2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(61)

未来へ向かって(8):沖縄が描く靑写真(4)


《特例型沖縄州》

  自民党の道州制推進本部が進めている道州制は、当初は随分とマスコミが取り上げていた。自民党政権下で内閣官房に設置された道州制ビジョン懇談会は2008年に「2018年までに道州制に完全移行」と提言していて、現実味を帯びていたが、最近はまるで立ち消えたように見聞きしなくなった。推進本部は現在も議論を進めているようだが、全国町村会が強く反対しているほか、党内にも慎重論があり、国会への法案提出に向けた手続きは進んでいない。つまり、全く話題になっていないが、政策はまだ生きている。

 道州制について復習しておく。
 道州制とは、都道府県を廃し、新たに10前後の州や道を置き、そこに国の権限を大幅に移譲して、国は外交、防衛、年金など「国しかできない仕事」に集中するという仕組みだ。

 さて、ビジョン懇談会の座長が描く道州制の区割り図で、沖縄は九州州の一部にされていた。政府のビジョン懇談会の関連組織である道州制協議会のメンバーだった太田守明会長は
「平成の琉球処分になる恐れがある」
「独立国だった歴史がある沖縄は共同体意識が強い。海を隔てた九州と一つになれば、九州州政府の下で埋没し、基地問題は国と直接交渉できず、進展が一層難しくなる」
と危惧し、沖縄独自の懇談会結成を思い立った。2007年夏のこと、琉球大学の仲地(なかち)博教授(行政学)を訪ね、「懇話会の座長を務めてほしい」と直接頼み込んでいる。

 仲地さんを座長とする沖縄の懇話会の委員15人は、経済界・識者・県議・労働界・自治体首長ら幅広い層でつくる「オール沖縄」と言えるメンバーだった。全国各地で道州制が研究されたが、民間有志で県民世論の結集を目指す団体は前例がなかった。保革、労使の対立を超えた多様なメンバーだったため、仲地さんは当初、二の足を踏んだが、「結論が出なくてもいい。議論の様子を残すだけでも意義がある」と思って引き受けたそうだ。

 沖縄の懇話会は、中央主導の動きとは逆に、住民主権を追求した自治権拡大を目指した。2年間24回にわたる会合を重ね、09年9月24日、仲井眞弘多(なかいまひろかず)知事(当時)に提言した。結論は「特例型沖縄単独州」である。

 内容は、他の道州よりも高い次元の自治権と独自の仕組みを持つ「特例」を国は沖縄に認める一方、他の道州と同程度に財源を移譲し保障する、というものだ。
 沖縄州政府は州議会、州行政府、州裁判所で構成し、国と対等の関係を保つ。米軍人・軍属への課税権も有する。全国に先駆けた先行モデルとして沖縄州を設立する。また特例として、沿岸・国境警備や漁業資源の管理・利用、海底資源探査や利用などの権限・財源の移譲を求めている。さらに、沖縄州は「日本とアジアの懸け橋」などを目指す。米軍基地の返還は、沖縄の民意を代表する地方政府として「今よりも強力に推進可能」とうたう。

 この提言を受け、仲井眞知事は自民党の意見聴取で「単独州」を明言した。沖縄県内では「特例型沖縄単独州」の実現に向け「県議会議員経験者の会」が現在も活動を続けている。

《連邦・国家連合》

 沖縄の日本復帰から2年後の1974年、中央集権国・日本の民主化を射程に入れて「復帰」を強烈に批判する本が出版された。米イリノイ大教授で宮古島市出身の平恒次(たいらこうじ)著『日本国改造試論』。その批判の原点を平さんは「琉球が本来は独立国であるという認識から出発すべきだった」と強調している。そして、平さんは琉球の歴史をこう総括している。
「明治体制下の沖縄は『県』とはいっても、明らかに植民地でしかなかった。……1952年、最悪の戦災地沖縄は、日本政府から何の慰謝も補償もないまま、"頭越し"に講和条約第三条によって、ばっさりと国外に切り捨てられた。……民主主義の原理からすれば、そこには道義的に納得のいく何ものをも発見できない。……琉球人は声高く『復帰』を否定した上で、新時代の日本と琉球を考え直さなければならなかった。」

ちなみに、講和条約第三条の条文は次の通りである。
「日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。」
孀婦岩(そうふがん)について(「百科事典マイペディア」より)
「別名ロッツ・ワイフ。伊豆諸島鳥島の南方約75kmにある無人の黒色尖岩(せんがん)。小笠原諸島復帰までは,南方諸島中日本の行政権内の最南地であった。東京都八丈支庁に属する。」


 平さんは、独自の民族としての琉球人が日本国家と対等合併し、連邦国家をつくることを主張する。新琉球国、新アイヌモシリ、在日朝鮮・韓国人でつくる新朝鮮国、そして日本でつくる連邦こそが、民主主義の原則に沿う日本の姿だと訴えた。

