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今日の話題

2007年1月23日(火)
本当のホコリはホコリの中から生まれる。

 久しぶりに見事なエッセイに出会った。自立の地点から思考をめぐらし、しかも平易な言葉で本質をグイッと掴んでいる。読んで心地よい。ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思った。特に偏頗なナショナリズムに取り込まれている人に読んでもらいたいのだが、このホームページには決してやってこないよな。

 昨日の東京新聞夕刊に掲載されたエッセイで、筆者は作家・詩人の多和田葉子さん。現在ベルリン在住とのこと。

 わたしが子供だった頃は学校で「日本人としての誇りを持て」などと言われたことは一度もなかった。国家主義的なものの再来を許さない先生が多かったせいもあるが、1970年代には保守的な教師でさえ、「日本人としての誇り」などというものを生徒に押しつける必要はなかったのかもしれない。


 海外にどんどん輸出されていく工業製品に刻み込まれた「メイド・イン・ジャパン」の「ジャパン」が国をまとめていた。どんどん物を作って売れば、みんなある程度平等に富を得られると信じることのできた間は、それがまるで一種の宗 教のようにみんなを慰め、不満をなだめていた。授業中、先生の言うことをちゃんと聞いて、家でもよく勉強すれば、一流会社に入って豊かな生活を送り、シアワセになれる。そう思い込ませれば、中学生もまとめやすかったのだろう。

 今の子供たちを「まじめにやっていれば誰でも幸せになれる」と言ってだますことはもう不可能だ。大学を出ても職はないかもしれないし、就職しても会社が倒産するかもしれない。それでも自分の夢や生き甲斐があればそのために勉強するだろうが、お金だけで子供たちを釣ってきた社会は、自分のところにはお金は決してまわってこないのだということを嗅ぎ付けてしまった青少年を今度はどんな神話を使ってだまそうとしているのか。

 ドイツでは、失業率の高い地区ほどネオナチになってしまう青少年が多い。職が見つかる見込みがないために自分に自信をなくしている青少年に、「ドイツ人であることに誇りを持て」と吹き込めば、「そうか自分はドイツ人だというだけで価値があるのか」と生まれて初めて褒められたような気持ちになる。しかし、ドイツ人であるということそのものに価値があるはずがない。根拠のない自信を保つには、ドイツ人ではない人たちを憎み、暴力をふるうしかない。また、高揚感を感じさせてくれる旗や儀式や歌などを使った演出も必要になってくる。

 失業者が多いのは政治が悪いのであって、仕事の見つからない人が仕事のある人より価値が低いわけではない。そのことを教えてあげる代わりに、「(たとえ職がなくても)日本人なんだから誇りを持て」などと若い人に吹き込むのは、悪趣味なだけでなく大変危険である。根拠のない誇りを成り立たせるためには、必ず生け贄が必要となるからだ。

 もしもドイツの学校で国旗を揚げて国歌を歌うことが義務づけられたら、大きな反対運動が起こるだろう。それは、ドイツが第二次世界大戦で日本と似た過ちを犯し、たくさんの人たちを殺してしまったので、それ以来、国家を讃えることに大変批判的であるためである。

 それに比べると、アメリカなどは、レストランでもスーパーでも国旗を見かける。小学校の教室にも国旗が立てかけてあって、子供に国家に忠実であることを教えている。しかしそれは、アメリカが移民の国であることを自らうたい、国家は個人の自由を保障するものだという前提とセットで星条旗を子供に押しつけているのだから、日本がその国旗の部分だけ真似したら大変なことになる。

 ヨーロッパと比べると、アメリカでは、朝から晩まで働いても充分な教育も医療も受けられない人でさえ、あまり政府を批判しないようだ。それがうらやましくて、日本も小さい時から国旗を揚げて、君が代を歌わせたらあんな風になるんじゃないかと期待している政治家が日本にはいるのかもしれない。

 子供たちが日本人としての誇りを持てるようにすることが大切だというが、知らないものを誇れるはずはない。日本を知るためには、日本の歴史をハタキで叩かなければいけない。叩けばホコリが出る。ホコリに涙を流し、咳き込みながら、これからどうすればいいのか、新しいコンセプトを考える。それが本当にホコリを持つことの第-歩なのではないかと思う。

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