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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
恥を忍んで、自作品の公開

詩文編(4)

 詩文編は最終詩集の第一部の最初の三作品を転載することから始めました。そこに戻って、その次の作品の紹介をしていきます。

 大學卒業後、私の最初の勤務校は隅田川の近くにありました。勤務校に歩いて通える所ということで、白髭橋の近くのアパートの一室を借りました。勤務校からアパートまでの道筋の丁度中央辺りに居心地の良い酒場があり、そこを夜食の店として利用することにしました。

 なんとも気ままな情けない生活ですが、その中で墨田川の川沿いの道を言問橋まで、のんびりと往復するのがとても楽しい一時となりました。その頃、二十代前半の青年が創った妄想のような詩が三篇あります。それを紹介します。


隅田川異影

夏の夕べはレモン水
下弦の月は二日酔
川面のネオンは友禅流し

   突然衣(ぬの)をちぎって疾走するふんぞり返ったモーターボート。
   ひげのはえた源五郎です。
   その後をちぎれた衣をつむぐようにすべるエイト。
   女性ばかりのあめんぼうです。

二日酔の半月が
ふっと一息ためいきつくと
あめんぼうも源五郎も
風のように闇に溶けた

   流れにゆらめく友禅をからませて、
   そのときぼくの死骸が浮びます。
   水にふくれたぼくの死骸は、
   ぼっくりと、流れるようで流れません。

夏の夕べはレモン水
下弦の月は二日酔
川面のネオンは友禅流し


雨の隅田川

雨は冷たく
私の身体をぬらしても
私は冷たさを感じない。
雨はしんしんと降るのである。
川岸にたたずむ私の
うるおいのない瞳にも
雨はしんしんと降るのである。
この夕べの風景がこんなにも明るいのは
向岸のネオンのせいではない。
この音のない風景がこんなにもリズミカルなのは
川面におどる波紋のせいではない。
私は知っている。
この風景を覆っているのは
ただに
存在への
くったくのない
もの静かな抗議らしいもの。
虚飾のない
心からの無言の愛慕。
希求の叫喚。
なのに川は泣かない。
涙はない。
雨がしんしんと降るのである。


私のための賛歌

よどんだ川面をみつめ
川岸を行き来しながら
私の想いは
まだ誰もたどったことのない
深淵をくだっていった
夜のような汚濁の川底をぬけると
ほの青い広々とした海底であった
そのはるか彼方には
もう一人の私がいるのであった
私は私を待っているようでもなく
つつましく漂っていた
私も私を求めているようでもなく
軽ろやかに泳いでいた
いずれ私たちの出会いは……いや私の
と 川岸を歩いている私がつぶやいた
私のその遊泳と無為とが
すでに生への意欲だったのか と

隅田川はだんだんきれいになるようだ
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