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2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
永遠の不服従のために(54)

糞バエ(5)

 前回の小原紘さんの論考に「去年だけで北朝鮮は2回も核実験を行い、35発のミサイルを発射していた」という指摘があったが、これに対して日本政府はどのような反応をしたのだろうか。この事について「週間金曜日1146号(2017年7月28日刊)に軍事問題に詳しい田岡俊次(たおか しゅんじ ジャーナリスト)さんが『またもや登場した「敵基地攻撃能力 技術上できないことを言う「平和ボケタカ派」』という表題で論考を掲載している。このような科学的根拠を踏まえた詳細な論考は他には見られないのではないか。これを転載しよう。

 北朝鮮の弾道ミサイルの発射実験が活発化し、その性能が顕著に高まるのに対し、自民党の安全保障調査会は次の中期防衛力整備計画(2019年~23年度)に「敵基地攻撃能力」の保有を入れるため、政府に迅速な検討を求めている。次期中期防は来年末に正式に決定するが、その約1年前から計 画が練られるから、今年中には方向が決まりそうだ。

 攻撃兵器としては護衛艦、潜水艦から発射する巡航ミサイル「トマホーク」(射程距離1650キロ)や、ステルス戦闘機F35が登載するノルウェー・米国開発の空対地ミサイル「JSM」(同300キロ)のほか、空自の戦闘攻撃機F2用に、国内開発中の超音波の空対地ミサイルも考えられている。

 日本政府は国民福祉の予算を削る一方で、北朝鮮のグアム攻撃の脅しに踊らされて、またしても軍産複合体に巨額の税金を貢ぐことを決めた。東京新聞の記事の冒頭部分の文とその購入武器の写真を転載する。「日本政府は17日に米・ワシントンで開かれた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応策として、米国から新たな高額武器を購入する方針を米側に伝えた。」
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(追記)
 今日(8月23日)の東京新聞第一面のトップ記事を紹介しておこう。『<増額傾向止らず> 防衛省5.2兆円要求へ 来年度予算 北に対応、過去最大』

 田岡さんの論考に戻ろう。
 
 だが相手の弾道ミサイルを破壊するためには、事前に目標の詳しい位置を知る必要がある。米軍の偵察衛星で北朝鮮を常時監視し、弾道ミサイルの位置がわかるように思う人も少なくないが、実際にはこれは不可能だ。偵察衛星は地球をほぼ南北方向に、1周約90分で周回し、地球は東西方向に自転するから、各地の上空を1日約1回、時速約2万7000キロで通過する。北朝鮮の上空を通るのは1日に1分間程だ。米国が運用中の画像偵察衛星は5基、レーダー偵察衛星(夜間用)は2基と見られ、日本の画像衛星とレーダー衛星各2基を合わせても11基だから、1日に計10分ないし20分程しか見張れない。

 偵察衛星は飛行場や原子力発電所など固定目標は撮影できるが、移動目標の位置を常時つかむのは無理だ。弾道ミサイルは自走発射機やトレーラーで移動し、山間部のトンネルなどに隠れ、新型はそこから出てミサイルを発射するのに約10分、とされる。

 日本独自の早期警戒衛星の保有も、自民党の安全保障調査会は求めている。これは赤道上空約3万6000キロを周回し、その高度で回ると地球の自転の速度と釣り合うから、地上からは静止しているように見える。だがこの距離は偵察衛星の約100倍だから、弾道ミサイルは見えず、発射の際に出る赤外線を感知できるだけで、攻撃目標を探す役には立たない。

ミサイルの発見は至難

 ジェットエンジン付きの大型グライダーにカメラ、レーダーなどを付けた無人偵察機「グローバルホーク」(航空自衛隊が地上機材を含み約1300億円で3機発注)は最高約2万メートルの高度を時速600キロで、約30時間飛行できる。北朝鮮とその周囲の公海上で常に3、4機を旋回させておけば弾道ミサイルも見えそうに思えるが、そのためには相当多数の偵察機が必要だし、谷間の目標は斜めからでは撮影できない。北朝鮮の真上を飛べば、旧式のソ連製対空ミサイルでも射高は3万メートルはあるから簡単に撃墜される。

 1991年の湾岸戦争では、完全な制空権を握った米空軍はイラクの弾道ミサイルを発射前に破壊するため、同国東西の発射地域2ヵ所の上空に常に8機を空中待機させ、1日平均64機を「スカッド・ハント」に出撃させた。だが、「発射された」と聞いて駆けつけ、発射機やカラのミサイルのコンテナを叩くのがせいぜいで、これを「攻撃成功」と報告していた。発射前に壊せたのはただ1回。特殊部隊を潜入させるため夜間に低空飛行していたヘリコプターが、偶然弾道ミサイル発射の炎を目撃そちらに向かったところ、付近でもう1機のミサイルが発射準備中だったのを発見。機関銃で処理したと米国で報じられた。

 敵の位置を知ることは、すべての戦闘の第一歩である。北朝鮮の弾道ミサイルの緯度、経度を常にリアルタイムで確実に把握できる手段がなければ、攻撃能力を備えても何の役にも立たない。自民党の安全保障調査会も戦争を現実的、具体的に考える能力を欠いた「平和ボケタカ派」の集団であることを「敵基地攻撃能力」保有論は示しているように思われる。

 日本政府は、北朝鮮のグアムへのミサイル攻撃にうろたえて、グアムに向かうミサイルを迎撃するために中国・四国地方に対空ミサイルPAC-3とイージス艦を配置した。これも「平和ボケタカ」的な戦略のようだ。これについては高野孟(ジャーナリスト)さんが日刊ゲンダイに『米本土に向かうミサイルを日本が打ち落とすという錯誤』という記事を掲載している。最後の一文で糞バエの権力への忖度ぶりを指摘している。これも全文転載しよう。

 北朝鮮のミサイルの問題を論じている時に、準レギュラーのコメンテーターである外交評論家の岡本行夫氏が「北のミサイルが日本の上空を飛び越えて米本土に向かうというのに、日本が(何もしないで)行ってらっしゃいと手を振って見送るわけにはいきませんから」と、同盟国としての日本がそれをはたき落とすよう努めるのは当然という趣旨のことを語っていた。

 ところが残念なことに、北朝鮮から米本土に向かう大陸間弾道弾は、日本列島はもちろん日本海の上空すら通らない。ミサイルは最短距離を飛ぶので、北朝鮮からほぼ真北に向かって中国ハルビンの東、露ウラジオストクの西の辺りを通り、北極海、カナダ・ハドソン湾の上空を通ってワシントンに到達する。これを日本海に浮かべたイージス艦で横から撃ち落とすというのは全く不可能なのである。グアムに向かうというのであれば、日本の中国・四国地方の上空を通るし、またハワイに向かうというのであれば東北地方の上空を通る。しかし今の日本の感知システムでは、発射から数分後に通過したことを後になって分かるのが精いっぱいで、せいぜいが誤って部品の一部が落ちてきた場合にそれを空中粉砕できるかどうかである。

 私は岡本さんとは3分の1世紀ほど前、彼が外務省北米局安全保障課長の時からの知り合いで、今もあちこちでご一緒することが多いので、こんなことを言うのはイヤなのだが、北朝鮮や中国の“脅威”を強調する安倍政権の立場に寄り添おうとすると、こんな初歩的な間違いを犯すことになるのだろう。

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