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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

詩文編(9)

 前回の詩に続く二編を見て驚きました。この二編は大変な長詩文なのです。50年程前の私にこんな長詩を書く気力があったのかと、我ながら(?)びっくりしています。
 大変長い詩文ですが、二編とも一緒に転載することにしました。


明日の続きのラプソディー
             愛しとさ寝しさ寝てば
                  刈薦の乱れば乱れさ寝しさ寝てば



湖水に沈んだ夢のように
町は青くかすみ
ゆらいでは直り流れては戻る
ひとびとの胸にひそむ無数の吐息は
安息の眠りを求めて
積み木のように同型となり
貪婪な休止符だけの
終楽章をつぶやく
――われらの律動に合わぬもの
――禍なるかな眠られぬもの
だが眠られぬものの眼に
夜はすいこまれて消える

恐らくぼくらは生き方を間違えている
生れた時ぼくらは与えられすぎていた
なのに幼い時から教えこまれたのは
限りなく獲得すること
以来ぼくらは勤勉だったから
かき集めたがらくたで
押しつぶされそうでありながら
はたしてぽくらは傲慢になる
が、ますます鮮明なうつろはどうする
ぼくらはますます不確かなのに
まるで今日は明日の続き
ぼくらはさかさに生きている

黒い山脈
がなつかしいほど近くに見える
その向うの白い富士
こんな新しい冬の朝空も
厚ぼったい視界と騒音のうらに
やがて記憶のようにうずもれよう

ぼくらの町のしたり顔なただずまい
そこに内蔵された
おびただしい数の消耗品
のような模範的人生
過不足ない幸せをこととする
モダァンなひとびとの
それは逃亡不能の牢獄
――ええ、そりゃ幸せです 子供が生れるんです
牢獄の上は今日も天気

ないものをあらわにする
輝ける正午の太陽
の ひそやかな誇り
ひとびとの表現されないうつろは
完成した真昼の間隙にあった
見えるもののすきまのうつろ
親しいひとのために
ぼくは見えないものに圧倒され
憑かれてしまう

だれもがうつろを持っている
一メートル七十センチのぼくは
一つのうつろさえ満たせない
その大きさといったら
ぼくはまるで情ない塵だ
ぼくの真剣な言葉は空しくなり
変なふうにこだまする
どんなに熱心に語ろうとも
同じこだまの同じうた
――私のうつろは埋らない
――私のうつろは埋らない
――埋らない埋らない
――らないらない
ぼくのうつろに入ってくるひとよ
あなたも情ない塵だろうか
同じこだまがひびくだろうか
――らないらないらない
木末(こぬれ)の風のそよぎのように
ぼくらのうつろは
合わさりすりぬけ
惑う惑う

大層な装飾の中の
一片の生を求めて
生れたとき与えられたものを
一生懸命かき集めたものを
明日が今日の続きであるようにと
ぼくは捨て続けてきた
見えるものがなければうつろはない
ぼくの陥ちこんだ夜の罠
父のいまわの際(きわ)
ひからびた手が求めてきた握手を
ぼくは頑なに拒んでしまった
あの時の

黒い山脈
も白い富士も
ぼくの憧れではない
もっともっとなつかしいもの
そんなものはもうないか
厚ぼったい視界と騒音は
ぼくの理由にはならないのだ
ぼくらの町を
どこまでぼくの敵としようか
沈みゆく感情がすっかり
夜の大地にしみこまぬうちに
ぼくは山から山へと
……… 飛べないのだ
まるで今日は明日の続き


二つのモノローグによるフーガ
                    ああおまえはまだ牢獄につながれているつもりか
                          この呪われた陰気な石壁の穴の中に
                                           ――「ファースト」より


眠りに入る前の日の朝 ほんの千年の別れと
知るも 名残りおしく 目 しばたたいて
俺 慈しみにあふれ 世界を見巡り愛でた
大地 気息の露爽けく 死ぬるものたち 死
ぬるもの故 溌剌溌剌と生きる喜びに濡れ 眩く
輝くもの 盛んに地に降り注いだ 千年の眠
りを今朝覚めれば その第一日から 俺 ひ
どく不幸だ 大地 至るところ穢されている
いらざる潔癖ぶり その裏知れてかえって卑
しく 光さえ穢されつくし 澱む 俺の大好
きな人間たち変わってしまった 千年ごとの
眠りと目覚め もう何度目か 俺 知らない
ついに死ねない俺の宿命 こんなに悲しいこ
となかった とてつもなく遠い 想い出に誘
われ 山に行く 俺 悪魔

