2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(54)

未来へ向かって(1):自己決定権


 最後に沖縄のあり得べき未来を共に考えることで、《沖縄に学ぶ》を締めることにしよう。

 「祖国復帰運動(1)」で、沖縄のヤマト世への復帰運動の理念的意味を考えて、それを「復帰」論と呼んだ。そして、それに対して「反復帰」論や「沖縄独立」論という思想的営み(運動)もあったことを取上げた。改めて簡単にまとめてみると次のようである。

「復帰論」
 〈祖国=日本〉復帰による国家の回復を通して、国家を持たぬ一種の難民状態に置かれている現状を打破しようと試みたのである。その根底には日本国への同化を志向する理念があった。
「反復帰論」
 「日本国」への統合を疑わず、「日本国民」としての同化を至上目的とする「内なる同化志向」を打破しないかぎり、沖縄の精神的な自立は展望しえないと訴えた。しかし、これは単なる復帰(再併合)に対する反対(拒否)を意味したわけではなく、国家としての祖国(日本)を相対化するうえで、琉球(沖縄)の歴史的、地理的、文化的な独自性に依拠しながらも、その異質性や異族性をも相対化しようとする思想的営みである。
「沖縄独立」論
 戦前は琉球処分に対する琉球王国への復国運動として展開されてきた。戦後は、沖縄が日本から受けてきた差別や抑圧に対する批判的な視線と民族自決に基づく自治権の拡大を求めて、沖縄独立をめぐる議論や運動が展開された。

 そして、復帰後の沖縄では、「自立経済」という観点から「沖縄自立論」が議論されるようになった。その基軸になる理念を「自己決定権」と呼んでいる。翁長知事の陳述書にもこの言葉が二度使われている。抜き書きしておこう。

(ⅰ)
 世論調査の結果を見ますと、普天間飛行場の辺野古移設に対する県民の反対意見は、約8割と大変高い水準にあり、オール沖縄という機運、勢いは衰えるどころか、さらに高まっていました。これは、県民が沖縄の自己決定権や歴史を踏まえながら、県民のあるべき姿に少しずつ気づいてきたということだと思います。

(ⅱ)
沖縄は今日まで自ら進んで基地のための土地を提供したことは一度もありません。まず、基地問題の原点として思い浮かぶのが1956年のプライス勧告です。プライスという下院議員を議長とする調査団がアメリカから来まして、銃剣とブルドーザーで接収された沖縄県民の土地について、実質的な強制買い上げをすることを勧告したのです。当時沖縄県は大変貧しかったので、喉から手が出るほどお金が欲しかったと思います。それにもかかわらず、県民は心を1つにしてそれをはねのけました。そして当時の政治家も、保守革新みんな1つになって自分たちの故郷の土地は売らないとして、勧告を撤回させたわけです。今よりも政治・経済情勢が厳しい中で、あのようなことが起きたということが、沖縄の基地問題を考える上での原点です。私たちの先輩方は、基地はこれ以上造らせないという、沖縄県の自己決定権といいますか、主張をできるような素地を作られたわけであります。


  また、陳述書では知事選挙の公約をまとめたくだりがあるが、そこには沖縄の未来のビジョンが提示されている。そのビジョンは『「自立経済」という観点からの「沖縄自立論」』と捉える事もできよう。

 沖縄県知事選挙にあたり、公約について以下を基本的な認識として訴えました。

○建白書で大同団結し、普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念、オスプレイ配備撤回を強く求める。そして、あらゆる手法を駆使して、辺野古に新基地はつくらせない
○日本の安全保障は日本国民全体で考えるべきものである
○米軍基地は、今や沖縄経済発展の最大の阻害要因である。基地建設とリンクしたかのような経済振興策は、将来に大きな禍根を残す
○沖縄21世紀ビジョンの平和で自然豊かな美ら島などの真の理念を実行する
○アジアのダイナミズムに乗って動き出した沖縄の経済をさらに発展させる
○大いなる可能性を秘めた沖縄の「ソフトパワー」こそ、成長のエンジンである
○新しい沖縄を拓き、沖縄らしい優しい社会を構築する
○平和的な自治体外交で、アジアや世界の人々との交流を深める


 さて、『日本にとって沖縄とは何か』の最終項は「沖縄独立論をどう考えるか」である。それを読んでみる。新崎さんは
「最後に沖縄(琉球)独立論について触れておこう。現在沖縄では、県知事が語る言葉の中にも、地元紙にも「自己決定権」という言葉が溢れている。「琉球民族独立総合研究学会」といった学会も立ち上げられている。では、沖縄民衆の多くが独立を求めているのだろうか。」
と問いかけて、琉球新報と沖縄テレビが共同で行った世論調査(15年6月3日付琉球新報)から次の2項目を取り上げている。

「沖縄の自己決定権についてどう考えるか」

 自己決定権を大いに広げていくべきだ(41.8%)

 自己決定権をある程度広げていくべきだ(46.0%)

 自己決定権を広げる必要はあまりない(6.8%)

 自己決定権を広げる必要はまったくない(2.4%)

 分からない(3.0手%)

「今後沖縄は、どのようにあるべきだと考えるか」

 現行通り日本の中の一県のままでいい(66.6%)

 日本国内の特別自治州などにすべきだ(21.0%)

 独立すべきだ(8.4%)

分からない(4.0%)

 新崎さんは次のようにコメントしている。

 「自立」は必ずしも「独立」ではない。ナショナリズムに依拠する性格が強かった復帰・返還運動から出発した沖縄闘争が、ナショナリズムを取り込んだ72年沖縄返還政策を打ち破れなかった歴史的教訓にも学ばなければならないだろう。

 もう一つ、辺野古の現場で、カヌーに乗って海上抗議・阻止行動に参加している小説家・目取真俊の言葉を引いておこう。

「米軍基地は必要だが自分たちの所にあると困るので沖縄に押しつけておきたい、というヤマトウンチュー(日本人)の多数意思が、安倍政権の沖縄に対する強権的な姿勢を支えている。
 そういう日本政府やヤマトウンチューには見切りをつけて、沖縄は独立すべきだという声もある。普天間基地やキャンプーシュワブのゲート前で体を張ってたたかっている人たちがそう口にするなら共感もするが、評論家然として机上の議論を弄ぶ者たちのそれは現実逃避でしかない。辺野古や高江で起こっている問題すらウチナンチュー(沖縄人)が自己決定できずして、独立など夢物語にすぎない」(『越境広場』創刊0号、15年3月)

 独立論に関しては、沖縄よりもヤマトのジャーナリズムの方が関心が高いようにもみえる。だが、構造的沖縄差別は、日本の対米従属が生み出した結果でもある。日本の論者は、沖縄独立論に傍観者的関心を示す前に、日本が惰性的対米従属の仕組みから離脱することに主体的責任を感じ、行動すべきではないのか。まさに、「日本にとって沖縄とは何か」が問われているのである。


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