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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
昭和の15年戦争史(51)

戦後処理(1)

 戦後処理として、敗戦国が国家主権を獲得して新たな自立国家となることを以て戦争終了と考えるとすれば、本当に戦争は終了したのだろうか。

 前回で「昭和の15年戦争史」を終えようと思ったが、戦後処理も「昭和の15年戦争史」の継続と考えて、戦後処理を「昭和の15年戦争史」の続きとして取り上げることにした。

 前回に出てきた「各方面に異常な衝動を与え…議会をも震駭せしめた」という軍布告は「アメリカの初期対日政策」のことだろう。この政策は8月30日に連合国軍最高司令官マッカーサーが厚木飛行場に降り立ってから20日余のちに布告されている。そして、1945年9月22日に公表され、9月24日付の各新聞に全文が掲載されたという。この布告では占領政策は総てアメリカの主導によって行われることが書かれていて、日本政府には拘わる余地が全くない。これが「各方面に異常な衝動を与え…議会をも震駭せしめた」理由であろう。『史料集』にその全文が掲載されているのでそれを転載しよう。

アメリカの初期対日政策

 本文書ハ降伏後ノ日本国ニ対スル初期ノ全般的政策ニ関スル声明ナリ。本文書ハ大統領ノ承認ヲ経タルモノニシテ、連合国〔軍〕最高司令官及米国関係各省及機関ニ対シ指針トシテ配布セラレタリ。……

第一部
 究極ノ目的……

(イ)
 日本国が再ビ米国ノ脅威トナリ、又ハ世界ノ平和及安全ノ脅威トナラザルコトヲ確実ニスルコト
(ロ) 他国家ノ権利ヲ尊重シ、国際連合憲章ノ理想ト原則ニ示サレタル米国ノ目的ヲ支持スベキ平和的且責任アル政府ヲ究極ニ於テ樹立スルコト、……
第二部
 連合国ノ権限

一、軍事占領
 降伏条項ヲ実施シ、上述ノ究極目的ノ達成ヲ促進スル為日本国本土ハ軍事占領セラルベシ。右占領ハ日本国卜戦争状態ニ在ル連合国ノ利益ノ為行動スル主要連合国ノ為ノ軍事行動タルノ性格ヲ有スベシ。右ノ理由ニ由リ対日戦争ニ於テ指導的役割ヲ演ジタル他ノ諸国ノ軍隊ノ占領ヘノ参加ハ歓迎セラレ且期待セラルルモ、占領軍ハ米国ノ任命スル最高司令官ノ指揮下ニ在ルモノトス。……主要連合国ニ意見ノ不一致ヲ生ジタル場合ニ於テハ米国ノ政策ニ従フモノトス

二、日本国政府トノ関係
 天皇及日本国政府ノ権限ハ、降伏条項ヲ実施シ且日本国ノ占領及管理ノ施行ノ為樹立セラレタル政策ヲ実行スル為必要ナルー切ノ権力ヲ有スル最高司令官ニ従属スルモノト

第三部 政治

一、武装解除及非軍事化
 武装解除及非軍事化ハ軍事占領ノ主要任務ニシテ、即時且断乎トシテ実行セラルベシ。……日本国ハ陸海空軍、秘密警察組織又ハ何等ノ民間航空ヲモ保有スルコトナシ。……軍国主義及侵略ノ重要ナル推進者ハ拘禁セラレ、将来ノ処分ノ為留置セラルベシ。軍国主義及好戦的国家主義ノ積極的推進者タリシ者ハ、公職及公的又ハ重要ナル私的責任アル如何ナル地位ヨリモ排除セラルベシ。……

第四部 経済

一、経済上ノ非軍事化……
二、民主主義勢カノ助長 ……
(イ)将来ノ日本国ノ経済活動ヲ専ラ平和的目的ニ向テ指導セザル者ハ、之ヲ経済界ノ重要ナル地位ニ留メ又ハ斯ル地位ニ選任スルコヲ禁止スルコト
(ロ)日本国ノ商工業ノ大部分ヲ支配シ来リタル産業上及金融上ノ大「コンビネーション」ノ解体計画ヲ支持スベキコト

        (日本外交主要文書・年表)
(出典解説:鹿島平和研究所編。1941年から1980年までの重要外交文書を収録している)

第一部・第二部では米国最高司令官と米国の政策が絶対優越し、日本国政府は権限は一切の権力を持つ最高司令官に従属するし、アメリカの主導権のもとで占領政策を進める根本方針を明示している。

 また、第三・四部では
「密警察組織」・「治安維持法」の廃止
「政治犯釈放」・「重工業の非軍事化」
  で重工業と商船隊の制限や「労働・産業・農業における組織の発展」
「財閥解体」
などが支持されている。これらは全て大日本帝国の悪政の解体であり、歯ぎしりをするのは支配階級だけである。

 この戦後処理の基本方針の実行を渋っていた東久邇宮稔彦内閣に対して、10月4日、総司令部(GHQ)は治安維持法の廃止、政治犯の釈放と内務大臣・特高警察関係者の罷免などを指令した。翌日、東久邇宮内閣は総辞職して幣原喜重郎内閣が成立した。11日、幣原新首相がマッカーサー訪問したとき「五大改革指令」が出され、また「憲法改正」が示唆された。これが日本政府の絶対的課題になった。では、「五大改革指令」とはどのような内容だったのだろうか。これも『史料集』から転載する。

五大改革指令

一、 選挙権付与による日本婦人の解放
 政治体の一員たることに依り、日本婦人は家庭の福祉に直接役立つが如き政府に関する新しき観念を齎すべし。

二、 労働組合の結成奨励
 右は労働者を搾取と酷使より保護し、その生活水準を向上せしむるために有力なる発言を許容するが如き権威を労働組合に賦与せんが為なり。又現在行はれ居る幼年労働の弊害を矯正するに必要なる措置を講すべきこと。

三、より自由なる教育を行ふ為の諸学校の開設
 国民が事実に基く知識によりその将来の進歩を形作り、政府が国民の主人たるよりは寧ろ公僕たるが如き制度を理解することに依り利益を受くる為なり。

四、秘密検察及びその濫用に依り国民を不断の恐怖に曝し来りたるが如き諸制度の廃止
 即ち右に代り人民を圧制的専断的且不正なる手段より保護し得るが如き司法制度を確立すべきこと。

五、所得並に生産及商業上の諸手段の所有の普遍的分配を齎すが如き方法の発達に依り、独占的産業支配が改善せらるゝやう日本の経済機構を民主主義化すること。

      (『幣原喜重郎』)
(出典解説:幣原平和財団編。幣原喜重郎の伝記。1955年刊)

(1)選挙権付与による婦人の解放
(2)労働組合結成の奨励
(3)学校教育の自由化
(4)圧制的政治機構の廃止
(5)経済機構の民主化

 どれも大変結構な改革ではないか。
 これらを実施するため、10月から1948年にかけて次々と具体的指令が出されていった。
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