2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
2007年3月15日(木)
右翼イデオローグの理論レヴェル(5)

(7)国家や国民、愛国心という観念を共有し、次世代に継承するには強制が不可欠です。例えば、歴史的名場面を子供たちに「読みなさい」 「考えなさい」と教える。観念は自然任せでは継承できないからです。

 たまたま今朝の東京新聞の「発言」(読者投稿欄)にヤギ先生と正反対の主張が掲載されていた。

 価値観の強制 教育に反する

 愛国心教育は不要という意見があります。私は愛国心の是非と、それを公教育で強制的に行うことの是非は別問題と思うのです。

 私は愛国心教育に反対ですが、愛国心は持っています。日本の文化伝統を愛しています。それは私が自由意思で持つ感情であって教え込まれたものではありません。何であれ、一つの価値観だけを子どもに強いることは、教育本来の目的に反します。

 強権的な愛国心教育は、軍国主義に向かう流れであることは歴史が証明しています。学校式典における君が代歌唱についても、歌そのものの良否よりも、それを権力によって強制されることが問題なのです。そのような観点で考えたいと思います。

ごく真っ当な歴史認識や感性の持ち主の平均的な意見だろう。ヤギ先生のご高説はこのような一市民(Aさんと呼びます。)の意見とどうして正反対なものになるのだろうか。いままでの検討でもう明らかでしょう。

 Aさんは愛「国」心を論じているのに対して、ヤギ先生は愛「国家」心を論じている。だからAさんの愛「国」心は「自由意思で持つ感情であって教え込まれたもの」ではない。ヤギ先生の愛「国家」心は、国家の本質を隠蔽して、国家の幻想的な<協同社会性>を共同観念として強制しなければ国民に共有化されない。

 ヤギ先生の教育とは「幻想的は共同観念」を強制的に植えつけることなのだ。近代日本の学校教育は強迫教育として始まった。ヤギ先生の教育論は100年前からよみがえってきたゾンビの教育論だ。

『我輩は素より強迫法を賛成する者にして、全国の男女生れて何歳に至れば必ず学に就く可し、学に就かざるを得ずと強ひて之に迫るは、今日の日本に於て甚だ緊要なりと信ず……強迫教育法の如き必ず政府の権威に由て始て行はる可きのみ』(福沢諭吉「学問之独立」)

 そしてさらにヤギ先生は強迫教育の要は偽装自慢歴史教育であると考え「新しい歴史教科書をつくる会」の会長として偽装自慢歴史教科書をでっち上げた。もちろんその教科書も100年前からよみがえったゾンビ教科書である。

『日本歴史ハ本邦国体ノ大要ヲ知ラシメテ国民タルノ志操ヲ養フヲ以テ要旨トス』(1891年「小学校教則大綱」)

 日本は天皇によって建国されたことを強調し、天皇に忠義を尽くした武将・軍人・政治家などのエピソード集のような教科書で愛「国家」心を植えつけようというわけだ。

(8)若者たちがネットで表現する排外的な激しいナショナリズムは、愛国心の美しい作法を知らないためです。

 「盗人猛々しい」とはこういうことを言う。自慢史観と排外的な他国蔑視は同じメダルのうらおもてだ。扇動しておいて知らぬ顔の半兵衛を決め込もうっていうわけだな。どたい愛「国家」心に「美しい作法」なんかあるものか。愛「国家」心を存分にふるってご活躍の政治家・官僚・財界人の醜悪ぶりは新聞紙上に絶え間がない。

(10)愛国心を否定し、同胞意識が希薄だったが故に横田めぐみさんは拉致され、帰ってこない。戦争を避けるためにも、法治国家としてきちんと守りきれる憲法に作り替えるべきです。

 この最後の段落は支離滅裂だ。牽強付会に過ぎるから支離滅裂になる。こんな愚論の補強のためにも拉致問題を利用しようとはあきれるぜ。拉致問題は、隣国を敵視するばかりで真っ当な外交努力を怠ってきた歴代政府の無能さのツケだ。

今日の話題2:『外交の本随』を参照してください。)

 最後に「法治国家としてきちんと守りきれる憲法」というのもワケの分からない文章だな。「守りきれる」の目的語は何だ? 文脈からは「横田めぐみさん」となるが? あるいは「戦争を避けるためにも」とあるから「自国」かな? どちらにしても変な文章だ。その理由は「法治国家」にある。「法治国家」とは<共同体-内-国家>に関する概念であり、拉致問題や戦争は<共同体-即-国家>に関わる事項である。その2種類の国家概念ゴッチャにして論じているから、意味の通らない文章となる。

 教訓。
 科学的国家論を欠いた国家論・政治論は支離滅裂となる。

(追記 2016年12月23日)  「右翼イデオローグの理論レヴェル」は今回の(5)が最終回だったがその八日後(2007年3月23日)に『今日の話題:学者先生の浅薄な国家意識』を書いていたことを思い出した。この記事での学者先生は小林節・慶応大学教授(憲法学)で、右翼イデオローグではなくリベラルな学者です。この記事を書いた当時は小林さんについて詳しいことは知らなかったが、つい最近、戦争法案に真っ向から反対して、著名になっている。安倍政権打倒を掲げて政治団体「国民怒りの声」を設立して、その団体から比例代表で参院選に出馬したが惜しくも落選した。尊敬すべき学者ですが、論理的におかしい発言があったので、批判したのが上記の記事でした。一応紹介しておきます。
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