2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(57)

未来へ向かって(4):先住民族問題


 2007年9月13日、国際連合総会で「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された。投票結果は賛成143ヶ国、反対4ヶ国、棄権11ヶ国だった。反対した国はオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカ合衆国。むべなるかな、これらの国はかつて先住民族に対するジェノサイドを行ってきており、現在も相当な数の先住民族が生存している。日本は賛成票を投じている。そして翌年2008年6月6日の衆参両院の本会議で、アイヌ人を先住民族と認め、地位向上などに向け総合的な施策に取り組むことを政府に求める決議を全会一致で採択している。政府も衆参本会議で、「アイヌ人は先住民族」との認識を初めて表明した。

 では、日本政府は琉球人に対してはどのような認識を持っているのか。

 国連は2008年に、琉球民族を国内法下で先住民族と公式に認め、文化遺産や伝統生活様式を保護・促進するよう勧告していた。その後も、09年にはユネスコ(国連教育科学文化機関)が沖縄固有の民族性を認め、歴史、文化、伝統、琉球語の保護を求めた。こうした独自性を日本政府が認めないことに、その都度「懸念」を表している。沖縄への[差別]を国連に訴えてきた「琉球弧の先住民会」の当真継清(とうましせい)さんは、日本政府を次のように批判し反省を促した。
「琉球には1879年に日本に併合された歴史、独特の文化や言語が存在する。琉球・沖縄人意識も強い。米軍基地集中の構造や、基地をめぐる制度の結果として差別が存在し、それが琉球・沖縄人の意識のさらなる喚起にもつながっている。日本政府はその事実を無視している。国連人種差別撤廃委員会の委員から『もっと真面目に』と注文された。情けない。不誠実の証左だ」

 2010年3月9日、国連人種差別撤廃委員会は沖縄について踏み込んだ見解を採択した。
「沖縄への米軍基地の不均衡な集中は現代的な形の人種差別だ。沖縄の入々が被っている根強い差別に懸念を表明する。」
 そして、日本政府に対し、沖縄の人々の権利保護・促進や差別監視のために、沖縄の代表者と幅広く協議するよう勧告した。

 12年には、米軍普天間飛行場の辺野古への「移設」や東村高江(ひがしそんたかえ)の米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設について、「沖縄の人々を関与させるための明確な措置が取られていない」として「懸念」を表明した。その上で人権侵害問題の観点から、計画の現状や地元住民の権利を守る具体策について説明を求める異例の質問状を日本政府に送った。

 こうした国連からの働き掛けを、日本政府は"門前払い"にしてきた。政府が示した基本姿勢は次にようである。
『沖縄県に居住する人あるいは沖縄県の出身者は「日本民族」なので、人種差別撤廃条約の「対象とならない」。沖縄の人々は「社会通念上、日本民族と異なる生物学的または文化的諸特徴を共有している人々であるとは考えられていない。』

 辺野古への基地「移設」や高江のヘリパッド建設についても沖縄差別の存在を否定し、沖縄の居住者・出身者は「日本国民としての権利をすべて等しく保障されている」という主張を繰り返している。

 国連は2014年7月24日に人権委員会が、8月29日には人種差別撤廃委員会が、琉球・沖縄人は先住民族だとして「権利の保護」を勧告している。この時の国連関係者の発言や、それに対する日本政府の対応が詳しく書かれているので、直接引用する。

 2014年8月21日、スイス・ジュネーブ市の国連人権高等弁務官事務所。国連人種差別撤廃委員会による日本審査2日目の会議が開かれた。外務省総合外交政策局審議官の河野章大使ら日本政府代表は、初日に委員から投げられた質問に答弁した。内容は初日の答弁の繰り返しが目立つ。開始から1時間半、18人の委員のひとりが満を持して発言の口火を切った。

「沖縄に先住民の存在を認めないのは、歴史に対し、正しい姿勢ではない」
中国出身のヨングアン・ファン氏だ。日本政府代表が、沖縄の人々はもともと日本人だから先住民とは言えず、人種差別撤廃条約の対象ではない―との趣旨の発言を繰り返したことにかみついた。

