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《米国の属国・日本》(5)

経済領域での対米従属(1):レーガノミックスの功罪


 第三章の表題は「対米従属の諸相(二)」となっている。そして、この章の目的を次のように述べてる。
「対米従属が自己目的化した時代における経済領域での対米従属について、簡潔に分析します。それによって、経済現象が政治からまったく独立などしていないことが理解できるはずです。そこから、政治における対米従属の本丸を見ていきます。政治権力はその本性上暴力にかかわります。つまり、軍事における対米従属に焦点を当てなければなりません。」

 白井さんは「経済領域での対米従属」について、まず、「マネー敗戦」からTPPに至る流れに着目する。…と、ここで早くも「?」。「マネー敗戦」という言葉に初めて出会った。まずこの言葉の意味から学習しよう。

 白井さんは「マネー敗戦」の説明を次のように初めている。
「マネー敗戦とは、アメリカのレーガン政権によるレーガノミクス政策をきっかけとして起こったものでした。」

 ここで思い出したことがある。レーガノミクスなら『「ミニ経済学史(20)」:新しい古典派の時代(3):フリードマン(2)』で取り上げた。そこからレーガノミクスについて解説している部分を再掲載しよう。

1980年代初頭にレーガンはフリードマンの提言を忠実に実行したという。その政策の結果インフレはある程度は収まったのに、その後、レーガンはソ連との対抗のために大軍拡を行い、財政支出を際限なく膨らませて全てを元の木阿弥としてしまった。教科書④は
「結局振り返ってみれば、フリードマンの言う通りに貫徹できたことと言えば、富裕層中心の減税と、福祉・医療・教育予算の大幅削減と、労働組合攻撃ぐらい」
と、手厳しい。ちなみに、「富裕層中心の減税」という項目が入っているが、フリードマンは累進課税反対論者である。累進課税は「税負担能力を基礎においた応能負担原則」によるものであり、私は公平な税制だと考えている。(『「財源=税」問題を考える』を参照してください。)

 次いで、レーガンが行った政策の詳しい内容を知りたくて、『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』から関連部分を引用した。

 レーガンは中米やカリブ諸国に対して非道な行動を取っただけではない。自国の労働者階級や貧困層も踏みつけにした。軍隊の多くの部分を占め、緊急事態に真っ先に犠牲になるのは彼らである。しかし、〈現在の危機に関する委員会(CPD)〉のメンバーで公職に就いている人間のうち、50人以上がその事実を「良いこと」とみなしていた。

 1980年の選挙の直後、メルビン・レアード元国務長官はレーガンに対して「国防費を大幅に増やすことは、アメリカにとって最もあってはならないことだ」と警告を発している。レーガンはこの助言を聞くどころか、正反対のことをした。「アメリカの軍事力は弱体化しており、このままではソ連の攻撃に対抗できない」という作り話を根拠に、国防費増額を強く訴えたのだ。「今われわれは、真珠湾後の日々よりも大きな危険の中にいる。アメリカの軍隊はこのままでは無力で、この国をまったく守ることができない」とも言った。

 レーガンの脅しは功を奏した。国防費は、1985年にはなんと、1980年に比べ51パーセント増となったのである。それだけの費用を捻出するため、彼は自らの裁量で動かせる内政関連の政府支出を30パーセントも削減した。700億ドルもの大金を内政から軍事へと振り向けることに成功したわけだ。

 ハワード・M・メッツェンバウム上院議員は、行政管理予算局局長のデイヴィッド・ストックマンの予算削減手腕の見事さを称賛したが、同時にストックマンという人間に関し「冷酷で、非人道的で、不公正」とも言った。1983年には、48万人もの人が、児童扶養世帯扶助制度(AFDC)の支援を受けられる資格を失っている。また、給付金を減らされた人も29万9000人にのぼった。レーガンはさらに議会を促して、120億ドルだったフードスタンプ(食糧配給券)の予算を20億ドル減らし、35億ドルだった学校給食の予算も10億ドル減らした。その他、メディケイド(低所得者向け医療費補助制度)、小児栄養、住宅補助、光熱費援助などの予算も削減し、都市支援の予算はほとんど半分まで減らした。レーガンは、こうして貧しい人間に厳しくする一方で、所得税の最高税率は引き下げた。70パーセントだった最高税率は、彼が大統領を退任するころには28パーセントになっていた。

