2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
昭和の15年戦争史(53)

戦後処理(3)

 前回GHQによる「農地改革」に関する指令を掲載したが、それに依拠した改革の結果を『史料集』は次のように解説している。
「寄生地主制を解体させ、農民を零細自作農民として解放した。また、これにより従来の小作争議中心の農民運動は価格・税金闘争にかわり、生活が安定・向上した小農民を中心に農村も資本主義経済に組み込まれるようになった。」

 「農地改革」に次いで、GHQは経済全般の復興のため、労働基準法が施行された翌年(1948年)の12月18日に第2次吉田内閣に対し「経済安定九原則」という指令を出している。この指令が出されるに至った経緯は次のようである。

 戦後の日本経済の復興はインフレ激化に悩まされていた。GHQは当初生産増大によりインフレを徐々に克服してゆこうとする政策であったが、1947~48年の片山哲・芦田均内閣の経済政策も十分な実効をあげえていなかった。また世界的にも、1947年3月のトルーマン=ドクトリン発表以来の冷戦のはじまり、中国革命の進展などがあり、GHQの対日占領政策は大きく転換した。特に48年初頭のロイヤル陸軍長官の演説で、日本をアメリカの援助なしに自立させ、資本主義陣営の安定した一員とすることが明確にされた。

 ロイヤル陸軍長官の演説の内容は次のようである。

ロイヤル陸軍長官演説
 「日本を全体主義の防壁へ」


1、
 日本の降伏直後闡明(せんめい=はっきりしていなかった道理や意義を明らかにすること)されたアメリカの政策の目的の背後にある考えは、将来の日本の侵略防止――非武装化による直接の防止と、再び侵略戦争の精神を発展せしめることのないような性質の政府を樹立することによる間接の防止であった。……
2、
 爾来世界の政治と経済に、国防上の諸問題と人道的考えに新たな事情が生じた。アメリカの今後の方針を決定するに当って、いまやこれらの変化を十分考慮にいれなければならない。
3、
 占領の政策面における責任を分担する陸軍省および国務省は、政治的安定の維持と将来とも自由な政局を継承せしめるために、健全にして自立的な経済がなければならぬことを知っている。アメリカは占領地域に対する救済資金に年々数億ドルの負担をいつまでも継続できず、被占領国が自国の生産と輸出品をもっておのが必要とするものに支払い得るときはじめてかかる援助を後顧の憂いなく停止しうる。
4、
 ……アメリカは日本に十分自立しうる程度に強力にして安定せると同時に、今後東亜に生ずるかも知れぬ新たな全体主義的戦争の脅威に対する妨害物の役目を果しうる自足的民主主義を確立する目的を有している。

 「日本の自立」を謳いながら「と同時に…新たな全体主義的戦争の脅威に対する妨害物の役目」を担わせようと言っている。何の事はない、要するに日本の属国化を目的としているのではないか。確かにこの時から占領国アメリカによる対日政策が大きく変わったのだった。

 このロイヤルの演説内容をふまえて、日本の経済的自立を促す具体策が1948四8年12月に第2次吉田茂内閣に出された。これが「経済安定九原則」という指令である。経費節減、徴税強化、信用拡張の制限などの引き締め、デフレ政策による通貨安定、輸出促進のための単一為替レートの設定などの九項目の指令が盛り込まれている。この指令文を掲載しておく。

経済安定九原則指令

 今回の経済復興計画がとくに目ざすところは、

(1)
 極力経費の節減をはかり、また必要であり、かつ適当なりと考えられる手段を最大限度に講じて真に総予算の均衡をはかること。
(2)
 徴税計画を促進強化し、脱税者に対する刑事訴追を迅速広範囲かつ強力に行うこと。
(3)
 信用の拡張は日本の経済復興に寄与するための計画に対するほかは厳重制限されいることを保証すること。
(4)
 賃金安定実現のため効果的な計画を立てること。
(5)
 現在の物価統制を強化し、必要の場合はその範囲を拡張すること。
(6)
 外国貿易統制事務を改善し、また現在の外国為替統制を強化し、これらの機能を日本側機関に引継いで差支えなきにいたるように意を用いること。
(7)
 とくに出来るだけ輸出を増加する見地より現在の資材割当配給制度をいっそう効果的に行うこと。
(8)
 一切の重要国産原料、および製品の増産をはかること。
(9)
 食糧集荷計画をいっそう効果的に行うこと。

