2006年9月4日 ホームページ『「日の丸・君が代の強制」と闘う人たちと勝手に連帯するレジスタンスの会』からの引越し完了しました。
《沖縄に学ぶ》(51)

機密文書「日米地位協定の考え方」(8):内容の検証(5)


《銃刀法違反も合法?》

  フェンスと鉄条網にかこまれた米軍基地のゲートを守っている人は日本人で、その人たちは一般の民間人なのに銃を持っている。戦争のために日々訓練をしている米兵など戦闘のプロ集団を、日本の民間人が守っているというおかしな事が行なわれているのだ。前泊さんは次のように問いかけている。
『こうした民間人が銃をもって米軍基地のゲートを守っていることが、国会でとりあげられ、問題になったことがあります。当然です。日本の銃刀法では民間人の銃の携帯は禁じられています。それなのに、米軍基地警護では認められているのはなぜなのか。さっぱりわけがわかりません。この民間人が発砲してだれかが怪我をしたら、どんな罪になるのでしょうか。』

 これは地位協定の第3条(施設・区域内の合衆国の管理権)の第1項に関わる問題である。その条文は次のようになっている。


 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があつたときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。

 マニュアルではこの問題については、「基地内で日本の法令が適用されるか否か」を論じている部分の(注42)の中で取上げられていて、次のように記載されている。
(前泊さんが「国会でとりあげられ、問題になったことがあります」と書いているが、その該当部分を赤字で示した。また、年号は西暦に書き換えた。)

(注42)
 施設・区域内における我が国内法の適用問題との関連で、施設・区域の警護に当たる日本人警備員が米軍の命により施設・区域内で銃砲を携行していることと銃砲刀剣類所特等取締法との関係が問題とされたことがあるところ、本件に係る1983年4月1日付けの瀬長亀次郎議員提出の質問主意書に対し、政府は、「日本人警備員の行動については、我が国の関係法令が適用される」が、「米軍は、国会の承認を得た日米地位協定第3条1項に基づいて施設・区域の警護のための必要な措置として日本人警備員に銃砲を携帯させることができるものであり、同項に基づく銃砲の所持は、銃砲刀剣類所持等取締法第3条第1項第1号の「法令に基き職務のため所持する場合」に該当するものと考える。」と答弁している。右答弁書に対してはその後それ以上の追求が行われていないが、右答弁書の論理は、地位協定はあくまでも条約であって、米軍の日本人警備員の銃砲保持を認める明文の国内法令はないのだから、かかる銃砲の保持が「法令に基き職務のため所持する場合」に当たるとはいえないのではないかとの質問を惹起し得る

 このような問いに対しては、銃砲刀剣類所持等取締法自体の解釈の問題として、同法第3条第1項第1号の「法令に基き職務のために所持する場合」とは、法的な根拠に基づいて職務のために所持するという趣旨であるところ、国会の承認を得た地位協定第3条に基づいて米国が施設・区域の警護のための必要な措置として日本人警備員に銃砲を携行させることは米国の権利として認められるところであり、かかる場合の銃砲の所持は法的な根拠に基づくものとして、「法令に基き職務のため所持する場合」に該当すると答える他ないと思われる。

 なお、外務省は、右のような問題点にもかんがみ、また、将来銃砲刀剣類所持等取締法以外の法令であって同法第3条第1項第1号のような規定を有さないものとの関係でも同様の問題が提起され得ることも勘案し、むしろ同法第3条第1項第1号に依拠することなく、日米地位協定第3条1項に基づいて米軍がとり得る「警護のため必要な措置」の一環として日本人警備員が銃砲を携行して施設・区域内の警備に当たる行為は、形式的には銃砲刀剣類所特等取締法に抵触し得るが、刑法第35条にいう「正当ノ業務二因リ為シタル行為」として違法性が阻却されるとの考え方を法制局に示したが、1952年に当時の林法制局次長より前出の答弁書と同様の考え方に基づく答弁が行われており(第15回国会・衆・外・10号・9頁ー10頁)、瀬長質問主意書に対しては同答弁と同様銃砲刀剣類所特等取締法の解釈を答えておけば足るのではないかとの理由により、採用されるに至らなかった経緯がある。

 国会での追及に対する政府や外務省の答は「地位協定第3条1項にもとづく米軍基地の警護に必要な措置で、銃刀法第3条1項1号の法令にもとづき、職務のために所持する場合に該当する」というものだったが、その答弁に対しては「地位協定はあくまでも条約で……米軍基地の日本人警備員の銃砲保持を認める明文の国内法令はない」と、その論理の脆弱性を危惧している。そして、「明文の国内法令はないのだから、かかる銃砲の保持が『法令に基き職務のため所持する場合』に当たるとはいえないのではないかとの質問を惹起し得る」と心配している。以下で、そうした質問に対する回答を吟味しているが、結局は「『法令に基き職務のため所持する場合』に該当すると答える他ないと思われる」とさじを投げている。

 外務省が「…質問を惹起し得る」と危惧していた質問が約20年後に国会で取上げられた。前泊さんの文章をそのまま引用する。

 事実、結果はその通りになり、2003年2月の国会(衆院予算委員会)で「民間人が軍人を、銃によって守る。どう考えてもおかしい」(東門美津子衆院議員=当時)という質問が出ていました。

 外務省は「形式的には銃刀法に抵触しうるが、刑法第35条の『正当の業務によりなしたる行為』として違法性が阻却(退けること)される」との考え方で、国会答弁をのりきろうとします。ところが内閣法制局は、そんな答弁では無理があるとして却下します。結局、政府は答弁には無理があると認識しながらも、「『法令にもとづき職務のために所持する場合』に該当すると答えるほかない」として、国内法違反でも地位協定で定めた米軍の特権を守るために、法律の解釈までもねじ曲げている実態がわかりました。

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