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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

<『蜥蜴』より(1)>

詩文編(14)

 前回の『詩文編13』で、「自作品の公開」を終わりとするつもりでしたが、次のような理由でなお続けることにしました。

  『詩文編1』
で最終詩集『母の沈黙 あるいは ふるさとのありか』(書肆山田出版)以前に自費出版してきた『蜥蜴』『影』『日ごとの葬送』という詩集があることを告げながら
「読み直してみると自費出版の詩集は大半が自ら駄作だと思ってしまう詩が多く、これを直接取り上げることは止めることにしました。」
と述べています。恥ずかしながら、本当に読み直していないくせにこのような断定をしていました。
 ところが、最終詩集の公開を終えて、改めて自費出版詩集を読み直してみましたら、結構楽しく読める詩が多く、このまま反故にしてしまうのが惜しくなりました。
 実はその自費出版詩集の中から最終詩集の転載した詩文がいくつかあります。そこで、〈興味ないよ〉という方が多いかもしれませんが、それらを除いた残りの詩文を全て公開することにしました。まだ青臭く未熟な青年の作品ですが、お付き合いくだされば幸いです。

では『蜥蜴』(27歳の時に纏めたものです。)から始めます。
 まず、表紙裏に次の序詞が記されています。

おれには三つの顔がある。
いまだに混沌としている。
なんとか一つの顔を 持ちたいと思う。


 以下、作品が17編ありますが、まず、最初の5編を転載します。



蜥蜴

いぼだらけの大きな蜥蜴が
青い蜥蜴が
ざくろのような目をむいて
ふるえをこらえて
長い尾のふるえをこらえて
 (あゝ この尾はいくら切っても はえてくるのだ)
ときには 涎のように涙を流す

うしろは絡みあった山なみで
はるかにつづく山なみで
ここに小さな岩があり
眼下は浪の
大海原の気まぐれの浪の
 (あゝ 山や海はあまりにも とりすましている)
岩の蜥蜴の 青いふるえを揶揄する

だから蜥蜴は動けず
もう三十年も動けず
ざくろのような目をむいて
それでも死んで いるでもなく
どうにも 死ねるわけでもなく
 (あゝ 今日の入り日も 美しい)
ときには かすかに笑おうとする



あ こ が れ

地のはての
あかねの
雲の向うの
はてのはてへ

馬を駆ける
我は
草の原の
はるかに

求めるものを
知らずに
とこしえに
はるかに

日は沈む
いざ我も
地のはての
雲の向うへ

   やがて日は
   再びめぐって
   我が背に
   せまるだろう

   日が沈むは
   再びのぼる
   ためであった
   一つの軌道を

限りなく
酷く
寂しき
永遠よ

ただ徒労ばかりの
永遠?
馬を駆けるは
酷き陶酔?

地のはての
はてのはてへ
いたしかたなく
ふるえつつ



夜 の 港

闇の中に黒い船がつながれて
海の水は動かなかった
透いたうでが岩壁をすがって
ぬれた頭をもたげ
あざやかに 女が現れた
夜には一人で 泳ぐのか
今宵は月夜。



水 溜 り

例えば

 太陽がまったく顔を出さない陰うつな日々を過ごしながら、ぼくは
太陽はもう永久に現れないのではないかと心配する。再び太陽を見る
ことを半ば断念している。雨空ををがめては、この世の終りを想像して、
小さを心を痛めるのだった。
 何日も降り続いた雨が、ある日いきなり止んで、青空一杯に太陽の
光があふれる。ぼくにとってはまったくの奇跡だった。落ち着いた大気と
暢気な光が織りなす太古からの旋律が街中を覆い、大地はぬくまり、
かげろうがゆらゆら踊りだす。

 ぼくはそうした雨上りの一時が小さい頃から好きだった。幼い頃には、
大きな長靴をはき、胸をはり、手を大きくふり、足を思いっきり高くあげ、
心をはずませ、暢気に快活に近隣の道を歩き回って、雨上りの一時を過ごした。
とりわけ水溜まりが好きだった。水溜りを見つけては、泥水を頭の上まではねあげて、
ジャボジャボと突進していった。
              (ぼくのそうした冒険を、母は深くとがめはしなかった。)

 ある雨上りの日、ぼくは例によって近隣の道を歩き回っているうちに、
いつになく大きな水溜りに出くわした。雨上りの彩やかな青空を写して静かに
澄んだ水溜まりだった。どこかとりすましているようで、 あるいはとてつもない
深みがあるようで、すばらしく美しい水溜りだった。ぼくは目を光らせ、
胸を異様に高鳴らせ、そのすばらし相手に突進しょうとした。しかし、
目前に相手を見をがら、ぼくは突進をやめてしまった。水端に佇み、水溜まりを
凝視していた。ある種の高揚感と、不安と、希望と緊張と、期待と恐れと、幼い心に
そうした感情が激しい波となって目まぐるしく起伏し、世界がその水溜りに収縮していった。
………どのくらたっただろうか。結局ぼくは、その水溜りを迂回して、再び勝気に快活に
歩き初めていた。

 ーーあの水溜りのように、今、君はぼくの前に現われた。



夕 べ の う た

淡いオレンジの空に ひとはけ
透いた紫が溶けるように流れきて
上の方から しみるように濃くなって
やがて山ぎわまで灰色が迫る ひととき

おれはたしかに見た 幻ではなく
おまえの軽ろやかな翔りを
おまえのつばさが音もなく地を覆うのを
たそがれの空に ひととき ………

だが北風がかなでる絃の
かすかなひびきに和して ひっそりと
野や山のうすやみの影は うたっていた
……たそがれはほろびのいろ……と

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