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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<>詩文編(20)

「磯枕10号」の「初期詩編」からの転載を続けます。


貝細工(むぎわらぎく)の歌


          貝細工:キク科、筒状の黄色い花
               花言葉……忘れられない思い出。


虻の涙は真珠です
真珠は無限の嘆きです
野路に仄めく貝細上の
痛みに宿る銀の涙

緑雨に溶けよ虹の嘆きよ
時には遍く愛となれ
真珠は流れよ人の心に
香華と野に置け貝細工



湖  底

水の面はさざなみと笑み
止むことなくさんさんと映え
ここ野の原の湖の静明
しかあれど誰知ろう
まさしくその静明の深みに
際涯きわまるなく
累々とうねる苦悩の波激しきを



ディオニソス賛歌


      ゼウスの御子この神は
      宴を好み
      寵愛の女神の名は「平和(エイレナ)」
          (エウリビデス「バツカイ」より)


瑞々しき力満つる若き生命を
慈しみ守る神なれば
爛々たる金色の水の
理智は何人にも分かち与えども
世の楽しみを生きんことを厭い
愁いの心健やかにせんことを怠るものは
直下にこの神の憎しみ買うべし



結婚頌歌 -K・Fに-

  今君たちに人生を問うとしたら
君たちはためらうことなく答えるだろう
人生はかくの如きか
いざ幾度でも、と
  君たちのその幸せに祝福を送ろう

今君たちの胸一杯に溢れている
その幸せは君たち二人の愛が
人知れぬ苦悩と艱難とに
打ち克って得たもの
  君たちのその愛のさらに高まらんことを

しかし君たちはその幸せに溺れることなく
その愛を自惚れることもなく
君たちの今日あることの礎となった
君たちの同胞(はらから)の慈愛(いつくしみ)を回想(おも)う
  君たちのその謙虚さに敬意を表そう

今君たちは互によき伴侶を得て
力強くしかも軽ろやかに歩みを進める
自ら選んだ滞ることの許されぬ
常に高めゆくべき道なき道に
  君たちのその勇気を贅えよう



春は弥生の二十五日 -T・Mに-

ときには夫婦げんかもあるだろう
よからう スカッと派手にやっちまおう
それでも心ひそかに想い出そう
今日の誓を
春は弥生の二五日の

やがてむすこやむすめを持つだろう
きっと君達よりも立派だろう
今日君達の真摯な心の
結び目だもの
春は弥生の二十五日の

「おじいさんや」「おばあさんや」と呼び合う
昔を忘れがちな年になっても
忘れちゃいけない今日このよき日は
その感激は
春は弥生の二十五日の



指のない手

  君
指のない手を
自分の手に指がないことに
耐えられるか
如何にして耐えようとか
むしろ………

 ・・・・・

 突然全身を激しい衝撃がつきぬけた。とっさに身を退き、手 を引いた。しかし手が抜けない。俺は目を閉じ歯をくいしばる。 機械はその運行を黙々と続ける。機械は指を飲みこみ、なおも 動く。俺の顔は激痛のためみにくく歪む。

 手を、俺の手を見たい。頭を起そうとしたが、誰かが俺を押 えて叫んだ。見るな! 見てはいけない。

 それは痛みなどというものではなかった。むしろ何も感じな い。腕が異様に重かった。頭の中で事の各瞬間が幻灯写真のよ うに繰り返し現れては消えていく。心の中でただ叫ぶ。しまっ た! しまった! 涙がやたらと流れでる。急救車の遠いサイ レンを開いて、俺は気を失った。

 ベッドの中で俺は手をみつめる。時折ズキンズキンと痛む両 手をさしのばす。包帯をぐるぐるまかれた白い手。それは俺の 手ではないような気がする。いや、もう手ではない。この手に は指がないんた。信じられぬ。何をするにも必要だった指。俺 の手に指がないなんて、悪夢だ。そのうち夢からさめて、そう だ、俺の手に指がないなんて夢に違いない。いやいや、事実だ。 真実、俺は指を失ったんだ。この手には指がないんだ。……だ がやはり信じられない。包帯をとってみたい。指がそろってい るのを確かめたい。しかし……ああ、包帯、永久にとらない でくれ、指のない手なんか見たくない!

