FC2ブログ
2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
165. 詩をどうぞ(12)
2005年1月26日(水)

 天皇制または天皇を題材にした茨木のり子さんの詩をまた一つ発見した。
 毎度ながらまことに平易な言葉を矢にして、素材の奥底までを射抜く眼差しは諧謔と風刺 の余裕を研ぎこんで鋭利。実に美味です。

 系図  茨木のり子

子供の頃に
叩きこまれたのは
万世一系論
くりかえしくりかえし
一つの家の系図を暗誦
それがヒストリイであったので
いまごろになってヒステリカルにもなるだろう
一つの家の来歴がかくもはっきりしているのは
むしろ嘘多い証拠である
と こっくり胸に落ちるまで
長い歳月を要したのだ

何代か前 何十代か前
その先は杳として行方知れず
ふつうの家の先祖が もやもやと
靄靄と煙っているのこそ真実ではないか

父方の家は 川中島の戦いまでさかのぼれる
母方の家は 元禄時代までさかのぼれる
その先は霞の彼方へと消えさるのだ
けれど私の脈搏が 目下一分間七十の
正常値を数えているのは
伊達ではない

いま 生きて 動いているものは

()べて ひとすじに 来たるもの
ジャマイカで加排の豆 採るひとも
隣のちいちゃんも
昔のひとの袖の香を芬芬と散りしいて
いまをさかりの花橘も
きのう会った和智さんも
どういうわけだか夜毎 我が家の軒下に
うんちして去る どら猫も
ノートに影 くっきりと落し
瞬時に飛び去った一羽の雀も
気がつけば 身のまわり
万世一系だらけなのだ
「ユリイカ」(1973年5月号)より
スポンサーサイト



 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/412-e22d144f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック