旗記念日として国民精神の 作興に資せられたしという主旨。

○天祖肇国ノ祝祭日制定ノ請願  八紘一宇の天祖の聖徳を仰ぎ奉るべき祝祭日の制定未だ無きは遺憾である。よって天祖肇国祝祭日 を制定し皇道宣揚に資せられたし。

○古事記正解ノ研究機関設置ノ請願 古事記の本然を誤り神聖を冒涜するが如き学説の生ぜしは聖代 文教上の一大痛恨事、よって政府は政府による古事記正解の研究機関を設けて国体の本義を明徴にせ られたい。

○漢字復興二関スル請願  漢字を復興して以て日華提携に資するための方途を講ぜられたし。

○経度ノ改正二関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ大東亜共栄圏建設ノ基礎確立シ世界情勢三大変革 ノ行ハレントスルノ秋海洋発展二重要ナル関係ヲ有スル経度カ敵英国「グリニッチ」天文台ヲ通過スル 子午線ヲ起点トシテ測定セラルルハ適当ナラス且共栄圏内二於ケル日付算定上多大ノ不便アリ依テ速二 現行ノ経度測定方法ヲ廃棄シ東京中央天文台ヲ通過スル子午線ヲ起点トスル(後略)

○国字改善こ関スル請願 国字の簡素化により国民の知識生活を能率化し教学振興、国力充実に資する ため「昭和文字」の調査制定を国家事業とされたい。

○孝子祭制定並孝子追賞二関スル請願 忠孝は一本であり、孝道は臣道実践の原動力であり、綜合国 力の源泉、依て孝子条を制定、全国孝子を追賞、以て日本精神の作興と忠孝一本の大義の徹底を図ら れたし。

○日向帝室博物館設置こ関スル請願 皇祖発祥の聖地たる鹿児島、宮崎両県下に国体明徴のため速に 帝室博物館を設置せられたし。

○肝付兼重、楡井頼仲公の偉業を国定教科書に編纂の請願 両公は皇祖発祥の聖地大隅に於て南朝の ため悪戦苦闘忠節を全うせられたる大忠臣故に教科書教材に取入れ国民教育に資せられたい。

○和学復興こ関スル請願 八紘為字の大理想実現し、今次聖戦完遂のため和学の復興を図られたし。

○「ローマ字」表記法こ関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ国語ノ「ローマ」字綴方ハ昭和十二年 内閣訓令第三号ヲ以テ日本式二一定セラレタルモ民間ニハ未夕不合理ナル「ヘボン」式ヲ使用スル者 存スルハ洵二遺憾ナリ依テ政府ハ英語新聞及南方向キ諸雑誌等ニシテ「ヘボン」式ヲ使用スルモノヲ 厳二取締ラレタシ(後略)

○神代史蹟調査所設置二関スル請願

○書道振興こ関スル請願

○学徒禁酒令制定二関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ時局下青年学徒ノ酒害ヲ防除シ其ノ錬成ノ 実ヲ挙クルハ喫緊ノ要務ナリ依テ速二学徒禁酒令ヲ制定実施シ中等学校以上ノ学生、生徒ノ飲酒ヲ禁 止セラレタシト謂フニ在り(後略)

○国民教育二関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ従来ノ教育、宗教分離ノ方針ハ往々ニシテ物質 偏重ノ傾向ヲ助長シ教育ノ根本タルへキ徳育ヲ等閑視シタルカ為近時其ノ弊害著シキヲ見ルニ至レル ヲ以テ今ヤ時代ノ要求ハ徳育ニヨル人格ヲ望ムコト甚タ切ナリ而シテ徳育ハ幼少青年期二於テ本来具 有セル宗教心ヲ培養スルヲ要道トシ其ノ手段トシテ師範学校教育二於テ宗教ヲ組織的二会得セシメ国 民学校二於テ宗教教育ヲナサシムへキ素養ヲ与フルヲ緊要トス依テ政府ハ昭和十年十月附文部次官ノ 宗教教育二関スル通牒ヲ活用シ師範学校ノ教科目中二宗教概論ヲ加へテ師範学校生徒ノ宗教二対スル 関心ヲ高メ以テ国民学校教育ノ実施二資セラレタシト謂フニ在り(後略)

○文部省編纂「国体ノ本義」訂正ニ関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ曩ニ文部省ヨリ「国体ノ本 義」ヲ編纂刊行セラレタルモ其ノ叙述徒二多岐ニシテ晦渋ナルノミナラズ其ノ内容必スシモ適切ナラ サルモノアルハ遺憾二堪ヘス依テ速二前記「国体ノ本義」ニ適切ナル改訂ヲ加へラレタシト謂フニ在 り(後略)

○少国民ノ忠誠心涵養二関スル請願 (原文)右請願ノ趣旨ハ敬神崇祖祖先崇拝ハ我ガ国伝統ノ美風ナ レハ之ヲ維持涵養シテ国運ノ進展二寄与スヘキモノナリト信ス依テ春秋二季ノ皇霊祭ヲ期シテ全国民 学校二於テ祭式ヲ挙行シ校長ハ敬神崇祖忠臣孝子ニ関スル講話ヲナシ以ッテ少国民ノ涵養振作ニ資セ ラレタシト謂フニ在り(後略)

 国家権力のプロパガンダがもう既に狂気の沙汰でした。その狂気のプロパガンダ用語をキーワードに して空疎なイデオロギー(虚偽意識)に酔っています。つい吹き出してしまうようなものもありますが、 全体には読んでいるうちにゾゾッと寒気がしてきます。
 これは決して過去だけの問題ではありません。現在だって、例えば「君が代を声量豊かに歌わせることに関する請願」とか「国民の祝日において 日の丸の掲揚を義務付けることに関する請願」とかを大真面目に提出すような手合いはごまんといるので はないでしょうか。あるいはもうそのような請願が県や市町村レベルでは出されているかもしれま せん。
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