 新兵器の開発、既存兵器の改良は積極的に進められた。費用が非常に高く、大幅に遅れていたMXミサイルの開発なども進んだ。これは、位置の特定を困難にし、ソ連の先制攻撃による破壊を避けるため、ループ状の地下坑道を移動する配備方式も検討されたミサイルである(訳注 のちの《ピースメーカー》ミサイルだが、結局、移動配備方式は採用されなかった)。レーガンは、ソ連の経済が停滞していることを知っており、おそらく追随することは難しいだろうと読んでいた。

 核兵器に向ける予算は飛躍的に増加した。1981年には、いわゆる「対ソ封じ込め政策」の提唱者であるジョージ・ケナンが、レーガン政権が無分別な核兵器の増強を続けていることを批判してこう発言している。
「われわれはこれまで、次々に武器を増やしてきた。ミサイルを次々に作り、破壊力をどこまでも高めてきた。やむを得ずそうしてきたのだ。催眠術にかかったように、半ば無意識に。夢の中にいる人のように。海に向かって行進するレミング(管理人注:集団自殺をする鼠の一種)のように」。

 レーガンが行なった愚かな政策は、なんと、今アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト政権がそっくり受け継いでいるではないか。ちなみにオリバー・ストーンはレーガンに対して
「レーガンは、歴代大統領の中でも、おそらく最も知的好奇心の乏しい人物であった。」
と、手厳しい人物評価をしている。その評価も安倍に当てはまる。『《沖縄に学ぶ》(43)』で、「安倍さんを表現するとき、私は、二つの『ムチ』に集約できると思うのです。ひとつはignorantの無知、もうひとつはshamelessの無恥です。」という安倍の恩師(加藤節名誉教授)による厳しい安倍批判を紹介した。ついでなので、レーガンを扱っている章の見出しから、アベコベ軽薄姑息うそつきオカルト政権がやっていることを彷彿とさせるような項目を紹介しておこう。


 「想像を絶する」、レーガン大統領の知的レベル

 レーガン名物、「ほら話」

 大統領の無知・無関心につけ込む者たちの暗躍

 レーガン外交は「魔女の煮物」

 さまざまな思惑が交じり合い、何ができあがるのか誰にもわからない

 「人間の残虐さに鈍感な」アメリカ帝国

 「冷酷で、非人道的で、不公正な」国内政策

 児童扶養世帯扶助制度の改悪、メディケイドなどの予算削減
(管理人注:メディケイド=公的医療保険制度)

 停止していた核開発計画を再開

 さて、このレーガノミクスについて、白井さんは次のように解説している。

 当時のアメリカは「双子の赤字」と呼ばれる、貿易収支と経常収支の二重の赤字を抱えており、このままでは経済破綻しかねないと言われるほどの状況でした。その中でも、日米間での貿易不均衡、日本側の大幅な黒字が問題視されていました。これを解決する策として提示された経済政策がレーガノミクスでした。ちなみに「アベノミクス」の名前もここからとられています。

 レーガノミクスの面白いところは、国家が財政赤字に陥っているとき、普通なら増税を考えるところを、減税すべきだとしたところです。レーガン大統領は、減税すればするほど税収は増えるんだと、逆説的なことを言い出したわけです。

 レーガン大統領はイデオロギー色の強い人でもありました。反共産主義的な考え方から高負担高福祉の国家はソ連的であるとし、アメリカはアメリカらしくまったく違う考え方でいくべきだと主張します。そこで出てきたのが、税率を低くすれば低くするほどみんな一生懸命働くようになるので、かえって税収が増える、という魔法のような考えです。実際、この考えは当時「ブードゥー・エコノミー」と呼ばれ、眉唾ものであると見なされていました。この場合のブードゥーとは、「怪しい呪文を唱えているだけで意味がわからない」という意味です。

 レーガン政権は、具体的には、富裕層への減税を行ないました。というのは、そもそも貧困層への税率は低いため、富裕層に対する累進課税を緩和するほうが影響は大きいからです。

 では、レーガノミクスの結果、アメリカ経済は復活したのか。その答えは単純には言えません。短期的には、まさに「ブードゥー」だったと言えます。税率を下げたところで、生産性が上がったとはあまり言えず、税収もそれほど増えず、赤字は拡大していきました。とはいうものの、中期的にはアメリカに世界中のマネーが流れ込む仕組みをつくり、同国の覇権を延命させたと言えます。レーガン政権は、今日にまで続く世界的な新自由主義の流れを大いに促進することで、「偉大なアメリカ」を観念的に回復させたのです。

 しかし、長期的には、いわゆる経済のカジノ化をもたらし、それは2008年のリーマン・ショックでついに矛盾を露にします。明らかになった矛盾は、本質的にはいまも解決されてはいません。

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