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明治150年、何がめでたい(32)

大日本帝国の植民地(15)

戦時下の植民地(追記)



 前回で『戦時下の植民地』を読み終わりました。
 この論考を読み始めたとき、私はこの論考を
 【「戦時下の植民地」問題を全面的に 詳しく論じている鈴木さんのこの論考は他に見られない貴重なものに思えてきた。】
と書きましたが、読み終えた今、この判断は間違っていなかったと思っています。大日本帝国の植民地に対する残虐な政策については 『昭和の15年戦争史』『大日本帝国の痼疾』など、いろいろなところで取り上げてきていましたが、今その全貌を知って改めてその国家犯罪のおぞましさを痛感しています。

さて、前回でこのカテゴリは終わりにしようと思っていたのですが、最近ぜひ紹介しておきたい二つの関連記事に出会ったので、もう一回追加することにしました。

 一つは、「戦時下の植民地」問題を短いながら鋭く指摘している論説に出会ったので、それを紹介しておきます。『週刊金曜日1186号(2018年6月1日)号』の編集後記で成澤宗男さんが記述している次の論説です。

 いったいこの国は、われわれに何をしたからといって隣国を滅ぼして植民地にし、その国の人々の言葉と名前、尊厳を奪ったのか。
 しかもそれを実行したり、煽動した輩の肖像を紙幣に収めるというのは、正常な神経なのか。
 いったい隣国の人々が何をしたからと関東大震災で多数を殺め、戦争になると「帝国臣民」として死地に送り、女性を性奴隷にし、炭鉱や鉱山で強制労働をさせ、戦争が終わると民族教育を禁じてこどもたちを学校から放逐したのか。

 そして今また民族教育の場を高校無償化から除外し、そこに学ぶ女性徒に制服の民族衣装を着られなくしたのか。
 彼らの民族性に対する侮蔑が、なぜこれほどまでに社会で溢れているのか。
 そして何よりも、過去と現在のこうした悪行を、どうして懺悔と羞恥の対象として自覚できないのか。

 誰しも「日本人」という出自は、おのおのの選択の結果ではない。だがこのままでは、それは末代まで恥知らずと道徳的欠損、健忘症の同義語と見なされ続けるほかない。

 「懺悔と羞恥の対象」どころか、臆面もなくヘイトスピーチに興じる無知蒙昧な輩が後を絶ちません。

 二つ目は、そうした輩と同等の無知蒙昧さをさらけ出している国会議員がいることをつい最近知って、それを記録しておきたいと思いました。
 その記事は東京新聞朝刊(2018・5・30)の『こちら特報部』の【自民国会議員ら科研費口実に政権批判学者らに圧力?】と題する記事(以下、特報部と略称する)で、「脅かされる学問の自由 法大総長、異例のメッセージ」という副題が添えられている。

 自民党の議員等が繰り広げているキャンペーンの無知蒙昧ぶりを特報部は次の様にまとめている。
 背景にあるのは、自民党の杉田水脈衆院議員や、その賛同者による科研費をめぐる一部研究者へのバッシングだ。同議員は二月の衆院予算委で、戦前に朝鮮半島から徴用された徴用工問題に取り組む研究者に科研費が交付されたことを引き合いに
「徴用工間題は反日のプロパガンダ。科研費で研究しているひとたちが、韓国の人たちと手を組んでやっている」
と訴えた。
 その後もネット番組などで、政権に批判的な研究者らを名指しし、「科研費が反日の人のところに使われている」などと主張。「国益に反する研究は自費でお願いいたします」と発信し、物議を醸している。

 特報部は法政大学の田中優子総長に取材して、このキャンペーンに対する田中総長の批判を次のようにまとめてている。
 「科研費をめぐる問題は学問の自由が失われるか否かの問題。法政大だけでなく、学問全体にとって深刻な事態だ」
田中総長は取材にそう語気を強めた。

 田中総長はメッセージに
「適切な反証なく圧力によって研究者のデータや言論をねじふせるようなことがあれば、断じてそれを許してはなりません」
と記したが、科研費閻題に加えて、働き方改革の不適切データ間題で同大学の教授が中傷されたことも異例の発表の動機になったという。

 科研費は文系か理系かを問わず、幅広い分野の研究を支援する制度。研究者が応募し、同じ分野の研究者が審査、採択されれば研究費が助成される。年間の予算額は約二千二百億円で、応募件数は約十万件(2016年度)に上る。研究者の政治的立場などは審査の対象外で、交付後は大学など研究機関が管理するため、研究以外の用途で使うことは不可能だ。

 杉田議員の趣旨は「科研費は税金で、日本のために使われなければならない」ということだが、田中総長は
「科研費の交付を研究者の政治的立場や考え方で線引きすることは絶対にあってはいけない。憲法で定められた学問の自由が脅かされる。議員にはまず、憲法を学んでほしい」
と語る。
 「宇宙の研究、外国の研究、戦争の研究など全てが日本のためになっている。『日本=政権』ではなlい。時の政権にとって役に立っているか否かで判断すこと自体、ナンセンスだ」

 今後、事態の推移によっては、法的手段も辞さないという。
「一部の弁護士会に対する特定弁護士への大量の懲戒請求と同様、研究に差し支える事態になれば、検討せざるを得ない」
 「こちら特報部」は、杉田議員にも発言の真意を尋ねたが「本人がいないため回答できない」(同議員事務所)とのことだった。
 ちなみにこの間題では、林芳正文科相が22日の参院内閣委員会で
「科研費は、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する。科研費の執行は適正に行われている」
と答弁している。

