2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《米国の属国・日本》(7)

経済領域での対米従属(3):年次改革要望書からTPPへ


 これまで、日本の「二重の法体系」を在日米軍関係で牽引しているのが毎年行なわれている「日米合同委員会」であることに度々触れてきたが、経済面での対米従属を牽引しているのが前回の最後に出てきた「年次改革要望書」である。もう一つ、政府の政治政策の根本を指示しているのが「アーミテージ・ナイ・レポート」である。

 アーミテージ・ナイ・レポートはこれまでに2000年・2007年・2012年と三回出されている。私は『《『羽仁五郎の大予言』を読む》(100):終末論の時代(36)』で、山本太郎さんが「第三次アーミテージ・ナイ・レポート」を用いて、政府の対米従属ぶりを厳しく追及したことを取り上げている。

 年次改革要望書は正式には「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」と言い、両国の経済発展のために相手国の規制や制度の問題点についてまとめた文書である。1994年以来毎年日米両政府間で交換されていたが、2009年に民主党の鳩山内閣によて廃止されている。しかしその後、次のような日米による会合がもたれるようになっている(ウィキペディア「年次改革要望書」から引用する)。

 民主党鳩山由紀夫内閣の時代に、「日米規制改革委員会」が廃止され年次改革要望書の交換も事実上停止した。しかしその後もアメリカは、駐日アメリカ合衆国大使館サイトにおいて、「日米経済調和対話」と題し産業のいくつかの分野について『米国政府は、実行可能な範囲において、両国のシステム、規制アプローチ、その他の措置や政策の調和に向け、この共通の目標を推進する形で日本と緊密に協働することを期待する。』とする文章を掲載していた。

 2011年3月に日本側では外務省サイトにおいて、貿易の円滑化、ビジネス環境や個別案件、共通の関心を有する地域の課題等について、日本とアメリカ両国が協力し取り組むための、「日米経済調和対話」事務レベル会合の開催を発表した。

 「日米経済調和対話」は「要望書」の米国側関心事項をほぼ踏襲しているという。

 鳩山首相は辺野古問題でアメリカの意向に逆らったために失脚させられているが、この年次改革要望書の廃止もその理由の一つなのではないだろうか。なぜなら、年次改革要望書はアメリカからの一方的な要求書だったのだから。白井さんはこの年次改革要望書について次のように解説している。

 年次改革要望書とは、日米が両国の経済的な交流をより深めるために、それを阻害する不合理な法律や習慣などをお互いに指摘しあって、親密な経済関係をもっと深めていきましょうというものです。これだけを聞くとまことに結構なものに思われるかもしれませんが、しかし、どう運用されたかを見れば、それは建前であって、実際はアメリカからの日本に対するほとんど一方通行的な要求です。

 アメリカの経済的苦境の一因は、対日貿易赤字でした。改革の要求は、アメリカ側が貿易不均衡の理由を、自国の産業の欠点のために日本製品との競争に勝てない、つまり自業自得であるとせず、日本の市場が閉鎖的であるからだ、と主張するための手段として機能しました。そこから、多国籍資本が日本市場に入っていくための規制緩和の要求が出てきます。

 年次改革要望書とか、構造改革協議、金融ビッグバン、金融資本の移動の自由化といった一連の改革は、軌を一にしていることがわかります。いずれの現象も、グローバル資本が何のしばりも受けず動き回れる状態をつくり出そうとするものです。この流れが、今日のTPPにまでつながっていくというのは非情にわかりやすい話だと言えます。

 アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト政権は、2012年の衆議院選挙の公約に「TPP不参加」を掲げていた。ところが第三次アーミテージ・ナイ・レポートの「提言の3、TPP交渉参加」を突きつけられて、公約を堂々と破って、TPP交渉参加を忠実に実行している。経済領域での対米従属の最たるものが、このTPP交渉参加である。こうした経済領域での対米従属の行き着く先を、白井さんは次のように論じている。

 こうしたことが最終的にどこに帰結するかといえば、これまで社会が万人の共有物として保持してきた直接的な生活基盤を食い物にしようとする資本の運動が、いよいよ顕著になってくるということです。後に論じますが、国民皆保険制度を壊そうという動きなどがその典型です。資本の運動は、その本性上行き過ぎるものだから規制する必要がある、と考えるのが真っ当な発想だと思いますが、「永続敗戦レジーム」によって支配された日本は真逆の方向に迎合し、それを促進するような政策に向かって邁進している状況です。政治権力と経済権力が、一丸となって、これを後押ししているのです。

 こう考えると、抵抗すべき対象はアメリカ国家だけではなくなってきます。アメリカ国家が促進する政策の背後には多国籍企業があります。ですからTPPに関しても、アメリカ国内でも相当に強い反対が存在します。大企業を儲けさせるだけで、雇用の不安定化など、大衆への搾取がより一層進むだけではないか、という批判です。したがって、今後大事になってくるのは、いかにして反グローバル資本の国際的連帯をつくるのかということになるでしょう。

 TPPについてはその詳細をご存じの方が多いとおもうが、どんな弊害があるのか、その問題点を列挙しておこう(『サルでもわかるTPP』から拝借しました)。

〇国民皆保険制度がなくなってしまうかも。盲腸の手術だけで200万円、それが払えない貧乏人は死ぬような社会がやって来る!?

