FC2ブログ
2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<>詩文編(19)

 前回で二番目の自費出版詩集『影』の紹介が終わりました。今回からは最後の自費出版詩集『日ごとの葬送』の紹介を始めます。私が28歳~29歳の時の作品を収録したものです。

 ところで、『日ごとの葬送』には収録作品が17編あるのですが、その内14編が最終詩集に転載されていて、すでに紹介済みでした。残った3編だけでは寂しいな、と思いを巡らしながら、長いこと手を付けていなかった書棚をぼんやり見ていたら、「磯枕」という同人誌が目に止まりました。
 すっかり忘れていました。「磯枕」は私が勤務していた高校で最終詩集の装幀をしてくださった方が同人のお一人として活躍していた同人会の同人誌だったのです。その同人会は高校卒業後も続いていて、私が所有している一番新しい「磯枕9号」はその同人会が発足した12年後の1975年にに刊行されています。そして、なんと、その「磯枕9号」にわたくしは第2詩集『影』を全編投稿しているのでした。
 そしてさらに「磯枕10号」に「初期詩編」と題して詩文41篇(その内9編は戯歌としてまとめ別扱いしている)を投稿していました。1961年~1965年(23歳~27歳)の時の作品です。その中にこれまで紹介したきたどの詩集にも掲載されていない詩文が30編(内9編は戯歌)ありました。

 今回から(何回になるか不明ですが)『日ごとの葬送』の4編と「初期詩編」の30編を公開して、カテゴリ「自作品の公開」を終わることにします。

 では『日ごとの葬送』の4編から始めます。



<『日ごとの葬送』より>

吹 雪

遠く近く
怪しく咆哮する蒼剛たる朔風
すべて自足するものを
ところかまわず襲え 白い悪魔(ディーモン)
おまえ激しい自然の躍動を避けて
この小さな暖かい囲いの中で
どうして安逸な平安など求めよう
私の心は
白い嵐の中に乱れ舞うのに
いささかもやぶさかではない
眠られぬ苦悩のこの夜
むしろおまえ狂おしい自然の楽劇に
苦しきままに陶酔こそすれ

私の心よ
白い悪魔(ディーモン)にまぎれてはばたけ
弓形に疾走せよ
砕けよ 散れよ
涯はるかないとおしい天地(あめつち)の中で
私は熱望する
私たち人のさかしさの
ただふたたび空しからむことを


春の曇天


    博物館には何もない


くさりかけた脳漿ばかりの
黄色い曇天の天蓋に
生えたばかりの藻草が枯れ

  (藻草の蘇生にはホルマリンが一番だ)

見えない光がほたるのようで
藻草はもどかしくそれを追い
藻草はためらいそれを逃れ

  (星の驕りがちらちらするのだ)

枯れた藻草はからからと鳴き
生えたばかりでからからと鳴き
脳漿ばかりが黄色く匂う

  (星も藻草もホルマリンに漬けよう)


エデンのりんご


アダムとイブが盗んだのは
「ことば」ではなかったか

その罪を贖おうとして
なんという歴史であるか
人間の
盗品をもって贖おうとして

ことば ことば
馴れ合わなければ生きられない人間

ことば ことば
記憶を積み重さねて行く人間
親から親へ
子から子へ

  ぼくは町でなければ生きられない
  ぼくをさいなむには一片の
  いとしいひとの記憶で充分だ

初めに「ことば」あり
「ことば」が醸す錯覚
盗品で積み上げてきた
われらが栄えある二十世紀
エデンの園にこっそり返すには
それはもはや重すぎる

贖罪に神の恵みは無益になった
盗人たけだけしくも
自ら死刑執行人であるための
今は道具は揃っている

   それにしてもぼくがあずかった分け前は不当だ
   こんなにさえない「ことば」とは
   相棒よ ぼくは強く抗議する


黙示録


なぜいつも終りなのか
始まりが始まったためしがなく
始まりと見えて
なぜいつも終りなのか

教千年の歴史についにあずからぬ
陽気で惨劇にみちた群れの
黙契のはこは掠取され続けて
空(から)のはこは舁き継ぐほかなく
舁き継ぐままに自らの砂漠を縮め
見る影もなく改竄された黙契のしがらみに到れ
無辜の群れ
饒舌の槌に斃れるものは影ばかりだから
ここより最も遠く
ここより最も深い
海溝の生みの苦しみの涙の記憶を
七度つぶやき
七度城壁をめぐれ
そのとき無量の血を吸い続けた黒い砂漠は
一柱の巨大な旋風となって
疎々しい虚飾の都市を襲うであろう

幾度始めて
なぜいつも終りなのか
空(から)のはこのための一行の
ただ一行のリフレンが欲しい
ぎりぎりの沈黙から湧きあがる
炎え立ち
疾走する
太陽!


