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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

詩文編(5)

 気ままな情けない生活を続ける青年にも人並みに人を恋い慕う時がやってきます。時にはなんとも切ない片思いの嘆き節を口ずさみます。青年前期の詩作品にはそのような詩が時々混じってくるのはいたし方ないことでしょう。


秋の歌

かすみのような秋の中に
私はたたずんだ。
いまにもこわれてしまいそうな
こわれれば私もこわれてしまいそうな
かたみの愛のような
にがいものを手のひらにそっとつつんで。
そのもののぬくもりが私の心にあふれた時
私は考えた。

  「これはこのままのみこんでしまう
  のがよいのだ。
  紅い秋の日ざしがぷっつり消えて
  胃や腸までが滅入ってしまうまえに
  のみこんでしまおう。
  しばらくは私の胃に
  にがいものが重たいだろうが
  私は旅にでよう。
  胃の重み以外に
  私の記憶がよみがえることのない
  童話のような森の地方へ。
  そしてその時には
  私の偏屈な自尊の心の糧として
  私の青春もまたのみこんでしまおう。」

それでもそのものは
虫の音のようにせつなかったので
私はそれを手のひらにつつんだまま
なおもたたずんでいる
と 秋の風が静かに渡って
私のたなごころに
憧れた死のような白い花が咲いた。
涙ではない白い花が咲いた。


波の歌

冬の浜辺は刃物のように静かで
渚にうずくまる若ものの背を
まっすぐな哀感が貫く。 もの思うわけでなく
若ものは砂を重ねる。
もうそれ以上はただくずれるばかりなのに
繰り返し繰り返し砂を盛る。
この瞳のきれいな青年を
町の人は狂人とよぶ。
こんなにもきれいな瞳に
映るものといえば砂の中の夢だけだった。
だから若ものは
繰り返し繰り返し砂を盛る。
もの思うわけでもなく
ただくずれるばかりの砂を盛る。
寄せるともない満ち潮が
音もなく
盛られた砂を不意にのんだ。
手にした砂の落とし場をとられて
我に返った若ものの瞳を
冬の夜がさえぎっていた。
いつしか冬の夜の白波は
猛々しくほえていた。
砂を握ったままの若ものは
闇の波のほえ声に聞きいった。
衷しそうでもなくうれしそうでもなく
ましてや悲壮そうな風もなく
瞳ばかりがただきれいで
ふかぶかと闇を分け
波の音に聞きいりながら
もの思うわけでもなく
若ものは静かに海に入った。

さざんか

ひとには死のほか
たしかなものはない
というけど
ぼくがそこへ到る道の
さざんか
さざんかの白さは
信じてよくはないか
T ―― おばかさん

惨めな一日のしめくくりに
別れを麻酔しても
朝にはむなしい
いまでなくここでなく
あるものであるのではなく
さざんか
黒いさざんかを
おもうのは卑しくないか
T ―― おばかさん

かなしいひとでなく
若くきれいなひとを
想えと
言われるのはかなしいことだ
ひとはひとを贖えるのか
さざんか
さざんかの白さが
おまえの胸をささないか
T ―― おばかさん

たしかにあることを
いつでもたしかめないと
不安だから
たしかなものはたしかにある
のかないのか
さざんか
さざんかの白さのために
ぼくは自ら死のうか
T ―― おばかさん

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