2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
領土領海ナショナリズム(3)

 前回参考資料として用いた「日中共同世論調査」は「言論NPO」というサイトで全文を読むことが出来ます。紹介しておきます。
『「第12回日中共同世論調査」結果』


領土領海ナショナリズムを煽るメディアへの批判

 尖閣諸島問題をめぐって領土領海ナショナリズムを煽るメディアの報道姿勢については、「両岸論 第70号」を参考書として、すでに詳しく取り上げているので省略するが、岡田さんは「両岸論 第71号」ではその一例として北方領土をめぐる報道を取り上げて、次のように批判している。

 北方領土をめぐる日ロ交渉について、TV朝日の「ニュースステーション」のキャスターが「4島が日本固有の領土であることは言うまでもないことですが」(10月4日)と説明するのを聞き唖然とした。幕末から1945年に至るロシア(ソ連)との歴史的経過を無視し「固有の領土」と断じる乱暴さ。領土ナショナリズムの助長にメディアが「貢献」している一例である。

 領土問題を含む外交問題になると、メディアは政府発表を検証することなくオウム返しに伝える。政府が掲げる旗を「国益」と無自覚に認識し、言論空間が体制翼賛化する。特に尖閣紛争では「翼賛化」が加速度的に進む。メディアは本来、テーマ(争点)設定権を持たなければならないが、「国益」が絡むと設定権を政府に握られる。設定されたテーマの正当性(例えば、大量の漁船の侵入騒ぎ)を疑わず、自縄自縛の報道を重ねている。中国と北朝鮮については、政府もメディアも「言い得」「書き得」状態。安倍政権にとっては改憲を一気に実現させるまたとない好機というべき「空気」である。

 岡田さんはこうした「排外主義的なナショナリズム」の背景はなんだろうか。」と問い、フランスの歴史学者エマニュエル・トッドの
「米国が推し進めてきたグローバル化の下での新自由主義が、経済格差と社会の階層化を加速させたことに、人々が耐えられなくなったからだ」
という説を受けて、日本における経済格差と国際的なグローバル化(均質化)の現状を次のように指摘している

 大学の教壇に立つと、貧困が学生たちの身に忍び寄っているのを実感する。授業などそっちのけで、机の上で爆睡する学生がかなりいる。夜勤アルバイト明けでほとんど寝ていないからだ。年間百万円を超える学費に加え、生活費を丸抱えしてくれる家庭などごくわずかだ。アルバイトをしないと生活できない。さらに奨学金を借りて学費に充てる学生も多い。ある1年の女子学生は「奨学金の4年後の返済額は350万円」と平然と言う。就職しても非正規雇用なら年収は200万円。いったいどうやって返済するのだろう。

 9月に神戸と鹿児島それに上海に出張した。繁華街で「コウベ・シューズ」「神戸ファッション」の店は見当たらず、世界的ブランド名を付けた店ばかりだ。鹿児島でも、全国的なチェーン店が目抜き通りを支配して、「さつまあげ」「黒豚料理」など地場の飲食店は隅に追いやられている。北から南までどこまでも同じ風景― 上海もコンビニからカフェ、カジュアル衣料店、家具量販店まで銀座と同じロゴに席巻されている。これがグローバリズムのもたらす均一化風景である。

  そして、この経済格差と均一化が排外主義的なナショナリズムを生み出したと言う。

 マネー資本主義(新自由主義)がもたらした経済格差と均一化は、排外主義的な色彩の濃いナショナリズムを世界中に生み出した。ヘイトスピーチ参加者は、非正規労働者など社会的弱者がかなりいる。普段は他者から顧みられることが少ない彼らは、国旗や旭日旗を掲げることで、「国家の大義」を背負っている幻想に浸り、自分よりさらに弱い人々に罵声を浴びせてうさ晴らしをする。相模原の障害者殺人事件の容疑者は衆院議長に「日本国の指示」を求めて犯行に及んだとされる。この事件が秋葉原通り魔事件(2008年)と通底するのは、「社会的不公正」への復讐を、国家権力にではなく弱者に向けたことにある。欧米の排外主義も「移民」や「難民」という弱者に向けられている点で同じ構造だ。

不安定な雇用と下がり続ける賃金、少子高齢化にともなう世代間矛盾と福祉への将来不安は先進国共通の現象であり、右か左かの冷戦型イデオロギーを超える。

 こうした排外主義的なナショナリズムが、改憲を目論む「アベコベ軽薄姑息うそつきカルト」政権を応援する結果になっている。しかし、岡田さんは
『この政権を支えているのは「ヘイトスピーチ」や「ネトウヨ」だけではない。多くの「善良な日本人」の意識を覆う柔らかいナショナリズム「日本ホメ」もまた安倍政治を支えているのではないか。』
と言う。

排外主義と裏表の関係にある「日本ホメ」

 ヘイトスピーチが外向きの攻撃型ナショナリズムだとすれば、内向きの柔らかいナショナリズムである。高度成長時代の「経済信仰ナショナリズム」が崩壊し、経済大国の地位を中国に脅かされる。歴史問題や領土問題で隣国から繰り返し非難される中、「日本ホメ」がかま首をもたげている。海外で活躍する日本人や「和の匠」の職人芸を取り上げ、日本を礼賛するTV番組がそれにあたる。オリンピックでの日本選手のメダルラッシュや日本人のノーベル賞受賞をほめちぎる報道もそうだ。

 「日本をほめてなにが悪い」と反論が聞こえそうだ。確かに攻撃的ではない。しかしそれは、排外主義の裏返しの表現であることに気付く。その典型が、2年前のノーベル物理学賞の報道である。多くのメディアは「日本人3人が受賞」と誤報するのである。3人のうち1人は米国籍にもかかわらず。「週刊現代」は「それに比べ、お隣韓国、中国の受賞者の少ないこと」と、勝ち誇ったように書いた。排外主義の裏返しとはこういうことだ。

 もう一つは中国人観光客による「爆買い」報道。TVリポーターは、家電量販店の便座売り場の中国人観光客をみながら「中国製はすぐ壊れるので、品質のよい日本製を土産にするそうです」。透けて見えるのは、”成金中国人”への蔑みと、優れた日本製品への「日本ホメ」である。脅威論と表裏の関係にある。

 今日(3月15日)の「こちら特報部」(東京新聞)が経産省が全室を施錠密室化している問題を取り上げている。その密室で何をやっているのか。その成果の一つが「世界が驚くニッポン!」と題する「官製日本ホメ本」である。それをデータ配信したほか、二千部を製本して各国の在日大使館に配布(その事業費は約千四百万円)したという。特報部は
『その自画自賛ぶりに、ネットなどでは「恥ずかしい」「こっちが驚いた」と不詳を買っていた」』
と報じている。また、その関西弁版もつくったという。こちらは「センス悪い」と批判が殺到し、「不適切だった」と世耕経産相が撤回している。

 御用知識人・メディア・官僚が総出で「日本ホメ」に浮かれている。呆れるね。
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