 ファン氏は、琉球王国時代に中国の明や清と長い間、深い関係にあり、中国に先祖を持つ入々が「2万人以上住んでいる」として、こう指摘した。
「琉球諸島は1879年に日本によって併合され、沖縄県が設置された。併合後、日本政府は同化政策の下、住民の改名を進め、日本本土から沖縄への移民も促した」
 最後は
「地元の人たちの主張を取り入れ、沖縄の人たち、特に先住民の人たちの当然の権利保護をお願いしたい」
と締めくくった。

 これに日本政府代表は
「沖縄の居住者、出身者は何人も自己の文化を共有し、自己の宗教を信仰・実践し、自己の言語を使う権利は否定されていない」
と同じ答弁を反復し、歴史認識への言及を避けた。

 前日の20日、審査初日。アナスタジア・クリックリー委員(アイルランド出身)は、
「琉球人の伝統的な土地、資源への権利を認めて保障し、彼らに関する政策策定、特に米軍基地問題については初期から地元住民の参加が大切だ。」
と強い口調で求めた。

 日本報告の分析担当者、アンワー・ケマル委員(パキスタン出身)は
「琉球の人たちが自らをどう考え、定義付けているかも重要だ。地元の土地活用に関わる問題は事前に地元住民と協議し、同意を得るべきだ」
と断じた。

 初日の審査開始約2時間前。委員による非政府組織(NGO)への意見聴取が別の会議室で行われた。沖縄県選出の糸数慶子参院議員は辺野古新基地建設を即時中止させるよう訴えた。その隣では、糸数氏が配布した「工事着手」を報じる沖縄地元紙の号外を手にしたファン委員が、真剣な表情で紙面に見入っていた。クリックリー委員は聴取終了後、糸数氏に駆け寄り「基地が女性や子どもの人権を侵害しているという訴えに共感した」と激励の言葉を掛けた。糸数氏は「国連に来て良かった。膝を交えて訴えれば、効果がある」と手応えをかみしめた。

 委員会は8月29日、「沖縄の人々の権利の促進や保護に関し、沖縄の人々の代表と一層協議していくこと」とする「最終見解」を出し、沖縄の民意を尊重するよう日本政府に勧告した。

 日本政府がやっきとなって沖縄差別を否定しているが、沖縄では「構造的差別」「沖縄人(琉球人)差別」などの言葉が広がっている。オスプレイの強行配備や、辺野古での新基地建設など米軍基地問題を中心に、日本政府や大多数の日本国民によって県民の民意がことごとく無視されているとの認識が深まっているからだ。

 上の引用文では沖縄の民意を無視する者として「大多数の日本国民」が挙げられているが、『日本にとって…』は次のように「変化の兆し」を指摘している。

 辺野古新基地建設阻止の闘いは、戦後70年、軍事的な意味での「太平洋の要石」としての役割を押し付けられてきた沖縄が、構造的沖縄差別を打ち破り、自らを、平和な文化的経済的交流の要石に転換させるための「自己決定権」の行使にほかならない。

 しかし、沖縄は、日本全体の100分の1の存在に過ぎない。ましてや、国家権力と、地方自治体の間には、圧倒的な力の差がある。しかも戦後歴代政権の中で、最も強権的で独善的な安倍政権は、恣意的な法解釈の下に、暴力的に基地建設を推し進めようとしている。闘いの成否は、それがどの程度沖縄を越えて、日本、さらには世界に広がるかにかかっている。14年の衆院選の争点や、その結果を見ると、まだまだ沖縄とヤマトの間には、大きなギャップがあるといわざるをえない。とはいえ、確実に変化の兆候も見えてきている。

 闘いの原点ともいうべきキャンプ・シュワブのゲート前の座り込み行動に参加したり、カヌーによる海上での抗議行動に県外から参加したりする人々も、わずかずつではあっても、増え続けている。そうした傾向はすでに10年前の海上櫓の闘いの時から見られ始めていた。連日昼夜にわたる闘いの継続は、地元だけでは困難を極めただろう。

 新基地建設反対の活動を支援するために15年4月に立ち上げられた辺野古基金への寄付金額と寄付件数は、同年9月中旬時点で、約4億5000万円、6万件に上り、その7割は県外からだといわれている。

 辺野古基金には、ささやかながら私も参加した。
スポンサーサイト
 コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
 トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://adat.blog3.fc2.com/tb.php/2086-07e7801a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック