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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<『蜥蜴』より(2)>

詩文編(15)

 『蜥蜴』より前回の続きの六編を転載します。


背中あわせの無骨な男

その連中ときたからは
背中あわせを思っただけで
とたんににがいへドがでる
そいつらも 存在してると考えると
無性に腹が立ってくる
そんな連中がいるけれど
相手も同じ思いだろうから
いっそう徹底的に冷淡に
底の底から戦って
おれがそいつを打ちのめし
あるいは
そいつがおれを打ちのめす
そんなことも思うけど
それはとってもできないよ

   良いも悪いも何んにもできない
   本心からの善人たちも
   地獄の底に落ちるというが
   それはきっとほんとだろう

虫の好かないお前たち
いやおうなしの
虫ずのはしる仲間たち
お前たちは知らぬだろう
人間の背中のおくの
おくのおくを知らぬだろう
背中のおくのおくのおくには
数万年もの昔からの
祖々代々の昔ながらの
しぶとく強い筋(すじ)があり
背中のおくから背中のおくへと
どいつもこいつも一緒くたの
三十億人をじゅずつなぎの
まことに長い筋があり
りんと一本通っていて
おまえのきたないあかだらけの
無骨の背中とおれの背中も
どうしようもない血縁だ

   今この岩壁にくだけて散った
   その波は つい近頃までは
   はるばる遠い地中海の
   底の闇で滞っていた
   こんなこともあるだろうか

人類の栄光とかの現代では
みみずのようなその筋は
あんまり背中にめりこんたので
誰にもそれが見えないよ
だけど実際 みみずの奴は
砂漠の白い熱さでも
地のはての 言葉もこごえる寒さでも
そんなものはへいちゃらで
しかめっつらの身動きならぬ
数千年の文化の中も
それはしぶとく生きのびて
とてもまともじゃ死なないよ
今でもぐにゃぐにゃくねていて
太平洋九千カイリを漂って
ヒマラヤ九千メートルのぎざぎざに
ごろごろねちねちへばりつき
立派に一本通っている

   昔のことだ
   神々の月夜の宴で 一人の神が
   他の神々を指さしながら泣きだした
   身悶え 雲の上をころがって
   雲に溶けて
   うす紫の夕べの雲になったという

いまいましい血縁の仲間たち
お前たちを 忘れて思い出すまいと
お前たちへは背を向けて
まったく見事に無視すること
これが せめて 残された
いまわしいみみずへの
悲しいけれど反抗だ
我ながら
まったくなさけない仕方だと
いやになるけど あゝあゝあゝ
おれが欲しいは力だが
なんとも力がないんだよ
おれも泣いて身悶えて
雲の上をころがれば
うす紫の
夕べの雲になれるかな



死ぬのはまだ早いか

大晦日の夜だとて
なんということもないのだが
こうして ひとり
酒をのんでいると

ゆく年のうすく鋭い
刃物のような悔いが
おれの心をさっとかすめて
ひりりと痛い一筋の疵をのこした

そのほそい疵を割って 透明の
赤いけむりがむんむんふきだし
心になまぬるい紅色が充満し
疵の痛みがすっぱくなった

その紅色は 来る年への
希望でもない希望のような
力でもない力のような
あゝなまじっかの若さだよ



泣 き た い 夜

一年前に 父が死んで
母よ
今あなたが死んで
おれの心はくちゃくちゃだ

手をにぎったのに
固く冷たく応えないから
おれは窓辺に寄って
夜の街に目を凝らし
涙をこらえた

街のあかりは明るいし
車も電車も動いている
この小さな白い部屋の出来事は
あなただけの嘆きだから
残ったおれには泣くなというのか

人の気配にふりむくと
戸口に弟が
茫然として立っていた
母よ
あなたに一番あまえた奴だ

こらえた涙が このとき
あふれて落ちた
母よ
どうにもこらえようがない

無言のあなたに
いかなる涙で語りかけても
これはもうどうしようもない現実だけど
誰も他人(ひと)がいなければ
大声たてて泣いてもみたい

一年前に 父が死んで
母よ
今あなたが死んで
おれの心はくちゃくちゃだ



夜 の 歌

ほそい月だ
えぐられた地はだをしみでて
したたる滴はつららになった
冷い月だ
日の中はたしかに流れていたんだが
このどぶ川も 今は白く動かない
真夜中だ

    こたつの中で酒をのみ
    テレビでも見ていれば
    それはもう
    暖かで豊かそうだけど
    わけの分らぬ衝動が
    おれをここまでかりたてた

白い月だ
蝋のようなうすあかりが
おれの心を苛立たせる
うすい月だ
求めるものはあれでもないこれでもない
めしいた手につかむべき闇さえない
今は真夜中だ



早 春

朝の野の
若いみどりの
清楚をしめりに
雲は切れ
澄んだ青さの
春のひかりの
惜しみなき賛歌(ほめうた)に
露はゆらゆら昇天する

かける乙女の
流れる髪の
うねりをなでて
そよぐ風の
伝える香りの
思いのほかに
女らしく
後追う我は
とまどい 立ち止まる

澄んだ青さに
春のひかりに
そよぐ風の
我に伝えるさざめきは
なおもかける
白い姿の
はずむ胸の
無垢のひびきの
ふともらしたためいきか



内臓をひきずって歩く人

花粉のようななまぬるいもの
腋臭のようににおうもの
それがむせかえる
ここは都会です

うすっぺらな顔をして
まばたき一つするでなく
倦怠にとろけたような
これらは都会の人たちです

それらの人がこの街に
歩まするのは生命(いにち)でなく
皮膚の中はからっぽで
あゝ 着かざった影なのです

それらの影はひょうひょうと
長いひもをひきずって
重たそうにひきずって
ふらふら酔っぱらっているようです

ひもの先のあかちゃけた
みにくい内臓は重たいから
臓が小石にぶつかれば
黄色い液さえふきでます

ひきずられる内臓の
むくんだようを青い筋が
ときにはひくひく動くから
生命(いのち)があるのは内臓です

臓はたしかに生きてます
苦悩し 呻吟し
恋をすれば
あゝ 臓はあんなにも悶えます

だが ほこりだらけの内臓は
ひきずられて すりきれて
そこらじゅうくびれていて
だらだら黄色い液を流します

花粉のようななまぬるいもの
腋臭のように臭うもの
それに長くさらされて
内臓はもう半分くさっています

無表情の影たちも
ときには すえた臭いの内臓に
わけも分らずむせかえり
乾いた涙を流します
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