 28年後の2002年。琉球大学教授の島袋(しまぶくろ)純氏は具体的な連邦案を提起した。同案は三段階で自治権を拡大し、最終的にはEU(欧州連合)をモデルにした国家連合へと発展するものであり、次のような構想を描いている。

第一段階
 琉球諸島内に広域連合を設け、沖縄自治の基本法制定県民会議を発足させ県案を作成する。
第二段階
 この基本法を基に住民投票を実施する。旧琉球政府・立法院の権限を取り戻した琉球諸島政府を設置し、道州制の先駆けとして日本国憲法内での最大の自治を目指す。国の出先機関はすべて新政府に移管する。
 沖縄が望まない憲法改定があった場合、第三段階に進む。
第三段階
 独立して独自の憲法を作り、日本と対等な主権国家の連合体をつくる。立法・行政・司法の三権を備える機関をそれぞれ設置、財政は連合予算の1%(現在の予算規模からの推定約9千億円超)を沖縄に一括移転、沖縄は課税権も持つ。

 中国やASEAN(東南アジア諸国連合)などと東アジア連合も目指す。国防は、日米と安全保障条約を結び、日米地位協定の抜本見直しを要求する。それに応じない場合、条約破棄を通告する。近い将来に同条約を平和友好条約に締結し直し、非武装地帯を宣言、国連アジア本部を設置し平和外交で攻勢をかける。

《独立(主権回復こそ「沖縄の解放」)》

 2014年11月の沖縄県知事選、12月の衆院選沖縄選挙区すべてで名護市辺野古への新基地建設に反対する候補者が当選した。それにもかかわらず、日本政府は建設推進を強行しようとしている。県民が激しく反発するさなかの12月20日と21日、琉球民族独立総合研究学会のシンポジウムが沖縄国際大学で開かれた。両日とも150人を超える聴衆が詰めかけ、会場は熱気に包まれた。

 「しまくとぅば、琉球の歴史、沖縄戦のことを家庭でどんどん話していこう」。そんな意見や質問が相次ぎ、2日とも予定終了時間を30分以上オーバーした。

 独立学会は2013年5月15日に設立された。当初は約100人だった会員は267人まで膨らんだ。20代前半から80代まで、多様な職業の人々が真剣な議論を重ねている。本島北部・中部・南部、宮古、八重山、西日本、東日本の地域研究部会のほか、独立実現の過程や経済、法制度、歴史などを扱う20のテーマ部会からなる。各部会は2ヵ月に1度のペースで会合を開催しているという。米国、ブラジルなど海外のウチナーンチュにも会員がいる。

 共同代表の友知政樹(ともちまさき)沖縄国際大教授は「これまでいろんな人が独立論を唱えてきたが、同じ目標の下、一緒に顔を合わせて意見を出し合うことで議論が深まっている」と話す。独立を掲げる政党の発足も目指す。

 独立学会が描く沖縄の青写真は次のようである。

 自由、平等、平和の理念に基づく「琉球連邦共和国」で、主権回復こそが琉球の解放につながる。奄美、沖縄、宮古、八重山の各諸島が州となり、対等な関係で琉球国に参加する。各島々と郷土のアイデンティティーが琉球人の土台であり、各地の自己決定権を重視する。琉球の首府だけでなく、各州が議会、政府、裁判所を持ち、憲法を制定、独自の法や税、社会保障の制度を確立し、その下に市町村を置く。
 安全保障については「軍隊の存在は攻撃の標的になる」として非武装中立を保ち、東アジアの平和を生む国際機関の設置も目指す。国連だけでなく、太平洋諸島フォーラムなど世界の国際機構に加盟し、国々との友好関係を強化する。米軍や自衛隊の基地撤去のための条約を日米と締結する。
 経済の自立については、琉球が経済主権を持てばその可能性が広がる。現状は「琉球側に政策策定や実施過程における決定権がない植民地経済だ。政府主導の開発行政は国への依存度を深めた」と指摘する。米軍基地撤去による跡利用で雇用・経済効果は「何十倍にもなる」とし、発展著しいアジアとの貿易、アジア人観光客の誘致などで経済自立を目指す。

 大きな課題の一つは、独立の考え方を県民に浸透させることだ。共同代表の桃原一彦(とうばるかずひこ)沖縄国際大准教授は「基地問題をめぐる差別状況や沖縄の歴史、ザル経済など、まずは沖縄の現状をきちんと認識するための言葉を持ち、可視化、意識化することだ。そんな言葉を発信していきたい」と語った。

 独立までの具体的シナリオも今後の課題だ。2015年度からは国連へ会員を派遣し、琉球の自己決定権確立を訴える活動を強化する。
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