 特報部は杉田議員に問題視された学者たちの反応を次のようにまとめている。

 杉田議員に問題視された学者のお一人法政大学の山口二郎教授は、本欄「本音のコラム」(4月29日)で反論しているが、他の研究者らはどう受け止めたか。

 「慰安婦」問題などを論じた研究グループの牟田和恵・大阪大教授(ジェンダー諭)は、杉田議員のツイッターで
「慰安婦問題は女性の人権問題ではありません」「税金を反日活動に使われることに納得いかない」
などと批判された。
 同グループは
 「規程に従い予算執行しており、不正使用や無駄遣いはない。幾人かは日本政府の『慰安婦』問題対応を批判する論文を執筆しているが、日本が国際的な人権を支持する国になってほしいからで『反日』とされるいわれはない」
と反論。牟田教授は
 「無知や誤解に基づく誹謗中傷だ。国会議員にあるまじき偏った言い方」
と憤る。

 琉球独立論などを研究している松島泰勝・龍谷大教授(島嶼経済学)は「八重山日報」に寄せた杉田議員の論稿で「沖縄県の振興開発と内発的発展に関する総合研究」という研究名で科研費を受け取ったとされ、税金を使って「『琉球独立』を主張するのはいかがなものか」と指摘された。
 しかし、実際の内容は主に経済研究。松島教授は
 「科研費で琉球独立は研究していない。国会議員の影響力を使い、自らの意見に合わない研究を抑圧しようとしている。琉球ヘイトもここまで来たか」
と驚く。

  上に、山口二郎教授が「本音のコラム」(4月29日)で反論しているとあった。私は「本音のコラム」も欠かさず読んでいるが、山口教授のその反論は記憶に残っていない。改めてその反論を知りたいと思い調べてみたら、山口教授のブログに掲載されていた。転載しておこう。

 公のメディアで発言する以上、私の主張に対して批判があるのは当然である。しかし、根拠のない言いがかりには反論しなければならない。

 このところ、政府が研究者に交付する科学研究費について、杉田水脈、櫻井よしこ両氏など、安倍政権を支える政治家や言論人が、「反日学者に科研費を与えるな」というキャンペーンを張っている。
 私は反日の頭目とされ、過去十数年、継続して科研費を受けて研究をしてきたので、批判の標的になっている。
 櫻井氏は科研費の闇という言葉を使っているが、闇などない。研究費の採択は、同じ分野の経験豊富な学者が申請書を審査して決定される。交付された補助金は大学の事務局が管理して、各種会計規則に従って、国際会議の開催、世論調査、ポスドクといわれる若手研究者雇用などに使われる。今から十年ほど前には、COEと呼ばれる大型研究費が主要な大学に交付されたので、文系でも億単位の研究費を使う共同研究は珍しくなかった。研究成果はすべて公開されているので、批判があれば書いたものを読んで具体的にしてほしい。

 政権に批判的な学者の言論を威圧、抑圧することは学問の自由の否定である。天皇機関説を国体の冒瀆と排撃した蓑田胸喜が今に生き返ったようである。こうした動きとは戦わなければならない。

 さて、特報部は以上のようなまるで戦前の亡霊がよみがえったような政治の劣化状況を次のようにまとめている。

 こうした動きで想起されるのは戦前の事例だ。1933年、京都帝国大(現京都大)の滝川幸辰(ゆきとき)教授(刑法)が、菊池武夫・貴族族院議員らから講演内容などが共産主義的と攻撃され、大学を追われた「滝川事件」が発生。35年には、東京帝国大(現東京大)の美濃部達吉名誉教授の憲法学説「天皇機関説」をやはり菊池議員らが批判し、政府が同学説の流布を禁じた「天皇機開説事件」がl起きた。

 戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏は
「いま国会議員が非難している構図は、まさに天皇機関説事件で菊池が「学匪(がくひ)』と批判したのと同じ。もともと美濃部を目の敵にしている右翼がいたが、口実が見つからず、そこに出てきたのが天皇機関説だった。学問レベルでの反論ではなく、国体に反するといった一方的な言い掛かりだった」
と説明する。

 その後、日本では軍部批判も姿を消し、破滅的な戦争に突入していった。
「現在も威圧や恫喝が増え、空気の流れは当時と同じように段階的に進んでいる。『反日』の背景にある国防の概念を大義名分に振りかざすのは、戦前の日本でも繰り返されたパターンだ」
 上智大の中野晃一教授(政治学)も
「ここでの『反日』は『反安倍』のこと。政権に異を唱えるのは許さないということだ。そもそも学問は国のために奉仕するものではなく、すぐ役に立つものも、そうではないものもある」
と話す。
 そして、一連のキャンペーンの狙いを「改憲」とみる。
「国民投票のときに自由な議論をされては困るので、学者を黙らせ、萎縮させようと仕掛けている。こんなことがまかり通れば、日本の大学の競争力や国力もますます弱まる」
 田中総長は、科研費を口実にした学者への圧力について
「看過してまえばどんどん広がってしまい、学問の自由や大学での言論が萎縮してしまう。ひいては学問の自主性が失われ、学問が政権の道具になってしまいかねない」
と危ぶむ。

 「誰かの発言に対し、わけも分からず乗っかってしまうことは危険だ。今回の件も科研費の仕組みを調べてみれば、国会議員の発言が誤りだとすぐに分かる。賛同する前に踏みとどまり、自分で考えほしい」

(デスクメモ)
「偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴とののしられた世の中を私は経験してきた」。
 こう記したのは昭和天皇の末弟で、歴史学者の故三笠宮崇仁親王だった。この感覚は一昔前までは「常識」だった。ここでいう常識は「正気」と言い換えてもよい。(牧)

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