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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
【凡庸な悪】

《「凡庸な悪」という恐怖》(3)

【2007年2月14日の記事】

「凡庸な悪」について(3)

   いま東京都の教員たちが直面させられている問題にしぼって、「凡庸な悪」ということを考えてみようと思います。私は一部外者にすぎませんが、わが身に引き寄せて考えて見ます。

   瀬古浩爾著『生きていくのに大切な言葉-吉本隆明74語』(二見書房)の次のくだりに、私のような凡庸な者が「凡庸な悪」をまぬがれるための必要不可欠な倫理を見い出します。



組合は今回の要求を克ちとる為、いよいよ困難な交渉段階に入って参ります。我々は各位の代弁者としての責任に於いて、堂々たる態度を持してゆきます。各位も又、自らを辱かしめざらんことを。
      東洋インキ青戸労働組合組合長 吉本隆明
    「堂々」とした声明である。

   吉本氏は昭和27年に東洋インキ製造株式会社に入社し、青戸工場に配属された。翌28年、28歳の若さで青戸労働組合の組合長に就任する。思考の強靭さや徹底した闘争意志が秀でていたと推測されるが、それもさることながら、仲間たちのあいだで余程人間的信頼を得たのだろうと思われる。

   掲載文に「各位も又、自らを辱かしめざらんことを」とある。われわれは絶対に「自らを辱かしめ」るような交渉はしない、「堂々たる態度」で交渉に臨む、という決意に自信があるからいえる言葉だ。じつに頼もしい。

   だが、会社側の「悪質な切くずし」によって脱落する組合員がでてくる。脱落の理由は大きく三つある。
(1) 「この際忠勤ぶりを示して自分だけはよくなろうという乞食根性」
(2) 「本当に生活が苦しくて、自分や家族のことを考えて(会社側の……引用者注)脅迫に心ならずも動かされた者」
(3) 「組合幹部の運動方針に反感をもっていて、一石二鳥をねらった者」

  これについて吉本氏はこのように書いている。
 「第一の連中とだけは、今後とも激しい闘いをつづけなければならない」が、「第二、第三の人たちは、今後とも組合員全部で守ってやらなければならない。」

 吉本氏の組織論の要諦だ。組織への入り口はだれにも開かれている。そして、組織からの出口もまた薄汚い利己主義者を例外として、だれにもきちんと開かれている。その出口を開いているのはなにか。自分の体質にまでなった、吉本氏の人間観である。卑怯者は許されてはならないが、人間の弱さや自分と異なる思考は最大限に理解され尊重されなければならない、というような。そして、自分の思考に絶対的な正当性はない、というような……無類の優しさであり、無比の柔軟さである。

 部外者には決して見えないことがあり、ことはそう単純ではないことを承知の上で、「日の丸・君が代の強制」が都立高校の教員集団にもたらした分断状況を推測してみます。
(1) もともと都教委・校長と同じ考えをもっていたような顔をして都教委・校長に擦り寄っていく奴隷根性の者たち。
(2) 自分や家族の生活や将来を案じて心ならずも日の丸に向かい君が代を歌っている振りをしているが、日常の教育実践では決して都教委・校長に迎合はしていない人たち。
(3) 「思想・良心の自由」を蹂躪するような教育行政にはどうしても膝を屈するわけにはいかず最前線に立たざるを得なかった人たち。

 冒頭の吉本組合長の闘争宣言を、いま私は(3)の人たちからのメッセージとして読んでいます。私が当事者だったとして、(1)のような者には決してならないことははっきりと断言できます。そして、それ以外のどのような生き方を選ぶとしても、「自らを辱かしめざらんこと」を常に反芻しながら一つ一つの行動を選択していこうと思います。「自らを辱かしめざらんこと」の核心は、私(たち)が生徒に対して「凡庸な悪」を行使してはならないということです。これが(1)のような者たちとのぎりぎりの境界線です。

 さて、組合は何をやっているのでしょうか。もしも都高教執行部にまだ強靭な思考力や徹底した闘争意志が残っているのなら、(2)の人たちをも守りつつ、(3)の人たちとともに闘いの最前線に立つ以外に、「凡庸な悪」におちいらない道があるのでしょうか。

 しかし翌年、吉本氏は、かれじしんの言葉によると「壊滅的な徹底闘争」に敗れ組合長を辞任する。組織に楯突いた者に対する仕打ちのつねとして、吉本氏は職場をたらい回しにされる。かつての同士たちは吉本氏にどのように対応したのだろうか。よそよそしい者がいたとしても、吉本氏はかれらを決して恨まなかったはずである。その二年後、吉本氏は飼い殺し的な本社職務への転勤を不服として退職をする。31歳だった。

 このような矜持と覚悟がないのなら、組合の執行委員になるべきではない。

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