 包帯がとられた。俺は指を失なった。俺の手には指がない。 俺は不自然に醜く縮んでいる肉塊をいつまでも凝視して、涙を 流していた。

 夢をみた。日中にさえ夢をみた。少しでも微睡ろめば夢をみた。 現実と夢との区別がまるでつかなくなってしまう。

 分けの分からぬ者たちがよってたかって俺の指をもぎ取ろう としていた。俺は恐怖に声をひきつらせて助けを呼んだが、誰 も助けに来てくれない。黒い影がますます多く俺を取り囲む。 俺を嘲笑する。俺を襲う。俺は必死に手をかばうのだが、アッ !ウワー!……‥自分の声で目が覚めた。

 俺の手の指だけがとりわけきれいに輝いていた。手だけがや けに目につく。俺は自分の手がこのうえなくいとほしいものに 思えて、そっと胸に抱いてみた。しかしそれは異様な肌ざわり を感じさせた。俺は指のない手を抱いて眠ていた。

 俺は石のテーブルの上に指を拡げて手を置いている。冷い石 ばかりのその室はしんと静まり返り、不安な気配が漂っていた。 何かしらぬが不安でならない。俺は逃げ出そうと思い、手をあ げようとしたが、テーブルから手が離れない。手に力が人らな い。指を曲げようともしたが、俺の指でないようにまるで動か ない。俺は焦った。足をふんばって全身に力をこめて努めたが、 冷汗が流れるだけだ。と突然頭上に冷い光。それが間髪を入れ ず、指の上に落下してきた。ギロチンだ!………目が覚めた。

 俺は何かを期待しながら日向にじっと座っていた。指のない 手を日に向けてさしのばしていた。するともぞもぞと指の付け 根がかゆくなり、そこから指がのびたしてきた。もとのままの 指だ。おゝ、俺は指をとりもどした。指があるんた。さっと身 体を起こして両手を互にまさぐり求めた。……やはり、手には 指がなかった。

 いつか指の夢をみなくなった。長い時間に哀しみはくさり。

 いつか指のない手が気にならなくなったり哀しみのすきまに 塵がつもって。

 それでも時々、指があるつもりで物をつかもうとし、空をつ かんで、改めて指のないことを思い出して苦笑する。指のない 手がいとほしくなり、胸に両手を抱いて泣いたりもする。

  ・ ・ ・ ・ ・


指のない手を
自分の手に指かないことに
耐えられるか
如何に耐えようとか
むしろ………



夜の歌 一

ほそい月だ
えぐられた地はだをしみでて
したたる滴はつららになった
冷たい月だ
日の中はたしかに流れていたのだが
このどぶ川も 今は白く動かない
真夜中だ

   こたつの中で酒をのみ
   テレビでも見ていれば
   それはもう
   暖かで豊かそうだけど
   わけの分らぬ衝動が
   おれをここまでかりたてた

白い月だ
蝋のようなうすあかりが
おれの心を苛立たせる
うすい月だ
求めるものはあれでもないこれでもない
めしいだ手につかむべき闇さえない
今は真夜中だ



夜の歌 二

大晦日の夜だとて
なんということもないのだが
こうして ひとり
酒をのんでいると

ゆく年のうすく鋭い
刃物のような悔いが
おれの心をさっとかすめて
ひりりと痛い一筋の疵をのこした

そのほそい疵を割って 透明の
赤いけむりがむんむんふきだし
心になまぬるい紅色が充満し
疵の痛みがすっぱくなった

その紅色は 来る年への
希望でもない 希望のような
力でもない 力のような
あゝなまじっかの若さだよ

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