2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《米国の属国・日本》(20)

日本劣化を推し進めた新自由主義(5):反知性主義(2)


 今回は前回の続きで、「庶民2」が組織化されてきた経緯を取り上げる。

 白井さんは小泉政権時代のキーワード「ポピュリスム」が表徴している政治手法が、「アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト」政権の政治手法「排外主義的ナショナリズム」へと変わっていった経緯を追っている。

 時計の針を10年ほど前、小泉純一郎首相の時代に戻してみると、当時のキーワードは「ポピュリスム」でした。この言葉はもともと、1980年代の英国サッチャー政権を分析する際に脚光を浴びたものです。ひとことで言えば、それは「イメージの政治」ということになります。

 先ほども言及したように、サッチャー政権は、新自由主義政策に大きく舵を切った政権でした。当時のイギリスにおいて強い政治的影響力を持っていた炭鉱労働者の労働組合を潰すことで、労働運動を弱体化させることに成功するといったように、労働者階級に対して打撃を与える政策を次々にやりました。ところが、それらの政策が労働者階級の利益になるというようなイメージ操作に成功したところが、サッチャーの手腕の特徴だったと思います。彼女の政策は、一見したところ大衆の利害に寄り添っているかのような外観を得たのです。このようなイメージ操作を指して、「ポピュリズム」と言われたわけです。

 この言葉が再び、2000年代の日本においてクローズアップされることになりました。つまり小泉氏の政治手法がポピュリズムであると。そして、この頃から日本の右傾化ということも指摘されるようになってきました。しかし小泉時代の右傾化は、今日と比較すると、まだ激しいものではなく、現在のように排外主義の風潮がはびこるような状況ではありませんでした。いまは、ポピュリズムに代わり、悪質な排外主義的ナショナリズムが台頭している状況であり、事態ははるかに悪化しています。

 さて、ポピュリズムにおいて重要なのは、その両義性です。ポピュリズムという言葉は、大概は悪い意味で使われますが、多くの場合それは、大衆迎合主義だという批判にすぎず、不十分です。政治家が大衆の欲するところをよく聞き、それを実現するのが民主政治ですから、それは正しいことではないかという考え方も当然成り立つからです。

 では、ポピュリズム的であると評された小泉さんが大衆の声を聞いたというのは、いかなる意味においてなのかということを考えなければなりません。小泉政権はネオリベ転換 ―中野氏の言葉でいえば、新右派転換― を決定づけた政権です。「自民党をぶっ壊す」という名文句がありましたが、それは、それまでの利益誘導の構造を壊すということでした。これに対して、当時の日本人は拍手喝采をしたわけです。

 なぜ、拍手喝采をしたのか。そこには、長年の利益誘導政治の弊害に対する不満があったと考えられます。利益誘導政治とは、個別利害の政治です。つまり、人それぞれ自分の利害は異なる。勤めている会社が違えば、産業政策の効果も異なる。それぞれの産業団体が、政治献金などを通して、自分のところに利益誘導をするというのが典型的な構造です。そういうことをいつまでもやっているから、産業の合理化が進まないのであって、グローバル競争の中で日本が没落していくのだという不満が、長期経済停滞の期間を通じて渦巻くようになっていました。小泉政権の唱えた「構造改革」は、利益誘導政治の構造を壊してくれるのであり、それによって経済成長を取り戻せるに違いない、という期待を掛けられたわけです。

 そして、小泉氏が利益誘導政治を破壊した後、自民党は短命政権が続き、民主党に政権を奪われますが、2012年12月に政権に返り咲き、現在にまで続く長期政権が、安倍氏の政権(第二次)です。一見したところ、安倍政権は、首相のキャラクターもあいまって、ナショナリズムに全面的に依拠しているように見えますが、もう一本の柱は、中野氏の分析でも示されたように、新自由主義、ネオリベラリズムです。本来は、この二本の柱は、矛盾する関係にある。なぜなら、ナショナリズムは国民の一体性を強調する原理である一方で、新自由主義は国民統合を破壊するものだからです。

 慶應義塾大学教授の片出杜秀氏は、安倍政治は右翼保守主義ではないと指摘しています。片山さんによれば、安倍政治の本質は「安上がり」ということに尽きる。ナショナリズムを唱えているので、一見、日本人はみなしっかりまとまらなければいけないという主張に見えるけれども、福祉の充実にはまったく関心がなさそうなので、実質的な意味で国民を統合する気はない。福祉制度の整備にかける財源も用意しないので、そこで、ナショナリズムの安酒を飲ませてごまかしている。福祉よりもシンボル操作の方がはるかにカネがかからないので、「安上がり」だというわけです。

 この見方をとると、政権の方針は、とにかく「安上がり」にすることであり、ナショナリスティックなこともそのために吹聴しているということになります。

 私はこの小泉政権と安倍政権の本質の分析に全面的に同意する。特に「アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト」政権の政治手法を「安上がり」と喝破した片出教授の分析は見事だと思う。