 以上の計画は単一為替レートの設定を早期に実現させる途を開くためにはぜひとも実施されねばならぬものである。
         (朝日新聞1948年12月19日の記事)

 そして、この「九原則」を日本政府に遂行させるために、デトロイト銀行頭取ジョセフ=ドッジがGHQ財政顧問として1949年2月1日来日した。そのドッジ公使が1949年3月7日に内外記者団との初会見で述べた談話がドッジ声明である。

ドッジ声明

 私の信ずるところでは日本は目下厳しい経済を余儀なくされている。しかし現在とられている国内的な方針政策は、合理的でもなく現実的でもない。すなわち日本の経済は両足を地につけていず、竹馬に乗っているようなものだ。竹馬の片足は、米国の援助、他方は国内的な補助金の機構である。竹馬の足をあまり高くしすぎると転んで首を折る危険がある。今たゞちにそれをちゞめることが必要だ。つゞけて外国の援助を仰ぎ、補助金を増大し、物価を引き上げることはインフレの激化を来すのみならず、国家を自滅に導く恐れが十分にある。

         (朝日新聞 1949年3月8日の記事)

 ドッジは経済安定九原則の実施にあたり、財政・金融を焦点に具体的政策を立案した。また彼は1949年度の超均衡予算を自ら編成し、日本政府に押しつけている。

 そしてその翌年(1950年)、日本の再軍備の趨(はし)りとも言うべきマッカーサーの念頭の辞があった。

マッカーサー元帥の年頭の辞

 新しき年を迎えるにあたって、現在あらゆる目本人がひとしく不安にかられている二つの極めて重要な未解決の問題がある。その一つは中国が共産主義の支配下にはいったため全世界的なイデオロギーの闘争が日本に身近かなものとなったことであり、もう一つは対日講和会議の開催が手続にかんする各国の意見の対立から遅れていることである。
 ……この憲法の規定はたとえどのような理屈はならべようとも、相手国から仕掛けてきた攻撃にたいする自己防衛の冒しがたい権利を全然否定したものとは絶対に解釈できない。それはまさに、銃剣のために身をほろぼした国民が、銃剣によらぬ国際道義と国際正義の終局の勝利を固く信じていることを力強く示したものにほかならない。しかしながら略奪をこととする国際的な盗賊団が今日のように強欲と暴力で、人間の自由を破壊しようと地上をはいかいしているかぎり、諸君のかかげるこの高い理想も全世界から受け入れられるまでにはかなりの時間がかかるものと考えなければならない。
                     (朝日新聞)

 現在「略奪をこととする国際的な盗賊団が今日のように強欲と暴力で、人間の自由を破壊しようと地上をはいかいしている」一番悪質な国際的盗賊団はアメリカ合衆国である。後半は共産主義の恐怖で煽って憲法9条を否定する屁理屈である。同じ屁理屈を今アベコベ軽薄姑息うそつきカルト首相が得意そうに振りかざしている。

 この再軍備を示唆したマッカーサーの年頭の辞の半年後、6月25日に朝鮮戦争が始まった。マッーカサーは吉田茂首相に書簡を送り、7万5000人の警察予備隊の創設、海上警備力の増強を指示した。吉田内閣はポッダム政令で警察予備隊令を公布・施行した。

警察予備隊令

 内閣は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基き、この政令を制定する。
第一条
 この政令は、わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため警察予備隊を設け、その組織等に関し規定することを目的とする。

                  (官報)

 このようにして始まったGHQの対日占領政策の転換の行き着く先にあったのは――独占資本の再建・労働者への弾圧・再軍備……――いわゆる逆コースの道であった。  そしてこの警察予備隊が実質的な再軍備の第一歩であった。1952年には保安隊に改組され、1954年に自衛隊が発足した。

 ちなみに、私は10年ほど前に
『再軍備はどのうに行われてきたのか』

『昭和の抵抗権行使運動』
というカテゴリ名の記事で、「警察予備隊」について、今回のこの記事よりかなり詳しい記事を書いていた。参考までに紹介しておきます。
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