2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《米国の属国・日本》(17)

日本劣化を推し進めた新自由主義(2):「右傾化」(1)


 白井さんは「右傾化」問題については次の2冊の本の説を紹介する形で話を進めている。
中北浩爾(一橋大教授)著『自民党政治の変容』
中野晃一(上智大教授)著『右傾化する日本政治』

 このお二人の「右傾化」についての分析はどちらも見事である。「アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト」政権のような低俗な政権に高い支持率を与えている人たちの心性と知性の姿形がよく見えるようになった。以下、全文をそのまま転載しよう。
 では、まずは中北教授説の解説から。

草の根保守の組織化

 まず中北氏の説によりますと、90年代あたりからの急速な保守化は、まさに安倍晋三氏がアクティブに動いて作った部分があるとされます。実際、草の根保守を組織化したと、安倍氏自身が語っています。つまり、これまでも微妙に国粋主義的な人たちというのは、都会でも田舎でも、一定数存在していましたが、そういう人たちは、何となく疎外感を味わってきたわけです。日の丸や君が代が好きだと言ったりすれば、変わり者扱いされてしまうようなところもあった。

 また、この層には「左翼的なもの」に対する拭いがたい違和があります。「日教組が偏向教育をやって歴史を歪曲し、若い人たちの心を毒していった。マスコミも同罪だ」といったように。ここには、マスコミや言論界といったエリートの世界、つまり、学校エリートに対する反発、反知性主義的な要素も混ざっています。また、後ほど説明しますが、ヤンキー的なものとも親和性があります。こういう人たちの中にくすぶっている感情を、安倍氏は巧妙に組織化して、それに形を与えたというわけです。

 中北氏は、もう一つ指摘しています。自民党は民主党に政権を取られて下野したために、民主党との相違点をできるだけ明確にしないと次の選挙での見通しは開けない、と考えた。そこで彼らが何をやったかというと、民主党政権は左翼の政権であり、それに対してわれわれは保守である、と唱えたのです。何を保守しているのかということは、いまだにさっぱりわからないのですが。

 ともかく民主党を左翼視して、それとの違いを際立たせるためには、いわゆる右翼的なアジェンダを次々並べなければいけないことになります。憲法のことから歴史認識まで、右翼的な課題を率先して取り上げ、それに惹かれた支持者が増えてくる。安倍氏の場合は、心底そういう考え方を持っているのでしょうが、ひとたび票がついてくると、組織としても、もうやめるにやめられなくなります。つまり右翼純化路線をとったために、より激しく右傾化することになっていく。以上が、右傾化に関する中北説ですが、確かに一理あると考えられるものです。


 白井さんはこのような「右傾化」のターニングポイントは「北朝鮮による拉致」問題だったと指摘し、次のように解説している。
 政治状況的に見ると、世論が右傾斜するターニングポイントとなったのは、北朝鮮による拉致問題でした。これが表面化した当時、私は大学生でしたが、相当に驚きました。拉致の噂は以前からありましたが「まさか」という気持ちもありました。なぜなら、北朝鮮という国家にとって、あのような犯罪行為をあえてやることによるメリットがまったく見えないからです。

 とにもかくにも、2002年に小泉純一郎首相が訪朝して交渉に入りました。北朝鮮側は拉致被害者は13人いることを認めましたが、死亡したとされた被害者たちの死亡経緯も到底納得できるものではなく、また、まだ認めていない拉致被害者も確実にいると思われ、このことは日本国民に衝撃を与えました。北朝鮮は何てひどいことをするんだ、とんでもない国であるという世論が爆発します。

 安倍晋三という政治家が2006年に首相の座を射止めた背景の一つには、この拉致問題があると私は考えます。逆に言えば、この件を通じて安倍さんが英雄視されたことによって、大きな禍根が残されているとも言えます。

 これは、実は55年体制の時代とも深く関わってくる話です。つまり、それまでの政治家がだらしがなかった、ということです。被害者たちの家族は、自分の家族は拉致されたらしい、何とかしてください、といろいろな状況証拠から確信を抱いて政治家に働きかけていました。しかし、たいがいの政治家は、拉致問題があまりにも厄介な問題であるために、逃げたのです。自民党の主流派は適当にごまかそうとしましたし、社会党に至っては門前払いでした。なぜなら社会党と朝鮮労働党は友党関係にあったため、朝鮮労働党が支配する立派な国である北朝鮮がそんな非道なことをするわけがない、という論理です。当然、政治家に対する拉致被害者家族の不信感は強まりました。

 その中で一番話を聞いてくれたのが、安倍さんに代表されるような自民党の右派系議員だった。こうして、一見したところ、安倍さん的な勢力はこの問題に対して誠実に立ち向かったんだ、という外観ができたわけです。しかし、それが本当に誠実な動機によるものであったのかが、ほかならぬ拉致被害者家族によって、その後問われていくことになります。

 拉致被害者家族が結成した「家族会」の幹部だった方に、蓮池透氏がいます。透さんは家族会の活動を続けるうちに、後述する理由から、現在は家族会や安倍氏に対する強烈な批判者の一人になっています。

 彼自身、拉致をめぐって噴き出した右派的な雰囲気に一時期は感染して、「憲法九条が悪い。憲法九条のようなおかしな条文があって日本は手足を縛られた国だからああいう事件を起こされてしまったんだ、それを防ぐためには憲法を改正しなくてはいけないのだ」といった右派が言いそうなことを右派政治家と一緒になって主張していました。

 しかし、あるときから彼は違和感を持つようになります。彼の弟・薫さんは北朝鮮から帰国して、そのまま日本に残ったわけですが、薫さんに対する日本社会の様々な扱いに直面したときに、何かがおかしいことに気づきました。20年以上ぶりに帰国して、生計を立てる手段のない薫さんの生活を守るために、国が支援法をつくります。一定期間、生活保護のような形で支給を受け、その後は地元の新潟県柏崎市職員として臨時の職を得ることになりました。これに対して、一部の世論が生活保護バッシングと同じロジックで、不満を噴出させ、すごい数の嫌がらせの手紙、電話、FAXメールが寄せられ、ひどい目に遭ったというのです。

 透さんは、これまで多くの国民が家族会を応援してくれていたと思っていたのに、突然手のひらを返したように批判を始めた人がここまで多いことに驚きます。そして自分たちを応援してくれた国民の中には、拉致被害者の救済を心から願っていたのではなく、北朝鮮を攻撃することである種のカタルシスを得るために拉致問題というトピックに飛びついているにすぎなかった、自称「愛国者」がかなりの割合で存在していたのだ、ということに思い至ります。今日の右傾化には、まさにこうした自称「愛国者」たちの心理的メカニズムが動員されている、と私は思います。

 中野教授説の解説は次回に紹介する。
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