2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
領土領海ナショナリズム(2)

 支配者のナショナリズムは、事実に背を向け恣意的で根拠の無い主張を繰り広げるイデオロギー(虚偽意識)、つまり虚妄な理念の一つと言ってよいであろう。こうした知的傾向を表す用語として、一時は「反知性主義」(歴史認識の場合は「歴史修正主義」)という言葉が流行したが、今は「ポスト真実」が使われるようになっている。

「ポスト真実」という反面教師

 東京新聞に「論説委員のワールド観望」というコラムがあるが、そこに論説委員の熊倉逸男さんが書いた『「わが闘争」のポスト真実』(2月28日)という記事が私の目を引いた。「わが闘争」はこれまでドイツではタブーだった著作だが、それがドイツで出版されたこと取り上げていた(日本では早くから出版されていて、私は角川文庫の2008年版を購入している)。ご承知のように「わが闘争」は人種差別を正当化し、ユダヤ人排斥を主張する著作である。この著作の「ポスト真実」的主張を厳しく批判するため、出版に当たっては3500以上の注釈が付けられたという。熊倉さんはその注釈のいくつかを取り上げながら、次のように解説を進めている。

注釈で注意喚起

 「民族が、自然から与えられた血統に根付く存在の特徴に注目しようとしないなら、この世での存在を失うことに、文句は言えない」
との原文には、
『「ソ連への電撃侵攻失敗し軍事内的危機に陥った時、ヒトラーは「“ドイツ民族が自己保存を貫く用意がないのなら、滅びるべきだ”といった」と、自らの価値観を、ドイツ人の命よりも優先する考え方だった』
と注釈し、注意を喚起した。

「失われた血統の純血性は内なる幸福を破壊し、人間を永遠におとしめる」
の表現には、
『異民族間の混血についてのこのような主張に対し、科学者は当時から間違いと指摘していた』
と、科学的根拠がないことを指摘した。

 ヒトラーの言い分をうのみにしないよう編集し、「わが闘争」の主張が、根拠のないものだらけだったことを明らかにしている。

 ベルリンの日刊紙ターゲス・シュピーゲル(電子版)は『「わが闘争」は歴史になったが、過去にあった(ヒトラーによる)扇動に対してだけでなく、ヒトラー的価値観との戦いは常に進めていかなければならない』
指摘する。

現代の反面教師

 「根拠のない主張はヒトラーで終わったわけではない。今や、「ポスト真実」として流行語になるほど、さかんになっている。

 英国のEU離脱の是非を問うた国民投票で、離脱派は
「EUに毎週3億5千万ポンド(約476億円)を払っている」
「移民が職を奪い、社会保障費を食い物にしている。」
などの虚説を垂れ流した。

 トランプ米大統領は、選挙中にデマを連発、就任後はテロ対策にイスラム圏7カ国からの入国を禁じる大統領令に署名した。7カ国出身者によるテロは近年、起きていない、にもかかわらずである。

 根拠のない差別や憎しみを蔓延させた果てが、ホロコーストと、大戦による世界の荒廃だった。今こそ、「わが闘争」を学ぼう。ポスト真実の恐怖を、反面教師とするために。」

 さて、「両岸論 71号」を読んでみよう。

 「言論NPO」が毎年実施している日中共同世論調査によると、2016年度では中国に対して「良くない印象を持っている(どちらかというとを含む)」は91.6%で、「良い印象を持っている(どちらかというとを含む)」は8.0%だった。岡田さんはこの世論調査について、週刊誌「AERA」(10月3日号)にコメントを寄せたそうだ。このコメント対して、「2ちゃんねる」のネトウヨがかみついて、次のような罵詈雑言浴びせて炎上したという。
「気印間違いなし」
「中共の犬」
「もう日本を出て、中国にでも行けば?」
 岡田さんのコメントの中でネトウヨが一番問題にしたのが、
「中国の脅威をあおる安倍政権が、安保法制の実行を急ぐため公船侵入を政治利用した」というコメントだったという。岡田さんは
『筆者が言いたかったのは正にこの点だったから「我が意」を得たと言うべきだろう。炎上は勲章だ。』
と応じている。そして、「両岸論 71号」では
①「中国脅威論」は広く浸透しメディアはそれを助長し体制翼賛化
②日本と世界を覆う「ナショナリズム」は新自由主義の反作用
③「日本ホメ」という内向きナショナリズムが安倍政治を支える
などについて論じたいと述べ、論説を始めている。まず、「ナショナリズムとは?」という問いを立てて、次のように論じている。

 「2ちゃん」に書き込まれた彼らの情緒は、中国や韓国ないし特定の民族を敵対視して排除を求める「敵対型ナショナリズム」と言ってよいだろう。民族差別を煽る「ヘイトスピーチ」はその典型だ。英国の欧州連合(EU)離脱決定や「トランプ現象」の背景には世界を覆う排外主義情緒が横たわる。

 この情緒を「ナショナリズム」と呼ぶことには異論があるかもしれない。まずナショナリズムの定義が必要だ。哲学者のアーネスト・ゲルナーは「政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する政治的原理」と定義した。この原理が侵害されると「怒り」が生まれ、実現されれば「満足感」を抱く。これがナショナリスティックな感情である。

 「2ちゃん」の書き込みにこの定義を当てはめてみよう。
「公船侵入されて脅威になってるじゃん。対策とるのは国家主権の発動として当然の行為だろ。この記者頭おかしいんじゃないか」。
 「公船侵入=脅威」を無条件の前提として「日本人(民族的単位)なら、反対する(政治的単位)のが当然なのに、安倍政権のせいにする(原理の被侵害)」ことに「怒る」のである。これは広い意味で「ナショナリスティックな感情」と言っていいのではないか。

 10人のうち9人が「中国によくない印象」をもつ異常な数字は、「中国脅威論」がいかに広く浸透しているかを示している。10年前の小泉政権時代には、わずか35%だったとは信じられないほどだ。流れを見ると、歴史教科書問題と日本の国連安保理常任理事国入りをめぐる「反日デモ」(2005年)と、2010年の尖閣諸島(中国名 釣魚島)の中国漁船衝突事件の発生が、悪化の節目になっている。

 この後、岡田さんは領土領海ナショナリズムを助長するメディアの問題点を取り上げている(次回で)。
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