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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<『蜥蜴』より(3)>

<>詩文編(16)

『蜥蜴』より残りの九編を転載します。


みちを掘り起こす力はあるか

ひょうびょうと北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風の吹くなり
この暗く単調のみちにありて
この冷たく平坦のみちにありて
あゝ 汝が心よ
何故(なにゆえ)にそうも頑なに黙(もだ)すか
何故にそうも忍び堪えんとはするか
汝が心のままに
何故にかくは叫ばざるか
     あなた あたたかきものよ
     我とともに歩きてたもれ と

ひょうびょうと北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風の吹くなり

あゝ 我が心の叫び得ぬは
我が稚屈のみちに
我が安逸のみちに
あなた あたたかきものの
いかにもふさわしからねばなり
我がみちのあまりに稚屈なれば
我がみちのあまりに安逸なれば
我が心 恥じ入り
いよいよ頑なに
いよいよ苦々しく
かくも忍び かくも黙すなり
しかしてむしろ
我が心はかく畏怖(おそれ)をつぶやく
   あなた あたたかきものよ
   我を蔑まざること能うか と

ひょうひょうと北風の吹くなり
心にあたたかきもの かすかにあれど
このみちに北風の吹くなり
あゝ 汝が心よ
汝が単調のみちにありて
汝が平坦のみちにありて
汝は自らをいよいよ低うし
自らをいよいよ空虚(うつろ)にする
何故にそのこごえたる手をふるい
その冷たくこうばしりしほゝをほてらせ
汝がみちを堀り起こさんとはぜざるや
何故に汝がみちを
高く盛り上げんとはぜざるや
しかして
何故にかくは叫ばざるか
     あなた あたたかきものよ
     我とともに鋤をとりてたもれ と

なおも北風の吹くなり
心にあたたかさもの かすかにあれど
ひょうびょうと北風の吹くなり





桜木の陰の
白いうなじの
                                                         はじらいまぶし 春の河原


古都

しっとりとあまだるい
朝明けである
うす青い東山の峰々の
底に沈む
かみさびた都の
古へ人の
憂愁の
あゝ 一千年のかなたより
ぼくのさまよう生命(いのち)を
しめつける
朝明けである



宿命(さだめ)

ここが寂しい岬の突端です
さあ あなた
このレースのような草の上にすわりなさい
そして私たちは
こうして肩をよせあって
お互の体温を感じながら
このものかなしい海の景色をながめていよう

海の色は 灰色ににぶく
波の音は 遠い愁いの彼方から
霧のように
汐風に運ばれてくるようです
こんな 雪でも降りそうな曇りの空では
沖には 帆影一つなく
遠く視界の消えいるあたりは
空と海の区別さえつきません

このものかなしい景色の中で
あゝ あなた
あなたは明日(あす)を語ってはいけない
あなたの明白へのためいきが
私の嘆きを幾倍にもひろげます
私たちは
ただこうして 静かに座っていて
時のそとでためらいながら
私たちのみはてぬ夢を夢みていよう



生命(いのち)

冷い眠りを覚めて 突如
一気に凛立(りんりつ)する巨大な岩々
それらは はたまた
嚇怒(かくど)として崩れ落ち 陥没し
そこここに激しく
まっすぐなる黒煙 湧出し
山をえぐり 爆発し
迸ばしり流れる灼熱の熔岩 赤い爆風
それに呼応して天は
雲を重ね 稲妻は張り裂くはがねの豪雨
あゝ 暗黒の大宇宙に
陣痛に身悶える一つの点
大いなる一つの点 地球

      乾坤開闢のその力をひめて
      いかなる人智も及びつかぬ
      神秘なるものは誕生した

天地創造の成就よりこのかた
幾億年 また幾億年か
この岩壁は粛畳(しゅくじょう)と聳え
衰え知らぬ力は止むことなく
憤然として押し寄せ続けた 波 波 波
その隆々たる怒濤は大きく岩壁に砕け
無限の飛沫となって飛び散れば
太陽(ひかり)にきらめき 生命(いのち)を孕み
太陽にきらめき 嬉戯(きぎ)として海原に沈み
あゝ 大海原は
あたたかき生命を孕み
大いなる無限の生命を孕み





 真新たらしく塗装されたオモチャのような白い漁船の並ぶ浜に、春
はかすかにけむり、その景色の中でぼくの幼い心がかげろうのように
萌えた。ぼくは一つの記憶をまさぐり求めた。むなしく………

 そのさだかならぬ記憶は、あるいは、ぼくのではなく、母のそのまた
母の秘めていた記憶だったかもしれない。
 ぼくは、そのけむる想い出の中を、あてどもなくさまよい時を忘れた

 旅は続けなければならないと思いをがら…………




テニスコートはひかりあふれ
テニスコートはエーテルの踊り

乙女らの白い姿はまぶしくひかり
乙女らの息ずく肢体は軽やかにはね

テニスコートに春の息吹き
テニスコートにかがやく笑い



断層

おれの目は充血して
おれは朝日の中を歩む

昨夜からの雨は降りきった
街はからっぽの青い陶器だ

もはや「昨日(きのう)」は門を固く閉ざした
すべての過去をおれから奪って

すでにかび臭くなった 「昨日」の中へ
おれは帰りたいと思っているか

視点の遠い 充血したおれの目を
行き交うた人が嘲笑(わら)った



降雹

遠く低く
這いつくばう太い雷鳴
今までの底も知れぬ紺碧の空に
どこから湧いたか
泥くさい雲がぎしぎし詰めこまれ
真昼というのになんという暗さだ
なんという不気味さだ

泥くさい雲に吐気は漲り
漲り切った激しい吐気は
無数の氷塊と変り
不安と苛立たしさとにもう耐えられぬとばかり
どっと迸り出て
狭隘(きょうあい)な灰色の空間に
時をらぬ矢襖を張りつめる

絶えまなく落下する鋭い矢
その矢先は屋根に硝子戸に砕け散り
とび散った氷塊は妖しい霧となり
もうもうと立ちのぼり
矢に押し戻されてさらに妖しく
縺れ渦巻きつつ
再び地上に覆いかぶさる
 あゝ!蛟龍が昇天する。

やがて電光一閃
時を移さず耳をつんざく激しい雷鳴
..................
自然の嘔吐は終った
世は紺碧の空のもと
湿潤と静寂とを取り戻す。
 (シカシ、生命(イノチ)ヘノ苛立タシサハ吐キ切レヌ。)

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