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今日の話題

2006年12月20日(水)
朝日新聞問題:こころある記者は苦しんでいる。

 『朝日新聞の欺瞞』で朝日新聞の怪しい状況を、教育基本法改悪に対する記事を根拠に取り上げました。私の指摘が正しかったことを、藤原新也さんのホームページの「Sinya Talk」というコーナーの11月2日の記事が教えてくれました。

 藤原さんはトーク「朝日の様子がどうもおかしい」をめぐって行われたメール交換を公開しています。相手の方は朝日新聞の一記者です。その記者のメールから、その記者が社内の組織的な腐食状況の中で苦渋しているさまが伺えます。以下にそのやり取りを全文紹介しておきます。

悪臭漂う根腐れた保身オヤジどもが世の中を廃墟にしつつある



「朝日の様子がどうもおかしい」のトークでいろいろな意見が寄せられた。私の真意は水面下のネット社会において果断に切り込む(多くは独りよがりの過剰なものが多いが)言論が見られるのに反し、ここのところ表のジャーナリズムに腰引け現象が起きており、このことを憂うとともに橋頭堡としての「活字媒体」の再生を願うというところにある。

 昨今、上からの管理システムが世の中を根腐れ状態に追い込んでいる。

 ここのところ世間を騒がせている「いじめ問題」にしても現場で働く教職のお目付役である「教育委員会」という不思議な団体が教育に根腐れを起こす大きな病根となっている。

 またこれは1年ほど前聞いて驚いたのだが私もたまに出るNHKの「新日曜美術館」においても、とつぜん外部の識者からなる評議委員制度が出来、現場の記者やディレクターの考えや企画の審査を通さねばならないというくだらないことが起こっている。

 こういった傾向はさまざまなところに出ていて件の朝日新聞においても外部の識者からなる紙面審議委員なるものが存在し、何年か前に私も依頼されたが(1ヶ月に1度出るだけで年間500万、そして黒塗りでの送り迎えという好条件)、紙面作りは現場が行うべきものであり、上から管理するという体制の強化はジャーナリズムというものをダメにするという考えでお断りした。

 こういった話が来るたびに自分も世の中の管理に回る側の年齢になったのかといやな思いをするのだが、しかし思うに、逆にそのことをいとわず、いやなことであっても、管理する側に入って改革をするという方法もあるのではないかと最近思い始めたのが、ちょっと前、大学の外部評議委員なるものの依頼があった時のことである。

 くだらないことに多分例の文部科学省あたりの案かも知れぬが、外部に評議委員を置き、その査定によって予算の配分を行うという制度が最近出来たらしい。これはあきらかに配金による管理システムの強化であり、今世の中では水面下においてこういったさまざまな投網がかけられているのである。

 私はその評議委員(こちらの方はボランティアに近いものだが)を受けることにした。異物が入ることによって少しでも根腐れを改善できるかも知れないという思いがあるからだ。

 朝日に関するトークに寄せられた現場からの貴重な意見があったので、上記の管理化に突き進む世の中の具体例として、このトークに転載させていただくことにした。


前略
 いつも貴著や当HPを読むのを楽しみにしています。「朝日の様子がどうもおかしい」の感想を・・・

 私も朝日新聞で記者として働いています。朝日がおかしい、というのは、社内の心ある多くの記者が感じていることではないでしょうか。異常なほどの自己規制、減点主義に、必然性があるとは思えない「社内改革」の数々。20年ほど前に入社したころの空気と、今の空気はまったく別物です。新聞記者が書くことで喜びを感じるのは、おかしい、と思ったことを追求する。おもしろい、と感じたことにとびつく、世の中の空気の変化を敏感に感じ取る・・・そういったことでしょう。けれども、こうした前向きな行動の結果、訂正でも出そうものならよってたかって袋だたきにされるのが現状です。政治家や大企業、そんなところから抗議が寄せられそうな記事も、徹底的に薄められます。「訴えられたらどうするんだ」という口癖の幹部はひとりやふたりじゃありません。結局、上昇志向のある記者は、世の中の空気より、社内の空気を真っ先に感じ取るために嗅覚を働かせ、ろくな記事も書けなくなります。

