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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<>詩文編(21)

 今回は「磯枕10号」の「初期詩編」からの転載の続きですが、これでカテゴリ『自作品の公開』の「詩文編」は終了となります。 


蟹の行列

横一列の億万の
活字のような小さな蟹が
振り子のようにはさみをふりあげ
カッチ カッ カッチ カッ
流れるように進んでくるわ

ねころんで節穴だらけの天井を
ぼんやりながめる俺の目に
それが見えるわけではないが
俺を目がけて進んでくるのが
よく分る 音も聞える

俺にぶつかって蟹どもは
俺のからだをもぞもぞと
やわい鋏で腑分けして
からだの中を這い進む
空(から)の心が蟹でみつるよ



私・影 (その一)

 ここ数日の私の心はたしかに僥倖であった。
私はあれもこれもしなければならなく思えて、
精一杯の生活を楽しんだ。

………ふと今宵、私の心を襲ったのは………

 私は夕なぎの海のように疲れていたので、
肉体は心地よく眠っていたが、意識は夜通し半睡のままであった。
昔、ある女に背向かれた、あの幾夜さのように。

 一夜のうちに意識は過去をひとめぐりして、
今日の生活を続けることに堪えられぬほど、
明日のわずらわしさに私は滅入ってしまった。

 あとかたもなくなってしまった充溢をとまどいながら回想しつつ、
私は自嘲するのであった。

………私は、数々の小さな断片をつなぐだけの生涯に、時々非 常に近眼だ………



私・影 (その二)

写真があるから昔はいたのだろう。
位牌があるから今はいないのだろう。
  <位牌や写真が何の証拠になる!>
父や母があたたかく生きていたのは
もうずいぶん昔のことか。
かつていたということは
今もこれからもいてはいけないことか。
不思議なことだ。
  〈私はこうしてちぢこまってねている。〉
父よ 母よ あなたたちは
死ぬのはつらかったか。
今いることと昔いたことと
これからもいることと
所詮同じことだ。
私は常に影でしかあり得ない。

私は常に影だ。



夕べのうた

  淡いオレンジの空に ひとはけ
透いた紫が溶けるように流れきて
上の方から しみるように濃くなって
やがて山ぎわまで灰色が迫る ひととき

おれはたしかに見た 幻ではなく
おまえの軽ろやかな駆りを
おまえのつばさが音もなく地を覆うのを
たそがれの空に ひととき……

だが北風がかなでる絃(いと)の
かすかなひびきに和して ひっそりと
野や山のうすやみの影は うたっていた
……たそがれはほろびのいろ……と



雲 の 歌

  深い空の青さの中に
冷たい空気と
暖かい朝日
が織りなす秋の気配が
憂鬱な私の心を
はずまそうとするのを
私は頑なにこばめない。
透明な秋のさざめきに
閉ざされた私のまぶたが
すけるほどうすくなると
私は新鮮な光明をかいまみた。
私の務めの時刻には
遅れるかも知れないが
わずか数分ばかりを惜しんで
その新しいものをのがすまい。
.................
――すべてが失なわれれば
――人は雲になるだろう。



あたたかきものよ

ひょうびょうと北風(かぜ)の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風(かぜ)の吹くなり

この暗く単調のみちにありて
この冷たく平担のみちにありて
あゝ 汝が心よ
何故にそうも頑なに黙すか
何故にそうも忍び堪えんとはするか
汝が心のままに
何故にかくは叫ばざるか
    あなた あたたかきものよ
    我とともに歩きてたもれ と

ひょうびょうと北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風の吹くなり

あゝ 我が心の叫び得ぬは
我が稚拙のみちに
我が安逸のみちに
あなた あたたかきものの
いかにもふさわしからねばなり
我がみちのあまりに稚拙なれば
我がみちのあまりに安逸なれば
我が心 恥じ人り
いよいよ頑なに
いよいよ苦々しく
かくも忍びかくも黙すなり
しかしてむしろ
我が心はかく畏怖(おそれ)をつぶやく
    あなた あたたかきものよ
    我を蔑まざること能うか と

ひょうびようと北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風の吹くなり

あゝ 汝が心よ
汝が単調のみちにありて
汝が平担のみちにありて
汝は自らをいよいよ低くうし
自らをいよいよ空虚にする
何故にそのこごえたる手をふるい
その冷たくこうばりしほゝをほてらせ
汝がみちを掘り起こさんとはせざるや
何故に汝がみちを
高く盛り上げんとはせざるや
しかして
何故にかくは叫ばざるや
    あなた あたたかきものよ
    我とともに鋤をとりてたもれ と

なおも北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
ひようびょうと北風の吹くなり



【戯歌九首】

病臥新年

まなこ クシャクシャ 喜ぶことを
まなこ キリキり   怒れることを
まなこ ショボショボ 哀しいことを
まなこ キラキラ   楽しいことを
心ある友よ
才豊かなる友よ
暇ありあまる友よ
金のない友よ
願わくば、我にせめて音信せよ。
今、我、人に飢えたれば。


暑中見舞 一

  暑き夜は
中空高く星縫いつ
御手も嫋(たお)やに涼風(かぜ)撒ける
見よや天女の
舞い姿
   涼風(すずかぜ)よ 君が窓辺の 風鈴(すず)鳴らせ


暑中見舞 二

暑い あつい アツイ 夏をぼやくな
暑い あつい アツイ 夏なればこそ
ビールも数倍うまいのだ
むしろ
暑い あつい アツイ 夏の長からむことを!


飲酒のすゝめ

  ひとりで飲めばしず心なく
ふたりで飲めば寂しさ深まり
みたりで飲めば喜びいやまし
飲み過ぎればへドを吐く
酒はよきかを


飲酒のすゝめ

酔いさめて
暁のプラットホームは
ねぼけた灯(あかり)を消すのも忘れて
二日酔の哀感に額にしわ寄せ
ひっそりとラッシュを待つ

   反歌
   酔いさめて帰る道の佗しけり。


あめんぼ

あめんぼもくずとおしくらまんじゅ
あめんほもくずにおしながされた
あめんぼながれにさからうなかれ


ありんこ

ありんこうんこらいもむしはこぶ
ありんこぐんにゃりふみつぶされた
なみだぐましきはかなさよ


我が道化

深く静かな暗黒の
宏大無辺の大宇宙(コスモス)を
豆つぶほどの地球めが
光を求めてふらふら漂い
地球の上でこの俺様は
暗中模索を真似ている


外は雨風(あめかぜ)

外は雨風 さむいんたぞ
どいつもこいつも さむいんだぞ
おへその中まで さむいんだぞ

外は雨風 さむいんたぞ
涙がてるほど さむいんたぞ
ほんとに涙が でるんだぞ

外は雨風さむいんだぞ
ほっぺに雨風 あたるんだぞ
涙とまじって しょっぱいぞ

外は雨風 さむいんだぞ
満足だらけでも さむいんだぞ
何かが一つ さむいんだぞ

(この最後の戯歌には曲を付けました。興味がありましたら『作詞作曲編(2)』をご覧ください。)

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