 ここからは「磯枕10号」の「初期詩編」からの転載です。二十代初期にふさわしい簡素で清々しい詩が多いです。



春の嵐


ウォーン ウォーン ルルルルル
疾風・春の阿修羅
木の間を駆り 梢へし折り 石壁くずし
尾根へしまくり ガラス戸破り 街巡る
ウォーン ウォーン ルルルルル
疾風・春の阿修羅
雲は飛び行き 光は飛び行き 花びら飛び行き
女は風に逆って すそを押えて街を行く
ウォーン ウォーン ルルルルル


夏 の 嵐


  最初の紫電が雨を呼んだか
最初の一滴が電光を誘ったか
稲妻は鋭く空をさき
雨は激しく大地をうがつ
人々は右往左往し
軒に逃れビルに隠れる
太い樫は枝を逆立て
幹を二つにくねらせながらも
根は大地に探ぶかと
動くものかと力みおる
嵐はそんなことにはおかまいもなく
我もの顔に暴れに暴れ
街をきれいに総なめし
やがて威風堂々と
海の彼方に飛んで去る





四階の高みから見る街は
一際抜きんでたビルディングあでり
思うままにオゾンを穢す煙突であり
ゴミゴミかたまった煤けた屋根屋根であり
せわしく動きまわる車のブラウン運動であり
エーテルをかき散らす挨であり
音ならぬ音が
四方八方から湧きいでて
重なり、ぶつかり、もつれつつ
耳を重々しく押しつける世界である
そこにはもう人間の心情の
入りこむ余地とてなく
それだけにそこを
それぞれの生活を背負って
理由ありげに小さく歩いて行く人間を見るにつけ
俺は心地よい非人情を
冷たい街に感ずるのだ。


雑草


  ふみにじられ虐げられながらも
生命の残骸さえないところに
彼らは執拗に
きわめて原初的な強靭さで
士を割りいで
なお生きてあることを宣言する。

去年(こぞ)の秋
枯々の野に
野火が放たれ
チチ チチ と炎にむせび泣き
低迷する煙にのって
大空に消えていったもの
それが新たな生命の懐胎とは知らず
俺はただ亡び行くものの悲しさのみを見た。

時には雪が降り 雨が流れ
夜には凍てつき
こちこちに踏み固められ
さらには木枯Lが吹き
乾ききった砂塵が
もうもうと舞い立った荒野に
生命が息吹こうとは
一体誰に想像しえただろう。

今、三月
春の日は
彼等の成長のために
とうとうとふりそそぐ
彼等には
繁茂の夏が約束されている。
過ぎた日の如く
やがて秋には枯れるものであっても
次の年もまた次の年も
彼らに滅亡の時はない。


生命(いのち)


冷い眠りを覚めて 突如
一気に屹立する巨大な岩々
それらは はたまた
嚇怒として崩れ落ち陥没し
そこここに激しく
ますぐなる黒煙 湧出し
山をえぐり 爆発し
迸り流れる灼熱の溶岩(ラバ) 赤い爆風
それに呼応して天は
雲を重ね 稲妻は張り裂くはがねの豪雨
あゝ 暗黒の大宇宙に
陣痛に身悶える一つの点
大いなる一つの点 地球

     乾坤開闢のその力をひめて
     いかなる人智も及びつかぬ
     神秘なるものは誕生した

天地創造の成就よりこのかた
幾億年 また幾億年か
この岩壁は粛畳と聳え
衰え知らぬ力は止むことなく
憤然として押し寄せ続けた 波 波 波
その隆々たる怒濤は大きく岩壁に砕け
無限の飛沫となって飛び散れば
太陽(ひかり)にきらめき 生命(いのち)を孕み
太陽にきらめき 嬉戯(きぎ)として海原に沈み
あゝ 大海原は
あたたかき生命を孕み
大いなる無限の生命を孕み


山を登る


私はうつむき
ひと足ごとに移ろい行く
足もとのみを見つめながら
ひとり山を登ります。

山の頂きに何があるかを知らず
そこで何が得られるかを知らず
ましてや何のためかを知らず
ただ山を登ります。
時折こうべをあげて
頂きを仰ぐのですが
そこは雲が厚く何も見えません。
ふと山には
頂きがないのかも知れぬと
あるいは私は一所をぐるぐる回っているだけなのではないかと、
あるいは私が頂き目指して進めば進むほど、頂きは高くなり、
結局私は頂きとの距離をただ広げるためにのみ登っているのではないかと、
いずれにしても私は山に愚弄されているだけのように思えるのですが、
それでもなお、私はうつむき、足もとのみを見つめながら山を登ります。
しかし私はうつむき山を登りながら
不安にまさって私を恍惚とさせる充溢感を
身体一杯に感ずることがあります。
つまり私自身が山であり、山そのものが私であり、私と山とは
互に欠かせないものであり、私の個々の拳動が山にとって重要なのであり、
山の挙動に私の宿命は定められているのであり、
たとえ私が今すぐ山の怒りにふれて斃れたとしても、
それは意味ある必然であり、私の足跡はすぐ消えさり、
後から来るものには知られもしないだろうが、
その時こそ私は山と本当に一体となったのであり、
人々がそれとも知らず私の上をふみこえて、
私より上手に、私よりより快活に、私よりより高く、
山を登っていくための礎となり得たのであり、つまり私は……
その……うまく言えないのですが、ともかく瞬時ですが、
非常な満足を感ずることがあるのです。
そんなとき、私の歩みはことさらはかどります。
私は今朝も誰もがするように
あいも変らず登りつづけています。
遅いあゆみで
あいも変らず
うつむき
足もとのみを
みつめながら

スポンサーサイト



 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/2483-100ed092
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック