2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
「尖閣紛争」の検討(1)

(今回は「両岸論第70号」が教科書です。引用文は断りがない場合はこの論説からのものです)

 これからよく出てくる海洋法用語の意味を確認しておく。

 国連海洋法条約は領海・接続水域・排他的経済水域について次のように規定している。
第3条 領海の幅
いずれの国も、この条約の定めるところにより決定される基線から測定して12海里を超えない範囲でその領海の幅を定める権利を有する。

 そして、領海の通行権を次のように規定してる。
第17条 無害通航権
すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する。
第19条 無害通航の意味
1 通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。(以下略)

第33条 接続水域
1 治岸国は、自国の領海に接続する水域て接続水域といわれるものにおいて、次のことに必要な規制を行うことができる。
a.自国の領土又は領海内における通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令の違反を防止すること。
b.自国の領土又は領海内で行われた(a)の法令の違反を処罰すること。
2 接続水域は、領海の幅を測定するための基線から24海里を超えて拡張することができない。(以下略)

第57条 排他的経済水域の幅
排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて拡張してはならない。
第58条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
1 すべての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第87条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する。(以下略)

 以上の水域の幅をまとめると次のような図になる。
領海線

(ウィキペディアの「領海」から転載しました。)

 ウィキペディアの「尖閣諸島問題」には2008年以降の中国による尖閣諸島への接近行為数が記載されていた。次のようである。
     接続水域   領海侵犯
2008年    2         2
2009年    0         0
2010年    46         2
2011年    12         2
2012年   428        73
2013年   819       188
2014年   726        88
2015年   709        95

 2012年から極端に多くなっている。何故か。これは尖閣諸島を国有化(2012年9月11日)したことに対する対抗行為である。岡田さんによると、それ以前の中国船による尖閣諸島周辺での動きでは、例外を除けば公船が進入することはなかったという。日本の領有権を認めたわけではないが、「棚上げ」路線に沿って日本の実効支配(管轄権)を事実上認めていたのである。それが国有化以後、海警船が定期的に12海里や接続水域に入るようになり、公船接近を常態化さた。これを「尖閣諸島を力で奪おうとしている」と危機感を煽るメディアがあるが、岡田さんはこうした報道は正しくなく『中国も実効支配している「実績」を重ねるのが目的である』と言う。
(私は尖閣諸島がどのような島々で構成されているのか詳しくは知らなかった。以下に魚釣島以外の島名も出てくるので、ここで尖閣諸島の地図を掲載しておく。(外務省のホームページから転載)
尖閣諸島

 以下、一部省略や再編成をした部分があるが、「海峡両岸論 第70号」から、直接引用する。

 中国の尖閣政策は国有化を境に大きく変化した。この4年でどう変わったのかを整理する。

 中国海警局の公船2隻と中国漁船6隻が8月5日(2016年)、久場島沖の12カイリ内に、初めて同時に入ったのだ。杉山晋輔外務事務次官は程永華駐日大使を呼んで抗議したが、周辺海域には連日300隻近い中国漁船が押し寄せた。さらに7日には計13隻の公船が接続水域に入り、国有化直後の2012年9月18日の12隻を上回る過去最多になった。今度は岸田文雄外相が9日、程大使に「日中関係を巡る状況は著しく悪化している」と抗議する事態に。接近した公船数は8日をピークに、25日まで続いた。

 いったい何が起きたのだろう。中国公船は、尖閣海域では通常3隻で航行する。だから今回が尋常でないのは明らかだ。メディアは北京の意図について「領有権主張に向けた既成事実化が狙い」(官邸筋)「南シナ海紛争の仲裁判断を巡る日本の対応に反発」(外務省筋)などという観測報道をした。メディアの報道内容は
(1)
 仲裁裁定に対する日本への反発
(2)
中国内政との関係
(3)
 尖閣奪取の試み
 の三つにざっと分類できる。(1)は官邸・外務省筋の見方と同様「仲裁裁判所の判決に対し、日本が判決受け入れを強調したことへの反発」「南沙問題から関心をそらす狙い」とする見立て。(2)は「共産党指導部が重要事項を協議する『北戴河会議』の開催時期と重なり、習近平総書記が対日強硬姿勢を打ち出し求心力を高めようとした」という見方である。

 (1)(2)の見立ては、何となく「据わり」がよく、それらしくみえるのだが、状況証拠に基づく憶測にすぎず、明確な根拠があるわけではない。では(3)の「尖閣奪取」はどうか。中国漁船には「100人以上の海上民兵が乗り込んでいた」と“特ダネ”風に伝えたある新聞は「尖閣奪取」の意図を言外にほのめかした。さらに全国紙のWEBサイト(29日)は、8月11日に起きたギリシャ貨物船と中国漁船の衝突事故は「偽装」で、海保が行方不明者の捜索に気をとられている隙に、人民解放軍が島を奪うというフィクション仕立ての長い物語を掲載した。「軍事専門」を自称する、妄想記者の「白日夢」である。

 本題に入る。中国は1971年末から尖閣の領有権を主張しているが、日中の指導者は「棚上げ」で暗黙の了解に達したとする。2010年9月7日起きた中国漁船と巡視船衝突事件では、当時の菅直人・民主党政権は船長を釈放せず、日本の司法手続きで処理したことを「棚上げ合意違反」と批判。さらに12年9月11日の国有化でも、「暗黙の了解」を東京が破ったとして、中国公船を12カイリに入れる報復措置をとった。

 習近平は2013年7月末、政治局学習会で領有権紛争処理の原則として

 領有権はわが方にある

 争いは棚上げ

 共同開発
 の三点を挙げた。尖閣でも南シナ海でもこれが北京の基本政策であり、棚上げと共同開発こそが紛争処理の原則である。

 日本側は「棚上げ」を認めていないが、実は中国側は国有化後も「棚上げ」を主張している。「棚上げ」の対象は「現状」だが、国有化以降「現状は変化した」というのが中国側の認識だ。新たな現状とは、日中がともに実効支配している「現状」であり、その最終目標は尖閣周辺海域の「共同開発」にある。

 日中両国は2014年11月、安部首相訪中の際「4項目合意文書」を交わした。その第3項が尖閣問題に関する項目で、「対話を通じて不測の事態を避ける」とうたった。これは北京からみれば「新現状に基づく新たな棚上げ合意」になる。

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