 最初の出典がよく分からないのだが、いまいろんなサイトで取り上げられている記事がある。私が推定した最初の出典サイトで紹介しよう。『自民党と安倍の実績 売国有罪~売国自民党の不都合な真実?』という記事である。その記事を転載しておく。

【自民党と安倍の実績】

GDP下落率--------------歴代総理中第1位
自殺者数----------------歴代総理中第1位
失業率増加--------------歴代総理中第1位
倒産件数----------------歴代総理中第1位
自己破産者数------------歴代総理中第1位
生活保護申請者数--------歴代総理中第1位
税収減------------------歴代総理中第1位
赤字国債増加率----------歴代総理中第1位
国債格下げ--------------歴代総理中第1位
不良債権増--------------歴代総理中第1位
国民資産損失------------歴代総理中第1位
地価下落率--------------歴代総理中第1位
株価下落率--------------歴代総理中第1位
医療費自己負担率--------歴代総理中第1位
年金給付下げ率----------歴代総理中第1位
年金保険料未納額--------歴代総理中第1位
年金住宅金融焦げ付き額--歴代総理中第1位
犯罪増加率--------------歴代総理中第1位
貧困率------------------ワースト4国に入賞
民間の平均給与----------7年連続ダウン
出生率------------------日本史上最低
犯罪検挙率--------------戦後最低
所得格差----------------戦後最悪
高校生就職内定率--------戦後最悪

 これらの評定が正しいかどうか、確認する資料を私は持っていないので検証出来ない。しかし、仮に評定が、例えば「歴代総理中第2位」といったように、いくらか違う事項があったとしても、「安上がり」政治手法の結果を表すデータとしてとしての意義は変わらないと思う。

 「アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト」政権の「安上がり」政策がこのような惨憺たる結果を生んでいる一方で、防衛費には過去最大の5兆円超の予算請求をしている。その請求の中には軍産複合体から法外な値段で買い取る不要な兵器が並んでいる。ミサイル防衛関連経費(1872億円)・新型3000トン級潜水艦(一隻760億円)・F35戦闘機(6機946円)・垂直離着陸輸送機オスプレイ(4機393億円)。 ちなみに、ミサイルについては日刊ゲンダイが『露呈 ミサイル防衛は1兆5787億円の役立たず』という記事(2016年9月13日付)を書いている。

 また、ばらまき外交では、これも日刊ゲンダイの記事(2015年5月25日付)によると26兆円にのぼるという(『どれほどの成果が? 安倍首相がバラマキ外交で払った26兆円』)。今年に入ってからもばらまき外交は続いている。


 では、利益誘導政治の構造を小泉氏が壊した後の世界に、安倍氏は何を持ち込もうとしているのか。安倍氏が自分の政策を語る際の言い回しでとても印象的だったのは、規制を緩和して、日本を「世界で一番企業が活躍しやすい国」にしていきます、と表明したことです。この言葉は、まさに新自由主義者宣言とでも呼ぶべきものですが、その意味をよく考える必要があります。

 新自由主義の本質とは何か。先に説明しましたが、それは、資本の運動に対する規制のないフラットな空間(=自由競争の空間)を、場合によっては暴力を用いてもつくり出していくことでした。しかし、実はこの説明でも十分ではありません。

 資本のための開かれた空間では、本来は自由な競争が成り立って、努力や創意工夫に優れた者が成功し、努力や才覚が足りなかったものは公正な競争ののち敗れていく。そのような意味では、スポーツ競技みたいなものとして、市場における競争はイメージされています。たとえ、その前提に暴力があるにせよ、その本質がフェアな競争ならば問題はないのではないか、と。ところが、現実はそんなものではありません。力づくで開かれた資本の空間に入ってくるのは、独占資本です。巨大独占資本が空間を占拠するのです。

 例えば、イラクのフセイン政権が倒されたとき、アメリカは、イラク国家によって統制されていたマーケットを外へと開こうとしました。そこへ最初に参入するのは、当然のごとく、イラク戦争を後押しした資本であり、彼らが利権をまずがっちり押さえる。彼らはイラク戦争の背後で様々な工作をし、金も出し、散々コストを払った。ですから、彼らにしてみれば、「公正な競争」なんてとんでもない、ということになります。

 安倍さんとしては、企業一般を指して先の言葉を述べたのでしょうが、現実には企業一般のためになる政策など存在しません。ある特定の個別資本のためになる政策が存在するだけです。つまり、すべての企業がすべからく公正に競争できる場所などは、この世の中に存在しえないのです。

 規制緩和については色々な記事で取り上げてきているが、その本質を詳しく書いた記事として『「財源=税」問題を考える。(3):各種審議会の仕組み』
を紹介しておこう。
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