〇日本の食料自給率は39%から13%に下がる。近いうちに必ず世界的な食料危機が起こるから、突然食料輸入が途絶えて餓死者が出るようなことになるかも。

〇遺伝子組換え食品が蔓延し、そうでない食品を選ぶ自由すら奪われちゃう。

〇牛肉の月齢制限や添加物など食の安全基準が緩くなって、健康への悪影響が心配。

〇低賃金労働者が外国から入ってくるから、日本人の給料はますます下がる。職を奪われて失業も増えるよ。そのうち外国まで出稼ぎに行かなきゃならなくなるかも。

〇デフレがますます加速するよ。今まで日本国内で回っていたお金がどんどん海外へ流出しちゃうよ。景気はますます悪くなり、日本はどんどん貧しくなるよ。

〇そして何よりも問題なこと……国民を守るために、国民の代表が決めた法律や制度が、アメリカ企業の都合によって、いくらでも変更してしまえるようになる。国民の主権が奪われちゃうよ。民主主義の崩壊だよ。

〇と、いうことはだ……もしも仮に、脱原発運動の成果として、日本で国民投票が行われ「日本はすべての原発を廃炉にし、永遠に原発の新設はしない」と決めたとしよう。でも、もしも日本の原発で儲けてるアメリカの企業が「そんな取り決めはけしからん! わが社の利益に反するじゃないか!」と言ってきたら、そちらの言い分の方が優先されてしまう(もしくは巨額の賠償金を支払わされる)ということ。つまり、どんなにがんばって市民運動をしたって、あるいは政治家がまともな政治をしようとしたって、なんの意味もなくなってしまうということだ。

 終わりの2項目は多くの論者が一番懸念しているISD(Investor State Dispute)条項の事である。これについてはより詳しく復習しておきたい。『TPPに隠されたアメリカの卑劣な手口 日本経済は植民地化される』から引用する。

 日本語では「投資家対国家紛争解決条項」と訳されている。韓国では「POISON(毒素)条項」と呼ばれ、米韓FTAの最大の問題点と言われている。この内容は「アメリカの投資家(企業、個人)が進出先の韓国で不当な扱いを受け、当初期待した利益が上がらなかったと判断すれば、韓国政府を訴えて、当初見込まれた利益を賠償させることができる」という条項である。

 この条項は、1994年にアメリカ、カナダ、メキシコ三国間で締結されたNAFTA(北米自由貿易協定)で46件も発動されており、このうちアメリカ政府が訴えられたのはわずか15件で、敗訴はゼロ。逆にアメリカ企業がカナダとメキシコの両政府を訴えたケースは36件もあり、アメリカ企業が賠償金を得たのは6件、請求棄却はわずか6件に過ぎず、アメリカ企業が敗訴することはありえない。また、企業間で和解するようなことがあっても、アメリカ企業が事実上、勝訴する内容が多いと言われている。

 とくにNAFTAで有名なケースがある。アメリカの廃棄物処理会社が、カナダで処理した廃棄物を、アメリカ国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府が、環境保全の観点からカナダの法規に従って、アメリカへの廃棄物輸出を一定期間禁止した。これに対してアメリカの廃棄物処理業者は、ISD条項を盾にとって、カナダ政府を提訴し、その結果、カナダ政府が823万ドルの賠償金を支払うことになったというケースである。

 このISD条項は、提訴する側から見ると、極めて利用しやすくなっていて、日本がTPPに参加すれば、保護主義的政策、社会福祉的政策(例えば、国民皆保険、年金などの政府系機関、公共団体が行う福祉事業など)が多い日本の法規が、アメリカの投資に損害を与えていると言って、日本政府が頻繁に提訴されるであろう。このときに訴訟を裁く裁判所は、世界銀行の傘下にある国際投資紛争解決センターである。1946年に設立された世界銀行の総裁は、当初から今日までアメリカ人であり、その人物が任命する裁判員が、ISD条項違反の可否を決定するのであるから、日本側に公平な判決が下ることは到底期待できない。とくに、このISD条項を頻繁に使って、アメリカは日本の法体系と社会基盤を崩壊させるであろう。

 アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト政権はこのようなとんでもない協定を受け入れようとしているのだ。誠に無知にして無恥と言うほかない。

(以上で「経済領域での対米従属」を終わります。次回からは「軍事面での対米従属」がテーマです。)
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