 先日の、田中・前長野県知事に関する「虚偽メモ」事件をきっかけに、「解体的出直し」のかけ声のもと、「ジャーナリスト学校」ができ、組織改革が進んでいます。いまの幹部に、本当の意味の解体的出直しなんて無理でしょう。解体に向けてつき進んでいるという方が正しい状況です。現場でものを感じ取ることが何よりも大切な新聞記者にジャーナリスト学校と称して空論ばかり詰め込んでも逆効果なのは、少し考えればわかることだと思います。

 かくいう私も、このまま社内の「体制側」で記者たちを締め付ける側に居続けるのか、一記者としてせめてもの抵抗を続けるのか、それとも、もう会社に別れを告げるのか、日々考えています。こんな空気を一掃しないとだめだ、と声をあげ、朝日新聞を、もっと心ある新聞へと立て直そう、という選択肢も当然ありますが、そんなことをしても無駄だという気持ちになるし、そこまでこの新聞に愛着を感じない、という、もはやそんな状況です。

 社内には、朝日新聞を愛している人はまだまだたくさんいますが、そういう人たちはだいたいが、今の空気がおかしいということにも気づいていないでしょう。

上記のメールに対する返事
 ここ数年、朝日の人に会うたびに妙に萎縮した雰囲気を感じ、私が朝日に関わりはじめたのは35年前くらいからですが、あの自由奔放な雰囲気のことを思うと、何かこれが同じ会社だったのかという驚きの感すらあります。数年前、紙面審議委員なるものを依頼され、私は紙面作りは現場の人間の意思によってやるべきであり、トップダウンのようなものがジャーナリズムにはびこることはよろしくないという理由でお断りしました。教育委員会にしてもそうですが上から管理して行く体制がここのところ世の中を覆っています。朝日もその例に漏れないということでしょう。こういった傾向には私ももの書きの端くれとして異議を申し立てなくてはならいと思っております。ネットにおける言論がどの程度功を奏すかは別として、今回の貴方のメールをトークに反映させたいと考えておりますが、いかがでしょう。匿名でのメールであり、トークにおいても当然そのようになりますが、かりに匿名であってもこの部分はカットしてほしいというところがあれば、受諾か否かのご意思とともにお教えください。
 藤原新也

私のメールに対する返事

 メールお読みしました。このような連絡をいただくとは思っていませんでしたので驚きました。最初のメールは匿名で失礼いたしました。メールの引用の件は、匿名であればそのまま使っていただいていっこうにかまいません。HPのトークを読んで、反射的に書いたものですから、私の本音そのものです。

 メールをいただいて、すぐにでも返事したかったのですが、職場にいる間は社内のLAN回線経由になってしまい、こうした文面が覗かれるのもいやですから、自宅に戻って書いています。というのも、1年ほど前でしょうか、社内の議論の様子や、限られた人間しか見ることのできない資料が外部に漏れて、雑誌に掲載されることが相次ぎ(そんなことはもっと前からありましたが)「必要とあらば社員のメールやHPの閲覧履歴を調査することもあり得る」と幹部が宣言しました。情報が命の職場にあって、その情報を検閲するという行為に、社内のあちこちからため息が漏れていました。度量が小さくなったものです。そのころからでしょうか、危機管理、という言葉がことあるごとに持ち出されます。いまや、編集幹部の最重要課題は危機管理なのです。新聞記者に危機管理?? 喜劇的ですらあります。

今日、仕事を終えて帰る道すがら、ふと浮かんだことがあります。「種が絶滅する時はDNAの多様性が失われる」ということです。この会社の10年前を思い出して、目に見えて変わったことは何か。それは、異物がなくなったことです。10年前の社内には、異物がごろごろしていました。普段から何をしているのか全くわからないけれど、得意分野に関してはだれも真似できない知識のある記者。会社に住み着いた浮浪者風情。上司に食ってかかるのが生き甲斐のようなひと。そんな「異物」が、見事に一掃されてしまいました。後輩記者とメシを食った時、こんな話をすることがあります。ただ、こうした話をまともに受け止めようとする若い記者は10人にひとりぐらいです。

 いま、仕事をしながら感じる違和感は相当なものです。先日のメールにも書きましたが、これからどうするのか、と自分に問うた時、悲しいかな、この会社を建て直そう、という気持ちにはなかなかなれません。手遅れかもしれない、とさえ思うからです。これは、私のひとりよがりな感想であって、実態はそんなにひどくないのかもしれません。しかし、朝日新聞を外側から見ている、他の企業のひとたちなどと話をしていても、朝日新聞、朝日新聞記者への違和感を聞く機会が本当に多くなっているのです。


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