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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
142. 詩をどうぞ(11)
2005年1月3日(月)


 前回のテーマを詩で読んでみる。もちろん、胸に《反対》の赤き烙印を押された漂泊の 詩人・金子光晴だ。「反対」と「おっとせい」


   反対

僕は少年の頃
学校に反対だった。
僕は、いままた
働くことに反対だ。

僕は第一、健康とか
正義とかが大きらひなのだ。
健康で正しいほど
人間を無情にするものはない。

むろん、やまと魂は反対だ。
義理人情もへどが出る。
いつの政府も反対であり、
文壇画壇にも尻をむけている。

なにしに生まれてきたと問はるれば、
躊躇なく答えよう。反対しにと。
僕は、東にゐるときは、
西にゆきたい思ひ、

きものは左前、靴は右左、
袴はうしろ前、馬には尻をむいて乗る。
人のいやがるものこそ、僕の好物。
とりわけ嫌ひは、気の揃ふことだ。

僕は信じる。反対こそ、人生で、
唯一つ立派なことだと。
反対こそ、生きていることだ。
反対こそ、じぶんをつかむことだ。



  おつとせい

一
そのいきの臭えこと。
くちからむんと蒸れる。

そのせなかがぬれて、はか穴のふち
 のやうにぬらぬらしてること。
虚無(ニヒル)をおぼえるほどいやらしい、
おお、憂愁よ。

そのからだの土嚢のやうな
づづぐろいおもさ。かつたるさ。
いん気な弾力。
かなしいゴム

そのこころのおもひあがつてること。
凡庸なこと。


菊面(あばた)。
おほきな陰嚢(ふぐり)。

鼻先があをくなるほどなまぐさい、
 やつらの群集におされつつ、いつも、
おいらは、反対の方角をおもつてゐた。

やつらがむらがる雲のやうに横行し
もみあふ街が、おいらには、
ふるぼけた映画(フイルム)でみる、
アラスカのやうに淋しかつた。


二
そいつら。俗衆といふやつら。

ヴォルテールを国外に追ひ、フーゴー
 ・グロチウスを獄にたたきこんだのは、
やつらなのだ。

バタビアから、リスボンまで、地球を、芥垢(ほこり)と、饒舌(おしゃぺり)で
かきまはしてゐるのもやつらなのだ。

(くさめ)をするやつ。
 髯のあひだから歯くそをとばすやつ。
 かみころすあくび、きどつた身振り、
 しきたりをやぶつたものには、おそれ、
 ゆびさし、むほん人だ、狂人(きちがひ)だ
 とさけんで、がやがやあつまるやつ。
 そいつら。そいつらは互ひに夫婦(めうと)だ。
 権妻だ。やつらの根性まで相続(うけつ)
 ぐ忰どもだ。うすぎたねえ血のひきだ。
 あるひは朋党だ。そのまたつながりだ。
 そして、かぎりもしれぬむすびあひの、
 からだとからだの障壁が、海流をせきと
 めるやうにみえた。

おしながされた海に、霙のやうな陽が
 ふり濺いだ。
やつらのみあげるそらの無限にそうて
 いつも、金網(かなあみ)が
 あつた。

…………けふはやつらの婚姻の祝ひ。
きのふはやつらの旗日だつた。
ひねもす、ぬかるみのなかで、砕氷船
 が氷をたたくのを
 きいた。

のべつにおじぎをしたり、ひれと
 ひれとをすりあはせ、どうたい
 を樽のやうにころがしたり、その
 いやらしさ、空虚(むな)し
 さばつかりで雑閙しながらやつら
 は、みるまに放尿の(あわ)で、
 海水をにごしていつた。

たがひの体温でぬくめあふ、零落の
 むれをはなれる寒さをいとうて、
 やつらはいたはりあふめつきをも
 とめ、かぼそい声でよびかはした。

三
おお、やつらは、どいつも、こいつも、
 まよなかの街よりくらい、やつらを
 のせたこの氷塊が、たちまち、さけ
 びもなくわれ、深潭のうへをしづか
 に辷りはじめるのを、すこしも気づ
 かずにゐた。
 みだりがましい尾をひらいてよちよ
 ちと、やつらは氷上を匐ひまはり、
 ………文学などを語りあつた。

うらがなしい暮色よ!
凍傷(しもやけ)にたゞれた落日の掛軸よ!

だんだら縞のながい影を曳き、
 みわたすかぎり頭をそろへて、
 拝礼してゐる奴らの群衆のなかで、
 侮蔑しきつたそぶりで、ただひとり、
 反対をむいてすましてるやつ。
おいら。
おつとせいのきらひなおつとせい。
だが、やつぱりおつとせいはおつとせいで
ただ「むかうむきになつてる
おつとせい」
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