     俺たち人間の舞踏が 壮麗な黎明
     のリズムにのれず ぶざまなさま
     であるのは 有能な奴隷を 無能
     な主にしてしまったあの時からだ
     それ以来仲間がきらいだ 仏頂づ
     らの自称神さまが 決して哄笑し
     ない空虚なその気位 眉間によせ
     あつめたむずかしい皺の数々

残雪の上 流れた夜来の雨 冷たい朝凍った
山は 俺に人間の思いを思わせる 滑りなが
ら体中傷だらけにして 傷ついた心支え 悪
魔にだって心はあるさ 気狂いのように 頂
きへと喘いだ 頂き 無限の中の一点 俺
風の中に立つ 遥かな景観に安らえない 人
間 俺の命の糧でなくなった 確かに人間は
堕落したさ 人間が忘れてしまった珠玉の重
さ 言葉に託し 人間の方向に叫んだ が重
み するりと落ちて 言葉 なんと軽々しく
風に流され消えた 俺の心に拡がる一つの言
葉 それは死んでしまうから 人間の中で語
ることはできない そう思ったことだ 俺に
近しくなった人間 もはや俺の楽しき餌食た
り得ず 脳髄は緩慢な汚水の流れ 澱む放漫
な思惟 人間が誇りおるもの そこから涌き
生れる 不具だらけの虫の類

     ときに思いがけず 抹殺したはず
     の純血が たぎり悶えると 顔を
     隠し恥じ入り あわてて陰湿な牢
     獄にねじりこむ 誰にも気付かれ
     なかったから そのように神さま
     よ 胸をはって歩くがいい だが
     たった一滴の血がふるう圧倒的な
     力に たたきつけられた羨望と畏
     怖の疼きは おびえる奴隷の無力
     なまばたきは 隠しようもあるま
     い

白い頂きでひとり りんごを食った 血の苦
しみ 血の悩み 血の欲望 血の笑い 血の
賑わい 血の 血の溢れた人間はどこだ 俺
の心に適うもの 血の滴る人の心を食いたい
のだ 昨日 町で食ったもの 全て俺の心を
冒した 下痢した心 支えがたく なおも貪
欲な腐爛する空腹 支えきれず 山を辷り落
ち町に帰る 人間が悪魔より悪魔的で 悪魔
が人間より人間的で あゝ おかしくてなら
ない 阿呆のような落下を巡って 高さを錯
覚する人間の 賢い独善がきらいだ 向かい
合っても 寒い背中の向うばかりしか 見え
ない こわれてしまった惑星のように 淋し
く浮んで どうしようもなく遠く隔たる 俺
と人間

     卑しいのはまばたきだけではない
     賢くも軽い頭蓋骨をかざるには 
     その帽子 重いのではないか 心
     の軸をはずれて 前へのめった頭
     の位置に引きずられ 神さまはぎ
     くしゃく歩く そのおかしな姿を
     見定め得ぬ神さまの なんと素敵
     な舞踏だろう ひとが二本の足で
     確かに立ったときの 生々しく力
     強い感動を求める苛立ちが一滴 
     の血に呼び覚まされたのなら そ
     の虚しい首を切り落とす 今は決
     定的な時なのに

俺 死ねないから 人間慕い続けなければな
らない 眠りに入るとき 心ときめかせて 
千年後の目覚めの楽しさ 人間との闘争と戯
れ思えば そこはかと高まりゆく 充溢の心
あった 俺の安らかな寝顔 目覚めを夢みつ
つ ほほえんでいたはずだ 目覚めが今は忌
わしく 早く千年経て 眠りに入りたい 今
度は目覚めない眠りを 眠りたい

     舞踏はぶざまでもまだしも やが
     て足を 足という言葉さえを失っ
     てしまうのではないか そんな不
     安を一片も持たない 萎縮してし
     まった愚鈍さを 俺たちに君臨す
     る無能な奴隷の安直さを おれは
     逆立ちさせたいのだ それは有能
     であるために奴隷に戻れ 悪魔と
     舞える舞踏を 悪魔と歌える賛歌
     を 準備せよ 銀河の希有な星の
     上の 希有なものの こんなにも
     哀しい生き死にを 粗雑に数えて
     やりすごす卑しさを葬れ 見据え
     る目 しかもなおめくらめかない
     哄笑の河 溢れよ 流れよ 悪魔
     のための一つの良心

雪の頂き 吹雪荒れ狂えば 心 冷える 白
い大きな鳥 白い影落として 渦巻く疾風つ
き失踪した 夢か 確かに見たのだ 血に染
まった鋭い嘴 紅の一点 白い風ににじみ 
見る見る消えた あゝ 冬になったら山に探
そう 千年前の血の喪失を 長い眠りの中で
せめて 人間食らう夢 見続けるための記憶
を 滴る血の快感 迸り散る血の鮮やかさ
悪魔の赤い口 人間の未来のための 一つ 
の準備

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